銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

ガバナンス

オリックスにみる株主優待の問題点

個人投資家にとって、新たな衝撃を与えたのはリース最大手のオリックスです。 株主優待を求める投資家に大人気であるオリックスが株主優待制度を廃止すると発表しました。 個人投資家に目を向けていたはずのオリックスはどうして株主優待を廃止するのでしょ…

システム障害のみずほに対する金融庁の処分理由が示唆に富み過ぎている件

金融庁は、今年8度のシステム障害を起こしたみずほ銀とみずほFGに業務改善命令を出しました。そして、2022年1月17日までに再発防止等の改善計画を提出するよう求めました。 一方、みずほFGは同日、今回の問題における責任をとってみずほFG社長とみずほ銀行頭…

SBIに対抗して新生銀行が導入決議した買収防衛策についての考察

新生銀行は9月17日に取締役会を開催し、SBIホールディングスによる株式公開買付け(TOB)に対抗するため、買収防衛策の導入を決定しました。 買収防衛策は、買収しようとする特定の株主だけの議決権を低下させる「ポイズンピル」と呼ばれる種類のものです。 …

機関投資家は物言う株主になりつつあるという現実

本年の株主総会シーズンは終了しましたが、東芝で取締役会議長が選任を否決される等、アクティビストと言われるような物言う株主の影響力は増しています。 これは、年金や投資信託の運用を行う機関投資家の議決権行使基準が、物言う株主の主張・考え方と近く…

今年、株主総会で「狙われた」のはMUFG

2021年の株主総会において、銀行業界で最も注目が集まっているのは、システム障害で揺れるみずほFGよりも、実は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)なのではないでしょうか。 MUFGには、株主からの様々な議案(株主提案)が出されています。 今回は、こ…

みずほのシステム障害は日本企業の劣化を象徴するものかもしれない

みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が、2021年2月以降に連続して発生したATM等のシステム障害について、外部調査の報告書を発表しました。 この報告書の内容は、みずほFGの企業風土についても触れています。 筆者の感覚で大変恐縮ですが、日本企業の…

東芝の問題は、日本全体の問題になる

東芝が発表した報告書がは大きな話題となっています。 外部弁護士による東芝の調査委員会は、2020年7月の株主総会を前に、東芝が経済産業省と連携して一部株主の提案を妨げようとしたとする報告書を発表しました。 今回はこの報告書において問題として指摘さ…

日銀が日本企業の大株主になると何か問題がありましたっけ?

日本銀行(日銀)が2020年上半期の決算を発表しました。決算では日銀が購入したETFの簿価が約35兆円に達していることが判明し、日銀が日本企業の最大株主になっているのではないかと報道されています。 日銀が最大の株主となっている点については、モノ言わ…

信託銀行の株主総会における議決権行使集計の誤りは大問題

三井住友信託銀行とみずほ信託銀行が、株主総会の議決権行使書の集計方法に誤りがあったことを発表しました。影響は両行合わせて1,346社に及ぶとしています。 これは株式市場においては非常に大きな問題です。 今回はこの信託銀行による株主総会の不適切な議…

株主総会はなぜ集中するのか。今年も到来する株主総会集中日。

コロナ禍の中、今年の株主総会シーズンが迫ってきています。 今回の株主総会では、実質的にWeb総会に近い開催方法が認められる等、新たな変化が訪れています。 一方で、「株主総会の集中日」という慣行は未だに存在しています。 今回は株主総会の集中日とい…

邦銀のCLO投資に対する金融庁と日銀の調査結果について

金融庁が懸念を抱いていた、邦銀が保有する高格付けのローン担保証券(CLO)等について金融庁と日本銀行(日銀)が調査報告を発表しました。 米金融当局が社債購入を含む景気支援策を導入したことを受けてクレジット市場は一旦は回復しています。但し、一部…

株主総会への株主「来場禁止」は容認されていないのではないか

新型コロナウィルス感染症拡大防止への対応として、上場企業の株主総会への株主の来場禁止が容認されると報道されています。 株主総会という場に、株式会社の所有者である株主が来場を禁止されるということは、本当に問題ないのでしょうか。 非常事態とは言…

旧村上ファンド系に狙われた時点で東芝機械はかなり負けている

旧村上ファンド系の投資会社であるオフィスサポートが東芝機械に対して敵対的買収(TOB)を仕掛けています。 東芝機械は、オフィスサポートの株式買付行為が東芝機械の企業価値を毀損し、かつ株主共同の利益の最大化を妨げると認識された場合には、対抗措置と…

役員定年制について考える

大和ハウス工業が役員に定年制を導入しました。これはガバナンス強化策の一環と説明されています。 従業員には定年制が導入されている企業がほとんどですが、役員の定年はどのようになっているのでしょうか。 今回は役員定年について確認してみましょう。 報…

金融庁がノルマより重視する経営理念とは?~基本的に銀行の体質はブラック~

銀行の経営環境は厳しい状況が続いています。米国は利下げに転じており、各国中央銀行の金融緩和競争が始まる可能性は高まっています。 現状では、銀行の経営環境が好転する可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。 このような環境下では、いくら立派な「…

住友不動産が実施する株式持ち合い強化は投資家からどのように見えるか?

住友不動産が株式の持ち合いを強化したと報道されています。 多くの上場企業は、株式の持ち合いを縮小させているため、住友不動産の動きは目立ったようです。 株式の持ち合いは、当たり前のように「悪いこと」であると一般的にされていますが、これは何故で…

株主総会の集中日という慣行は株主軽視では?

3月決算の上場企業の株主総会がピークを迎えています。 なぜ上場企業の株主総会開催日は集中しているのでしょうか。近時の傾向はどうなっているのでしょうか。 今回は株主総会の集中日について確認しましょう。 報道内容 株主総会の開催集中日の動向 集中日…

日産が指名委員会等設置会社への移行を目指す理由

日産自動車がガバナンス改革を進める組織移行を株主総会の議案に挙げています。 しかし、報道では日産自動車の実質的な親会社であるルノーがこの移行に難色を示しているとされています。 この日産自動車が進める組織移行は「指名委員会等設置会社」への転換…

株式の持合いや政策保有株式の問題点は何か?~素朴な疑問点~

「株式の持合い」や「政策保有株式」という日本の高度成長期を支えてきたとも言われていた仕組に逆風が吹いています。近時はコーポレートガバナンス・コードの改定で企業は政策保有株式の売却を求められています。 「株式の持合い」や「政策保有株式」と言え…

レオパレス21の施工不良問題に見え隠れする日本企業の根本的な問題

レオパレス21が施工不良問題で、外部調査委員会が中間報告を発表しました。 この報告では、創業者であり当時の社長によるトップダウンの指示があったことも判明しています。 一部ではレオパレス21の問題について報道されていますが、調査委員会の報告書その…

東証の上場市場再編はコーポレートガバナンス対応が一つの重要な切り口に

2019年1月28日に開催される「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第17回)の議事次第が事前に公表されました。 この会議では特にコーポレートガバナンス・コードの企業の受け入れ(コンプライ)状況や有…

スルガ銀行の創業家ファミリー企業向け不適切融資問題は他人事ではない

スルガ銀行が創業家ファミリー企業向け不適切融資問題に関連して現旧取締役に対して損害賠償請求訴訟を提起しました。 提訴の理由は、創業家ファミリー企業にかかる与信管理についての職務執行の善管注意義務違反等になります。 本件創業家ファミリー企業向…

TATERUの改ざん問題は信用棄損という大問題

東証1部上場のTATERU(タテル)がアパートオーナーの銀行融資にかかる申請書類を改ざんしていた問題で、第三者の調査委員会の調査報告書を公表しました。 今回はこの調査報告書の内容および今後の影響について考察します。 報道内容 報告書の内容 所見…

スルガ銀行の創業家向け融資は特別背任の可能性も

(画像と本文の内容とは関係ありません) スルガ銀行が、創業家およびファミリー企業向け融資について元会長らを提訴するとの報道がなされました。 スルガ銀行は業務改善計画を金融庁に提出し、会社としての再出発を図ろうとしています。その業務改善計画に…

産業革新投資機構の社外取締役の辞任コメントから見る日本の問題点

産業革新投資機構の民間取締役全員が辞任表明をしました。 一部報道では、役員の報酬で経済産業省と対立したとされていますが、辞任理由はもっと根本的なものです。 今回は、社外取締役が辞任表明に際してコメントを発表していますので、その全文を掲載しま…

スルガ銀行の業務改善計画は一読の価値あり

シェアハウス問題等の渦中にあるスルガ銀行が金融庁へ業務改善計画を提出しました。 投資用不動産融資に関する不祥事を反省し、業務運営を抜本的に改める内容としています。 今回は、スルガ銀行が金融庁に提出した業務改善計画について確認していきましょう…

スルガ銀行の旧経営陣提訴にかかる判断理由~調査委員会報告~

スルガ銀行が旧経営陣ら9名を提訴しました。 提訴理由はシェアハウスなどへの不適切融資により発生した損失への損害賠償請求です。 今回は、このスルガ銀行の提訴理由、内容について賠償責任の有無を調べる取締役等責任調査委員会の報告内容を確認します。 …

ソフトバンクが目指す親子上場についての論点

ソフトバンクグループが携帯電話子会社としてのソフトバンクを上場させようとしています。 一方で、親子上場が減ってきているというニュースをご覧になった方もいるかもしれません。 親子上場は様々な問題点を含んでいます。 今回は、ソフトバンクグループが…

役員退職慰労金という嫌われもの~キーワードは株主との利害一致~

役員退職慰労金という言葉をご存知でしょうか。いわゆる企業の役員に対する退職金です。 この退職慰労金を廃止する上場企業が増加しています。 今回は役員退職慰労金が廃止されている背景について確認していきましょう。 報道内容 役員退職慰労金とは コーポ…

スルガ銀行へどのような行政処分が下されるのか~業務停止命令の過去事例~

スルガ銀行の第三者委員会の公表がなされ、経営陣も入れ替えとなりました。 金融庁はスルガ銀行への行政処分について検討していると報じられています。 今回は、スルガ銀行へどのような行政処分が下される可能性があるのか、過去の事例を踏まえながら考察し…