銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

企業はコスト削減のため退職金制度を企業年金制度へ移行するという選択肢も

人口減から逃れられない日本において、企業は人件費をなかなか増やそうとはしません。 むしろAI等への投資を通じて人件費をさらにカットしていく動きの方が加速する可能性もあります。 そのような中、企業が、従業員の給料・賞与カットを行わずに人件費削減…

人件費削減策における退職給付信託という手法

会社員にとって給料が上昇したと実感できない環境が続いています。 内部留保が積みあがっているとか、人手不足と言われながらも、企業は簡単に人件費を上げようとはしません。 今回は、従業員にとっての「痛みがない形で」企業が人件費を下げる方法について…

オルタナティブ投資はCAT債(キャットボンド)を選択肢にすべき

世界全体で金融緩和環境、すなわち金余りが起きています。 この環境下、資産運用における利回り確保のため、オルタナティブ(代替)投資が拡大してきました。 インフラ投資、バンクローン等への投資も拡大していますが、やはり不動産への資金流入は大きなも…

メガバンクの2017年9月中間決算での実力をはかるポイントは有価証券の含み損益

メガバンクの中間決算が出そろいました。 各メガバンクからは、機械化投資による業務量削減、実際の人員数削減、店舗削減等の話題も出た中間決算発表となりました。 今回のメガバンクの中間決算で筆者が最も注目すべきだと認識しているのは「有価証券の含み…

おそらく誰も注目していない「銀行の休日緩和」の動き

近時、銀行のリストラについての報道が多くなっています。 長引く低金利の影響により銀行の本業収益が厳しくなっていること、機械化投資により○○○人分の業務量を削減すること、人員数そのものを減らすこと等がメガバンクの名前と共にマスコミから解説されて…

生産緑地の2022年問題という時限爆弾

(この記事は2017年8月に作成した記事を再掲しています。最新の情報を更新していない点がありますが、ご容赦ください。) 皆さんは生産緑地という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。 実は、2022年に生産緑地が宅地として大量にマーケットに供給される…

新型株式報酬の増加とストックオプションの「逆インセンティブ」問題

上場企業において役員報酬に自社株を活用する事例が増えています。 ストックオプションは従来から普及していましたが、現在は信託型(株式給付信託)もしくは譲渡制限付株式の導入が急増しています。 今回は企業の株式報酬について簡単に考察します。 株式報…

AI 運用の拡大に伴うIR の今後

AIというワードを新聞やマスコミ等で見かけない日はありません。 この大きな波は金融の現場にも及んでいます。これから続々と普及するであろうAI運用です。 本日はこのAI運用について軽く触れるともに、投資される側の企業にとって意識すべきこと、このAI運…

IFRS新リース会計による不動産市場への影響

国際会計基準(IFRS)における新リース会計基準が公表されています。 この基準の導入により不動産の「賃借」が「保有」と比べて、あまり変わらなくなります。 これは不動産市場に対しては大きな影響を与える可能性があります。 今回はIFRSの新リース会計基準…

自動運転が不動産価値を変える可能性

自動車の自動運転技術の開発競争が激化しています。 2020年代にはある程度の自動運転化が本当になされている可能性もゼロではありません。 この自動運転技術が完成、普及となった場合には、金融業界にも不動産業界にも非常に大きな変化をもたらすことになり…

企業は個人型DCではなく企業型DCを導入した方が「お得」

企業型確定拠出年金(DC)の加入者数は2017年8月末時点で632万人(厚生労働省ホームページ)となっており順調に拡大してきました。 制度(規約)数は5,564件とこちらも着実に増加しています。 企業型DCは転職者の脱退一時金やDC資産を受け入れるための制度と…

売上高新基準(収益認識に関する会計基準)の影響

日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会が2017年7月20日に「収益認識に関する会計基準」の案を公表しました。 この会計基準は2021年4月1日以降に開始する事業年度の期首から適用されるとしています(強制適用)。 また、2018年4月1日以降に開始する事業…

銀行の「名ばかり管理職」問題

銀行は長時間労働・サービス残業が横行していました。かなり改善されてきたと思いますが、それでもまだまだ労働時間は長いのではないでしょうか。 今回は銀行における残業代のつかない管理監督者、いわゆる名ばかり管理職問題について考察します。 [:content…

三菱UFJの中間決算は余裕あり

三菱UFJフィナンシャル・グループの2018年3月期中間決算が発表されました。 詳細は11月21日に発表されるのでしょうが、現段階で開示されている資料をもとに三菱UFJの業績状況について今回は分析することにします。 メガバンクトップの三菱UFJでも本業は厳し…

三井住友FGの中間決算評価~あえて危機感を演出されているのでは?~

三井住友FGの2018年3月期中間決算が発表されました。 この中間決算については、日経新聞等マスコミが「銀行の本業が厳しい」と報道しています。 筆者はメガバンクを含む銀行業界の置かれている状況が厳しいとは考えていますが、今回の銀行決算についてのマス…

みずほFGの中間決算にみる苦境と裏の目的

(画像はみずほFGのホームページより) みずほFGが2018年3月期の中間決算を発表しました。 この中間発表においてグループの構造改革も発表しています。 報道では長引く低金利の影響により収益力が低下したことが要因とされています。 (報道例)http://www3.nhk.…

金融庁の金融行政方針(平成29年度)のポイント~地方銀行への影響~

2017年11月に金融庁が金融行政方針を発表しました。 この金融行政方針は今後の金融行政が何を目指すか、その方向性を捉える資料となり、銀行経営にも多大な影響があります。規制業種である銀行は「官」を無視できないのです。今回はこの金融行政方針の内容を…

適格退職年金(適年)が担っていた信用創造という役割~産業金融の観点から~

適格退職年金、通称「適年(てきねん)」という仕組みをご記憶の方も多いでしょう。 この適年は2012年に実質的に廃止され、現在では残っていません。 適年という仕組みは従業員の老後保障のために導入されたとお考えの方が多いのですが、実際には高度成長期…

接待の帰りに事故にあったら労災になるのか~理不尽だけど現実~

接待がなぜ労働時間=残業にならないのかという記事をアップした際に、「では接待の帰りに事故にあったら労災にならないのか」という趣旨のご質問をいただきました。 今回は、この接待と労災の関係について整理します。 (前回記事) www.financepensionreal…

「バブルの物語」から見えるビットコインをはじめとした暗号通貨~人間はそんなに変わらないのでは~

2017年11月9日に日経平均株価が25年10か月ぶりの2万3,000円をつけました。 米国でもダウ平均が過去最高を更新し続けてきました。 不動産や金など様々な資産の価格が上昇してきています。 そして、ビットコインに代表される仮想通貨、暗号通貨の価格上昇がす…

メガバンクの店舗リストラの背景を簡単に解説する

2017年11月8日の産経新聞ホームページにはみずほフィナンシャルグループが全国の拠点の半数を小型店に切り替える検討に入った旨の記事が掲載されました。 www.sankei.com また、同日の読売新聞ホームページには三菱東京UFJ銀行が今後5年程度でフルバンク型の…

接待はなぜ労働時間=残業にならないのか

今回は会社員とって非常に納得感がないであろう「接待」について考察します。 会社員にとって(もちろん銀行員にとっても)、接待は残業や休日出勤には通常該当しません。 これは特に若手のうちは納得のいかないことではないでしょうか(歳を重ねると、慣れ…

残業問題を解決するには三六(サブロク)協定破棄が交渉材料になるという暴論

近時の働き方改革の議論をみていると少々違和感を感じずにはいられません。 企業も労働組合もスタートの立ち位置から議論した方が良いように感じます。 銀行員にとっても残業問題は他人事ではありません。自身の働き方にも影響しますし、取引先企業で問題が…

解雇の法的位置付け~正社員は簡単にリストラされないという事実~

前回までの記事でメガバンクのリストラについて考察してきました。 その中で繰り返し触れましたが、日本では正社員は簡単には解雇されません。 今回は、この「解雇」について法的な位置付けを考察します。 これは、正社員(銀行員含む)自身にとっても重要な話…

【余話】メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える~皆様のコメントから~

今回は先日アップした「メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える」という記事(文末にリンク掲載)に対する皆様からのコメントについて、自分のできる範囲でお答え致します。 本当に多くのコメントをいただきありがとうございました。 はてなブックマー…

メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える③~三菱東京UFJ銀行の事例~

マイナス金利政策の影響による収益減、国内人口減等を背景に、店舗閉鎖によるコスト削減、AI活用による業務量削減への対応としてメガバンクが人員を削減すると発表・報道されています。 今回はシリーズでこのメガバンクの人員リストラ問題について考察してき…

メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える②~みずほ銀行の事例~

前回、メガバンクのリストラ報道について内容を確認した上で、三井住友銀行についての状況を確認・想定しました。 www.financepensionrealestate.work 一方で、みずほ銀行は今後10年で1.9万人の「業務量」を減らすとしています。 今回は、みずほ銀行について…

メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える~三井住友銀行の事例~

「3銀行大リストラ時代 3.2万人分業務削減へ」(日本経済新聞、2017年10月28日記事)という記事をご覧になった方も多いのではないでしょうか。 マイナス金利政策の影響による収益減、国内人口減等を背景に、店舗閉鎖によるコスト削減、AI活用による業務量削…

金融庁の金融レポートにみる銀行の運用商品販売の今後

今回は2017年10月に公表された金融庁の金融レポートから、金融庁が問題意識を持つ「銀行の顧客本意の業務運営」等についてみていきます。 この金融庁の問題意識を確認することにより銀行の個人・リテール部門における販売商品・販売方法の将来的な方向性等が…

金融庁の金融レポートにみる地方銀行の未来

2017年10月に金融庁が金融レポートを発表しました。 金融レポートは毎年公表している金融行政方針の進捗状況・実績等を評価し、現状分析・問題提起を行う目的で金融庁が公表しているレポートです。 今回はこの直近の金融レポートにおいて示された金融庁の特…