銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2017-01-01から1年間の記事一覧

レオパレス21は視聴者の敵となって「終了」するのか

(写真と本文は関係ありません) 2017年12月26日放送のガイアの夜明けにおいてレオパレス21 (以下レオパレス)が取り上げられました。 この番組ではレオパレスのアパートオーナーに対する強引な営業や対応が放送されています。 内容としては、アパート経営のト…

「美術品信託」という面白い試み

2004年に信託業法が改正されて信託可能な財産には制限がなくなっています。 そのような状況下、日経新聞の記事によるとSMBCグループが「美術品信託」というサービスを開発したようです。 筆者は、この美術品信託は非常に面白い試みだと思います。 今回は、こ…

RIZAPの事例に学ぶ、決算分析は究極的にはキャッシュフローを見るべき

先日、久しぶりに再会した知人がげっそりと痩せておりました。 頬がこけており、大病をしたのかと考えていましたら、「RIZAPに通って痩せたのであって、病気ではない」と知人から言われました。久しぶりに会う人が、「同情したような、でも聞けないような、…

外債の為替ヘッジを代行するサービスは良い目のつけどころでは

先日、日経新聞に興味深いサービス開始の記事が掲載されていました。 筆者としては銀行が提供するサービスとしては久しぶりに納得感のあるものでしたので今回の記事で取り上げます。 日経新聞の記事 為替ヘッジ付外国債券とは 為替ヘッジ付外債投資ニーズの…

メガバンクの手数料引き上げにかかる考察~結果的に自らの首を絞める怖れも~

2017年12月20日の日経新聞に3メガバンクが両替手数料の引き上げを行うとの記事が掲載されました。 収益が低下している銀行が今後も他の業務で手数料引き上げに動くことは当然想定されます。 この動きがどのような背景によるものなのか、そして今後どのように…

信用金庫の業績動向(2017年3月期の復習)

(ロゴは信金中金のもの) このブログでは近時、地方銀行の業績動向について考察してきました。 今回は頂戴したコメントにもありましたので、信用金庫の業績について簡単にみていくことにします。 ただし、信用金庫は上場していないこともあり、業績開示が限ら…

第二地銀の中間決算動向~第一地銀からは一周遅れ~

第二地方銀行協会(略称第二地銀協)の会員である第二地方銀行(41行)の中間決算の概要が、第二地銀協から発表されています。 前回の記事では第一地銀が会員となっている地銀協(64行)の決算について考察しました。 今回は、第二地銀協の決算について考察します…

地銀の2017年9月中間決算の概要と特徴~問題は「債券含み益顕在化経営」の限界~

全国地方銀行協会(地銀協)から加盟地方銀行(64行)の中間決算についての概要が発表されました。 地方銀行(地銀)の業況は厳しさが加速しているといわれていますが、本当にそうでしょうか。 今回は第一地銀の2017年9月中間決算状況について考察します。 …

【余話】銀行員の連続休暇はうらやましい制度か

銀行員がうらやましい(?)と言われる銀行の制度に、「年に一回、自由な時に、5営業日連続で休暇が取れる」というものがあります。 一般の企業なら、お盆休みや年末年始など、長期休暇の日程が決まっていることが多いでしょう。そのような時は他の会社も休み…

地銀の中で異彩を放つスルガ銀行の決算状況(2017年9月中間)

複数の記事にわたり地方銀行(以下地銀)の苦境について考察してきました。 今回は、地銀の中で異彩を放つスルガ銀行の決算について確認します。 スルガ銀行は静岡地盤の地方銀行ですが、他の地方銀行と同列では投資家も評価していないでしょう。それぐらい…

地銀の統合・再編に関する公取委の方針とマスコミとの質疑応答

地銀の業績苦戦が伝えられており、金融庁の金融行政方針や日銀幹部の講演等でも地銀の統合・再編の必要性について述べられています。 その中で、近時批判を浴びるようになったのが公正取引委員会です。 公正取引委員会(以下公取委)が再編を認めないとして…

日銀副総裁の講演からみる地銀の問題点

今回は、日本銀行の中曽副総裁が2017年11月29日に講演した内容についてご紹介してみたいと思います。 講演内容は、地銀が金融システムに与える影響と、その業績不調要因等についてでした。 講演のタイトルは「マクロプルーデンス政策の新たなフロンティア―銀…

地銀の本来の収益が浮き彫りになった事例~栃木銀行の2017年中間決算~

前回、銀行が「投資信託の運用で決算を作る」ことの問題点についてご説明しました。 www.financepensionrealestate.work 今回は、投資信託での運用および国債を中心とした債券運用で利益を出せなくなった場合、地銀の決算がどのようになってしまうかについて…

中間決算事例でみる地銀の「投資信託で作る決算」の問題点

銀行、中でも地方銀行(以下地銀)の業績が厳しいとの報道等がなされています。 これは全体でみるとその通りなのですが、地銀の決算が具体的にどのように厳しいのかを説明している報道はあまり見かけません。 一般的には、日銀のマイナス金利政策の影響で貸…

地銀の中間決算(2017年)における本業赤字の事例~島根銀行を題材に~

地方銀行(以下地銀)の決算が厳しい状況にあることはご認識の方も多いと思います。 今回は「本業赤字といわれる地銀の決算はどのようなものか」について島根銀行の事例を挙げて考察していきます。 なお、地銀の有価証券運用における損失事例については以下…

苦戦する地銀の中間決算事例(2017年)~外債投資の失敗、池田泉州の例~

地方銀行(以下地銀)の経営が厳しいという報道等が相次いでいます。 金融庁も問題提起を様々に行っています。 ただ、報道でも「地銀」とひとくくりにされており、本当に個々の地銀において経営が厳しいのか、何が問題なのかについては認識がしづらいのでは…

不動産価格・賃料の国際比較では投資するなら香港が有望か

世界的に金余りが続いています。 株価も高値圏にありますし、仮想通貨・暗号通貨価格の大幅なアップダウンが毎日報道されています。 そのような環境下、不動産は居住するものであり、仕事を行う場所でもありますが、重要な投資先の一つともなっています。 そ…

地銀の店舗はリストラで外部賃貸できないという規制の無駄

銀行の業績が厳しいというニュースを至るところで見る機会が増えています。 特に地方銀行(以下地銀)は、マイナス金利政策の影響により貸出の金利が低下する一方で、銀行の資金調達・商品仕入れにあたる預金金利はこれ以上の低下余地がないことから、地銀の…

企業はコスト削減のため退職金制度を企業年金制度へ移行するという選択肢も

人口減から逃れられない日本において、企業は人件費をなかなか増やそうとはしません。 むしろAI等への投資を通じて人件費をさらにカットしていく動きの方が加速する可能性もあります。 そのような中、企業が、従業員の給料・賞与カットを行わずに人件費削減…

人件費削減策における退職給付信託という手法

会社員にとって給料が上昇したと実感できない環境が続いています。 内部留保が積みあがっているとか、人手不足と言われながらも、企業は簡単に人件費を上げようとはしません。 今回は、従業員にとっての「痛みがない形で」企業が人件費を下げる方法について…

オルタナティブ投資はCAT債(キャットボンド)を選択肢にすべき

世界全体で金融緩和環境、すなわち金余りが起きています。 この環境下、資産運用における利回り確保のため、オルタナティブ(代替)投資が拡大してきました。 インフラ投資、バンクローン等への投資も拡大していますが、やはり不動産への資金流入は大きなも…

メガバンクの2017年9月中間決算での実力をはかるポイントは有価証券の含み損益

メガバンクの中間決算が出そろいました。 各メガバンクからは、機械化投資による業務量削減、実際の人員数削減、店舗削減等の話題も出た中間決算発表となりました。 今回のメガバンクの中間決算で筆者が最も注目すべきだと認識しているのは「有価証券の含み…

おそらく誰も注目していない「銀行の休日緩和」の動き

近時、銀行のリストラについての報道が多くなっています。 長引く低金利の影響により銀行の本業収益が厳しくなっていること、機械化投資により○○○人分の業務量を削減すること、人員数そのものを減らすこと等がメガバンクの名前と共にマスコミから解説されて…

生産緑地の2022年問題という時限爆弾

(この記事は2017年8月に作成した記事を再掲しています。最新の情報を更新していない点がありますが、ご容赦ください。) 皆さんは生産緑地という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。 実は、2022年に生産緑地が宅地として大量にマーケットに供給される…

新型株式報酬の増加とストックオプションの「逆インセンティブ」問題

上場企業において役員報酬に自社株を活用する事例が増えています。 ストックオプションは従来から普及していましたが、現在は信託型(株式給付信託)もしくは譲渡制限付株式の導入が急増しています。 今回は企業の株式報酬について簡単に考察します。 株式報…

AI 運用の拡大に伴うIR の今後

AIというワードを新聞やマスコミ等で見かけない日はありません。 この大きな波は金融の現場にも及んでいます。これから続々と普及するであろうAI運用です。 本日はこのAI運用について軽く触れるともに、投資される側の企業にとって意識すべきこと、このAI運…

IFRS新リース会計による不動産市場への影響

国際会計基準(IFRS)における新リース会計基準が公表されています。 この基準の導入により不動産の「賃借」が「保有」と比べて、あまり変わらなくなります。 これは不動産市場に対しては大きな影響を与える可能性があります。 今回はIFRSの新リース会計基準…

自動運転が不動産価値を変える可能性

自動車の自動運転技術の開発競争が激化しています。 2020年代にはある程度の自動運転化が本当になされている可能性もゼロではありません。 この自動運転技術が完成、普及となった場合には、金融業界にも不動産業界にも非常に大きな変化をもたらすことになり…

企業は個人型DCではなく企業型DCを導入した方が「お得」

企業型確定拠出年金(DC)の加入者数は2017年8月末時点で632万人(厚生労働省ホームページ)となっており順調に拡大してきました。 制度(規約)数は5,564件とこちらも着実に増加しています。 企業型DCは転職者の脱退一時金やDC資産を受け入れるための制度と…

売上高新基準(収益認識に関する会計基準)の影響

日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会が2017年7月20日に「収益認識に関する会計基準」の案を公表しました。 この会計基準は2021年4月1日以降に開始する事業年度の期首から適用されるとしています(強制適用)。 また、2018年4月1日以降に開始する事業…