銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

金融政策

デジタル通貨の研究は加速するが、導入実現は簡単ではないという予測

日本銀行(日銀)やECB(欧州中央銀行)、イングランド銀行、スイス中央銀行、カナダ銀行等、6つの中央銀行がデジタル通貨の共同研究を行う組織を立ち上げると発表しました。 現時点ではデジタル通貨を早急に発行するということにはなっていませんが、非常に…

日銀の審議委員による厳しい指摘「金融機関は供給過多」

日本銀行の原田審議委員が講演と記者会見で金融機関について述べた意見が少し話題となっています。 厳しい収益状況にある銀行を含む金融機関については「低金利という問題を克服すればすべて解決するわけではない」「貸出以上に預金が集まってしまうという構…

日銀のマイナス金利深堀は近いか〜政策決定会合で明らかになった銀行の味方が少ないという現実〜

2019年11月6日に日本銀行(日銀)が2019年9月に開催した金融政策決定会合の議事要旨が公表されました。 この議事要旨は日銀の将来における金融政策を予想する助けとなります。 近時、マイナス金利幅の拡大(深堀)が意識され始めていますが、日銀の議論のニ…

日銀がマイナス金利拡大を実施した場合の地銀への影響を簡単に試算する

格付大手のS&Pが、日銀がマイナス金利を0.1%拡大した場合に銀行収益へ及ぼす影響を公表しました。 同社の試算によると、地方銀行64行のうち56行で貸出業務が赤字となります。 ほとんどの地方銀行が本業で赤字となることになるのです。 今回はこのS&Pの試…

銀行のCLOへの投資は本当に大きな問題なのか?

CLOと呼ばれるローン担保証券への銀行の投資が注目を集めています。 CLOは、Collateralized Loan Obligationの略称で、銀行が事業会社などに対して貸し出しているローンを証券化したもので、ローンの元利金を担保にして発行される債券のことをいいます。 こ…

日銀への「スルガ銀の虚偽報告等は法令違反ではない」というちょっとした事実

スルガ銀行にいわゆるシェアハウスへの不動産担保融資問題が発覚してから、相応の時間が経ちましたが、スルガ銀行の経営はいまだ落ち着きを取り戻してはいない状態にあります。 その中で、2019年10月に日本銀行(日銀)がスルガ銀行に対して経営管理態勢の改…

口座維持手数料は愚策〜銀行離れを加速させる可能性も〜

銀行の口座維持手数料導入の動きが出てきています。 各国が金融緩和に動く中、日本銀行もマイナス金利の深堀を行う可能性が出てきたことに起因するものでしょう。 今回は銀行の口座維持手数料について簡単に考察してみたいと思います。 直近の動き なぜ口座…

これから貸倒引当金の積み増しを金融庁から迫られる地銀の憂鬱

金融庁が金融検査マニュアルの廃止に伴い、銀行の経営を監督するための考え方を示す「ディスカッションペーパー」の案を公表しました。 今回は、金融庁のディスカッションペーパーから見える「金融庁の地方銀行に対する懸念点」について確認します。 ディス…

中央銀行発行のデジタル通貨“Central Bank Digital Currency”(CBDC)のメリットと課題

日本銀行の雨宮副総裁が、デジタル通貨について近い将来の発行はないと発言しました。 日本ではキャッシュレス推進のための動きが盛んになっていますが、一方で事業者・規格が乱立しておりキャッシュレス化が進まない要因の一つと言われています。 その解決…

日銀の2019年度考査方針~地銀は経営の持続性、大手はガバナンス・海外がポイント~

日本銀行(日銀)が2019年度の金融機関に対する考査方針を発表しました。 この考査方針には日銀の民間銀行に対する課題認識が反映されており、中央銀行がどのように民間銀行を見ているのか理解できるでしょう。 今回は日銀の考査方針について確認していきま…

デジタル法定通貨が簡単には実現しない訳

日本銀行の雨宮副総裁が現時点ではデジタル通貨の発行計画がないことを衆議院の予算委員会で述べたと報道されています。 なぜ、日本銀行はデジタル通貨を発行しないのでしょうか。日本政府がキャッシュレス化を進めている中で、デジタル通貨を中央銀行が発行…

銀行の融資残高500兆円台の回復は「個人・不動産」向けに偏重

銀行の融資残高が20年ぶりに500兆円台を回復したと日銀が貸出金統計にて発表しました。 しかし、融資残高の内容は「ゾンビ」企業への貸出も含んでおり健全ではないと報道されています。 今回は、この銀行の融資残高の内容について簡単に見ていくことにしまし…

金融庁が要請したスルガ銀行への預金支援はナンセンス

スルガ銀行を金融庁が預金支援したと報じられています。 これはどのようなことでしょうか。 今回はスルガ銀行への預金支援について考察します。 報道内容 その他の報道等 所見 報道内容 日経新聞が非常に興味深い報道をしました。スルガ銀行の資金繰りを支え…

仮想通貨規制の今後~金融庁案の全体像~

金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会が報告書の案を公表しました。本研究会は、仮想通貨交換業者の不正アクセス・仮想通貨流出等の状況を受け、仮想通貨交換業等を巡る諸問題について制度的な対応を検討するため、2018年3月に設置されていたものです。 …

貸金業関係資料集にみる業界の衰退と銀行への教訓

金融庁が貸金業者にかかる統計データを公表しました。 このデータ内には長期的な動向が掲載されており、貸金業者の「衰退」が現れています。 今回は、貸金業者の長期的な動向・推移について確認してみましょう。 貸金業者の長期的推移 消費者金融の残高推移 …

仮想通貨に関する規制動向~今後は風説の流布、相場操縦、インサイダー取引等の規制が検討の俎上に~

金融庁から「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第9回)議事次第が公表されています。この議事は2018年11月12日に開催されたものです。 今回は仮想通貨の呼称、インサイダー取引等について議論がなされています。 仮想通貨についての今後の規制動向を把握…

日銀金融システムレポート(2018年10月号)のポイント

日本銀行(日銀)が半年に一度公表している金融システムレポートを公表しました。 今回はミドルリスク企業向けや不動産業向け貸出、有価証券投資にある程度焦点があたっています。 今回はこのレポートにつき概要を簡単に見ていくことにしましょう。 概要 今回…

地方銀行の次の問題は「貸倒引当の算定方法」

金融庁主催の「融資に関する検査・監督実務についての研究会(第3回)」が開催されました。この研究会で議題となったのは銀行の貸倒引当金です。 銀行、特に地方銀行は業績が厳しいとされています。近年、その銀行の利益を何とか支えてきた利益要因の一つが…

金融庁の2018事務年度「金融行政方針」のポイント

金融庁が2018事務年度の金融行政方針を公表しました。 この行政方針は金融庁の課題・問題認識を反映したものであり、実際にどのように金融機関が「指導」されていくか、規制がどのようになっていくかの指針となります。 現在、銀行業界では「スルガ銀行」の…

スルガ銀行へどのような行政処分が下されるのか~業務停止命令の過去事例~

スルガ銀行の第三者委員会の公表がなされ、経営陣も入れ替えとなりました。 金融庁はスルガ銀行への行政処分について検討していると報じられています。 今回は、スルガ銀行へどのような行政処分が下される可能性があるのか、過去の事例を踏まえながら考察し…

銀行にカードローンを取り扱う資格はあるのか~実態調査結果~

銀行カードローンについては、近年の残高増加から、過剰な貸付けが行われているのではないか等の批判・指摘があり、各銀行では、自主的な業務運営の見直しを検討・実施してきています。 こうした中、金融庁は、銀行における融資審査の厳格化・業務運営の適正…

金融庁の有識者会議で指摘された「的確過ぎる」銀行の課題

金融庁が「金融仲介の改善に向けた検討会議」の議事要旨を開示しました。この検討会議では、外部の有識者の意見を、実際の金融庁の活動に反映させることを狙いとしています。 直近の検討会議では、今後の銀行のあり方や課題等について有識者から意見が出され…

金融庁の検査・監督は金融機関の「多様性」を許容するのか

2018年7月に金融庁の「融資に関する検査・監督実務についての研究会(第1回)」が開催されました。 金融庁は検査・監督の方向性を変えていこうとしています。 従前の金融庁検査は、個社毎の債務者区分を査定されるような検査が一般的でした(イメージはドラ…

これでも銀行から投資信託を買いますか?~金融庁の分析と指標導入~

金融庁が投資信託を販売する銀行・証券会社に対して、比較可能な共通指標を導入することを発表しました。 この共通指標は投資信託の購入コストとリターン等、お客様が取るコスト・リスクとリターンが相応かという点等を浮き彫りにするのが狙いです。 銀行・…

金融庁からの警告~地銀の有価証券運用とガバナンス~

金融庁では、「行政の透明性の向上を図るとともに、金融庁の問題意識を適時に発信する観点を踏まえ、業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点を公表すること」としています。 今回取り上げるのは、2013年5月に開催された全国地方銀行協会・…

史上最強の金融庁長官 森氏の退任について考えること

通例を超えて3期務め、史上最強の長官と言われた森金融庁長官の退任が報道されています。 金融業界外の方にとってみれば金融庁の長官と言われても認識は薄いかもしれません。 しかし、ここ暫くの間は金融界、とりわけ銀行にとって非常に大きな影響を与えてき…

日銀ワークショップ「ビッグデータと人工知能を用いたファイナンス研究の展開」

日本銀行が開催したファイナンス・ワークショップの内容が公表されました。 同ワークショップでは、ビッグデータと人工知能が金融に活用されている事例や、金融政策の参考となる研究報告等がなされています。 今回は、この日銀のワークショップの内容につい…

仮想通貨交換業者に対しての金融庁の検査結果は「かなりの闇」

金融庁はコインチェックの仮想通貨流出事件を契機に仮想通貨交換業者への立ち入り検査等を実施しました。 2018年4月27日に開催された「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第2回)では、金融庁の立ち入り検査の結果について概要が報告されています。 今回は…

TLAC(総損失吸収力)とは

TLACという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。 巨大金融機関の経営破綻時に公的負担を回避すべく導入された新規制です。 2018年4月に野村ホールディングスが規制対象になりました。 今回はこのTLACについて確認していきます。 TLACとは 報道・プレ…

中央銀行発行デジタル通貨は既存の銀行システムを破壊するか

日本銀行(日銀)が、雨宮副総裁がスピーチをした「デジタル時代と中央銀行(IMF・金融庁・日本銀行共催 FinTechコンファレンスにおける挨拶)」の邦訳を公表しました。 このスピーチには中央銀行が法定通貨のデジタル化をどのように考えるかの示唆が含まれ…