銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2018-01-01から1年間の記事一覧

スルガ銀行の創業家会長退任~創業家の影響排除は困難という現実と統合の考察~

(写真と本文は関係ありません) スルガ銀行の創業家会長が辞任するとの報道がなされました。 30年間にわたりトップを務め、スルガ銀行をガバナンス不全に陥らせた責任を取るということのようです。 では、スルガ銀行は新たに生まれ変われるのでしょうか。スル…

世界銀行のブロックチェーン債が潜在的に持つ巨大な破壊力

世界銀行が初のブロックチェーン債を発行しました。 この取り組みは、普及するのであれば銀行にも証券会社にも影響が出てくることになります。 今回はこのブロックチェーン債について確認していきましょう。 プレスリリース ブロックチェーン債の意味 事例:…

銀行にカードローンを取り扱う資格はあるのか~実態調査結果~

銀行カードローンについては、近年の残高増加から、過剰な貸付けが行われているのではないか等の批判・指摘があり、各銀行では、自主的な業務運営の見直しを検討・実施してきています。 こうした中、金融庁は、銀行における融資審査の厳格化・業務運営の適正…

ジャパンネット銀行の住宅ローン参入にかかる裏の理由

ヤフー傘下のジャパンネット銀行が住宅ローンに参入すると報道されています。 新たな新業務参入には、ヤフーが持つビッグデータ解析技術を活用し、将来的にはAIを審査に活用するとされています。 一方で、住宅ローンは金利の低下が激しく、住宅ローンから撤…

スルガ銀行の現在の株価は投資のチャンスである可能性も

スルガ銀行のシェアハウス「かぼちゃの馬車」問題から始まった不適切融資に関する問題が連日報道されています。 直近ではスルガ銀行の不適切融資が1兆円に迫るとされており、8月22日には株価がストップ安となりました。 今回は、このスルガ銀行の不適切融資…

政府のキャッシュレス化の動きは止まらない

政府がキャッシュレス化を推進するために本腰を入れようとしています。 2018年4月には経済産業省を中心として「キャッシュレス・ビジョン」がまとめられ、公表されました。 キャッシュレス化は日本の産業育成にとっても、インバウンド消費の拡大や旅行地とし…

東京都が検討する分譲マンションの建替え促進は非常に有用では?

日本は、戦後の住宅不足の時代から高度成長期に至るまで、大量の集合住宅を建築してきました。最初に建てられた都心の分譲集合住宅(いわゆるアパート・マンション)は1953年築とされています。この蓄積されてきた分譲マンションは老朽化が進展してきています…

日本および世界の商業不動産投資の概括~2018年上半期~

JLL(Jones Lang LaSalle)が2018年上半期における商業用不動産投資に関するレポートを発表しました。 日本及び世界の商業不動産投資の動向の概要がつかめます。 不動産については、足元では米国の利上げもあり、先行きが不透明になってきている感があります…

RIZAPの成長は岐路に立っている可能性も~2019年3月期1Q決算~

(写真と本文は関係ありません) RIZAPグループの2019年3月期第1四半期決算が発表されました。 業績としては大幅増収ながら、利益は赤字に転落しています。 筆者は近年はPIZAPグループの決算に注目しています。 RIZAPグループは印象に残る広告戦略を使い知名…

銀行の休業日緩和と共同店舗運営は、結果的に自らの首を絞めるのでは?

(写真は本文とは関係ありません) 銀行の平日休業が可能となる銀行法施行令等が8月16日に施行されました。 銀行の休業日は規制されていましたが、今後は柔軟な店舗運営が可能となります。 この休業日が中心に報道されていますが、今回の規制緩和は共同店舗…

金融庁の仮想通貨交換業者への検査結果は一読の価値あり

金融庁が「仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間とりまとめ」を発表しました。 これは、コインチェックが不正アクセスを受け、ネットに接続された状態で管理していた暗号資産(※金融庁は当該公表では仮想通貨ではなく暗号資産としています)が流出す…

大塚家具の2018年6月(中間期)決算は更なる苦境を浮き彫りに

大塚家具の2018年12月期中間決算(1~6月)が発表されました。 一言でいえば「業績の底入れは見えていない」ということになります。 今回は、注目されている大塚家具の2018年度中間決算について確認しましょう。 決算概要 現預金および投資有価証券の推移 キ…

不動産M&Aの簡単なメリット・デメリット比較

この数年、不動産M&Aという用語を聞くことが多くなってきました。 不動産M&Aが増加する背景はどのようなものでしょうか。 今回は、不動産M&Aについて考察します。 不動産M&Aとは 売主にとってのメリット・デメリット 買主にとってのメリット・デメリット ま…

金融庁の有識者会議で指摘された「的確過ぎる」銀行の課題

金融庁が「金融仲介の改善に向けた検討会議」の議事要旨を開示しました。この検討会議では、外部の有識者の意見を、実際の金融庁の活動に反映させることを狙いとしています。 直近の検討会議では、今後の銀行のあり方や課題等について有識者から意見が出され…

仮想通貨のカストディー事業は新規参入余地あり~ゴールドマン・サックスの取組検討~

ゴールドマン・サックスが仮想通貨ファンド向けのカストディー業務を検討していると報道されています。 これは面白い切り口だと思います。 今回は、仮想通貨のカストディー業務(カストディアン)について考察します。 報道内容 カストディアンとは 仮想通貨の…

Tesla(テスラ)2018年2Q決算は本当に改善しているのか

Elon Musk(イーロン・マスク)氏率いるTesla,inc.(テスラ)が第2Qの決算を発表しました。 第1Qの決算では、会見対応のまずさや業績不振が伝えられていましたが、第2Qでは業績改善の見通しを受けて株価も上昇しました。 今回は、このTeslaの決算について、…

給与・賃金のデジタルマネー払いの課題と展望

「給与のデジタルマネー払いを可能にしてほしい」との規制緩和要望が出ていることが、日経新聞にて報道されました。 非常に面白いアプローチです。 しかし、厚労省はこの規制緩和を簡単には認めない方向のようです。 今回は、なぜ給与・賃金にデジタルマネー…

大塚家具の資本増強・経営再建はまだまだ紆余曲折があるのでは

経営不振に陥っている大塚家具が資本提携を含む経営再建策を検討していることが報道されています。 大塚家具に資本注入が必要なのは事実ですが、現預金が尽きかけているであろう時期まで何ら発表がなかったということは重要な意味を持っています。 すなわち…

三菱UFJ信託の融資撤退は興味深いがリスクも

MUFG傘下の三菱UFJ信託銀行が融資から撤退するとの報道がなされました。 法人向け貸出は2018年4月に三菱UFJ銀行に統合されましたが、今回は個人向けローン(アパートローン)についても移管するとされています。 この動き自体は全く違和感がありません。 MUF…

【余話】電子書籍を発刊しました~新入行員のための教科書~

新入行員・若手銀行員向けの電子書籍として「新入行員のための教科書」を作ってみました。 銀行員として、社会人として、きっと必要になる知識を少しだけ盛り込んでいます。 もし、ご興味がある方はご購読ください。 (Kindleをお持ちの方は無料です) どう…

ゼノデータ・ラボの業績予測AIは「人をサポート」する好事例になるのでは

AI

企業の情報を分析するAI開発を行うゼノデータ・ラボが新サービスをリリースしました。 ゼノデータ・ラボは三菱UFJ銀行のアクセラレータプログラム(大手企業等がベンチャー、スタートアップ企業等に出資や支援を行うことにより事業共創を目指すプログラム)…

GPIFのAI活用は非常に興味深いアプローチ

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がAIを年金運用に活用すると報道されています。 AIを運用そのものに使う動きは増加していますが、GPIFは自分達で直接運用することはありません。 では、どの業務にAIを利用するのでしょうか。 今回はGPIFのAIの活用に…

フィンテックにおける融資サービスは既存銀行を駆逐するか

IT/フィンテック企業がデータを活用し銀行業務(の一部)に進出していく動きが加速してきています。 その中でも、データを活用し、銀行以外の企業が行う融資は「オルタナティブ(代替)・レンディング(貸出)」と言われるようになってきています。 今回は…

Facebookの株価下落は大したことではない~値幅制限について考える~

Facebookの株式時価総額が急落したことがニュースになっています。 一日にして、Facebookの時価総額が10兆円以上下落しました。 10兆円といえば日本の時価総額2位のNTTドコモ、NTT(日本電信電話)、ソフトバンクグループの時価総額に近い数字です(2018年7…

APIが銀行に与える影響~日銀ワークショップでの意見~

2018年7月に日銀主催のワークショップの議論内容が開示されました。 このワークショップではオープンAPIを議論しています。 ワークショップにおける自由討議内容は非常に示唆に富んだものとなっていますので、今回はこの自由討議内容を確認していきます。 ワ…

イベントから勝負の場になってきた株主総会

2018年6月の株主総会は、やはり波乱が起きました。 昨年から比べても会社提案の議案への賛成を得るのが難しくなってきています。 ほんの数年前までの「シャンシャン」総会は過去のものになりそうです。 今回は2018年6月の株主総会についてのトピックスについ…

自社株報酬における株式給付信託の位置付け

日経新聞で信託を使った株式報酬制度導入が拡大しているとの報道がなされました。 株式給付信託という聞き慣れない商品です。 今回は、この株式給付信託とはどのようなものなのか、導入されるようになった背景は何か等について、考察していきます。 報道内容…

信用金庫の2017年度決算まとめ~地銀より厳しいのは信金~

日本銀行から「金融システムレポート別冊シリーズ2017年度の銀行・信用金庫決算」が発表されました。 今回は、この金融システムレポートから、地方銀行(地銀)、信用金庫(信金)の決算内容を抜粋し、確認していきたいと思います。 信金の業績にかかる全体像を…

日本でロボアドが広がらないのはサービスの問題では?

ロボット・アドバイザー(通称ロボアド)というサービスをお聞きになったことはあるでしょうか。 簡単に言えば、AIもしくはプログラムが個人投資家に投資運用を指南するサービスです。 このロボアドは米国では相応の人気があるようですが、日本では期待通り…

MUFGのAI投信組成をニュースとするのは疑問アリ

MUFG傘下の三菱UFJ国際投信がAIを活用した投資信託を8月に発売すると発表しました。 日経新聞の報道では「全てをAIに任せる投信は日本初」としています。 今回は、MUFGのAI投信はどのようなものか、AI運用とはそもそもどのような仕組みなのか、AIファンドの…