大塚家具の2018年12月期中間決算(1~6月)が発表されました。
一言でいえば「業績の底入れは見えていない」ということになります。
今回は、注目されている大塚家具の2018年度中間決算について確認しましょう。
決算概要
まずは2018年1~6月の大塚家具の決算の概要を確認しましょう。
<中間決算概要>
- 売上高18,825百万円(前年同期比▲2,555百万円、▲11.9%)
- 売上総利益81億47百万円(前年同期比▲2,807百万円、▲25.6%)
- 販管費11,653百万円(前年同期比▲2,004百万円、▲14.7%)
- 営業利益▲3,506百万円(前年同期比▲804百万円)
- 経常利益▲3,472百万円 (前年同期比▲863百万円)
- 当期利益▲2,037百万円 (前年同期比+2,530百万円)
当期は売上の減少が止まっていません。
一方で、経営施策としてコスト削減には一定の成果が出ています。当期は売上原価に1,156百万円の棚卸評価損を計上していますので、さらに売上総利益が減少していますが、販管費を売上の減少率以上に削減しています。その結果、営業利益・経常利益は棚卸評価損の計上がなければ赤字幅縮小となっていました。
当期利益は、固定資産売却益および有価証券売却益を計上したことに加え、前期に計上していた構造改革費用引当と減損損失が当期には発生しなかったことから、赤字幅が縮小しています。
一部、経営施策の効果が発現しているといえますが、基本的には「顧客離れは止まらず、コスト削減に走っている」という決算内容です。
現預金および投資有価証券の推移
大塚家具の決算は、損益計算書よりもキャッシュフロー計算書に注目する必要があります。
大塚家具は、表面的な財務内容は悪くはありません。自己資本比率は60.7%を確保し、純資産も14,355百万円となっています。
しかし、どんなに財務内容が良く見えたとしても、資金繰りがうまくいかなければ破綻します。
そして、大塚家具は資金繰りが非常に厳しいのです。
以下で状況を確認しましょう。現預金と換価性の高い投資有価証券の推移です。
(単位百万円) 現預金/投資有価証券/合計
- 2014/12/31 11,520/7,153/18,673
- 2015/12/31 10,972/7,233/18,205
- 2016/12/31 3,854/5,514/9,368
- 2017/03/31 2,510/3,981/6,491
- 2017/06/30 2,179/3,003/6,182
- 2017/09/30 2,036/2,683/4,719
- 2017/12/31 1,807/2,753/4,560
- 2018/03/31 1,026/2,152/3,178
- 2018/06/30 2,205/1,756/3,961
2018年6月末時点では現預金の減少傾向は止まっている(反転)ように見えます。
しかし、実際には短期借入が+800百万円あり、借入金を行った分がそのまま現預金+投資有価証券の増加となっています。
それでも現預金+投資有価証券の減少傾向がストップしているようには見えます。これは大塚家具にとっては良いことなのではないでしょうか。
もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
キャッシュフロー
では、大塚家具の2018年度中間期におけるキャッシュフローの状況を確認します。
ここは重要なポイントですのでキャッシュフロー表の数値を掲載します(単位千円)。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
- 税引前四半期純損失(△) △2,023,269
- 減価償却費 12,471
- 差入保証金償却額 44
- 賞与引当金の増減額(△は減少) 95,177
- 販売促進引当金の増減額(△は減少) 960
- ポイント引当金の増減額(△は減少) 71,926
- 事業構造改善引当金の増減額(△は減少) △524,158
- 減損損失 129,555
- 投資有価証券売却損益(△は益) △425,230
- 有形固定資産売却損益(△は益) △1,177,199
- 固定資産除却損 2,819
- 店舗閉鎖損失 18,086
- ゴルフ会員権売却損益(△は益) 3,440
- 受取利息及び受取配当金 △17,373
- 売上債権の増減額(△は増加) 586,817
- たな卸資産の増減額(△は増加) 1,300,849
- その他の流動資産の増減額(△は増加) △3,876
- 仕入債務の増減額(△は減少) △2,510
- 前受金の増減額(△は減少) 133,077
- その他の流動負債の増減額(△は減少) △168,459
- その他 △85,176
- 小計 △2,072,030
- 利息及び配当金の受取額 17,373
- 法人税等の支払額 △33,223
- 法人税等の還付額 7,593
- 営業活動によるキャッシュ・フロー合計 △2,080,286
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
- 有形固定資産の取得による支出 △85,640
- 有形固定資産の売却による収入 1,174,677
- 無形固定資産の取得による支出 △61,854
- 投資有価証券の売却による収入 748,086
- 差入保証金の回収による収入 484,927
- 敷金及び保証金の差入による支出 △40,305
- 敷金及び保証金の回収による収入 90,030
- その他 125,803
- 投資活動によるキャッシュ・フロー合計 2,435,725
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
- 短期借入金の純増減額(△は減少) 800,000
- 配当金の支払額 △754,867
- その他 △2,208
- 財務活動によるキャッシュ・フロー合計 42,923
<現金及び現金同等物>
- 現金及び現金同等物の増減額(△は減少) 398,363
- 現金及び現金同等物の期首残高 1,806,785
- 現金及び現金同等物の四半期末残高 2,205,149
このキャッシュフロー表で確認すると分かる通り、売掛債権や棚卸資産を減らし資金回収を図っていますが、当期利益が赤字のため営業キャッシュフローはマイナスとなっています。
投資キャッシフローについては、有形固定資産、投資有価証券の売却に加え、店舗閉鎖に伴う差入保証金の回収も発生しました。そのため、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計ではプラス(黒字)となっています。
財務キャッシュフローでは800百万円の短期借入を行う一方で、配当金の支払いが▲755百万円あるため、実質的には短期借入金で配当を支払ったとも言えるでしょう。
大塚家具は現預金+投資有価証券が増加しましたが、有形固定資産、投資有価証券の売却、店舗閉鎖に伴う差入保証金の回収等にて資金が確保されました。しかし、これは一過性の現金入手策です。本業でのキャッシュインがなく、現時点では持っている資産を売るしかないのです。
大塚家具の現状は、まだまだ厳しいとしか言えません。コミットメントラインを銀行と締結しているため、まだ借入余力はあると想定されますので、数か月以内に資金繰り破綻することは考えにくいでしょう。
ただし、現時点の大塚家具のキャッシュ流出ペースは、半年で▲25億円程度のペース(当期経常利益▲35億円+棚卸資産評価損11億円は戻し入れ)となっています(配当勘案せず)。
そのため、残された猶予はあまりないのが現状です。
ヨドバシカメラ、TKP、台湾企業と提携交渉していると報じられていますが、当中間決算の発表時にも具体的な提携発表はなされませんでした。
これは、大塚家具自体に魅力が乏しいことの証左でもあります。
大塚家具は売却(=キャッシュ化)できるものは、ほとんど売却してきました。
すなわち、残りのやるべきことは「商品を売ること」に尽きます。
これは外部の企業にとっても、経営者にとっても最も改善が難しいものです。
商品を売ることを提携先が手助けできるのであれば良いのですが、実際には難しいのではないでしょうか。
それでも、大塚家具は商品販売力強化を行うしか、生き残る道はありません。
どのような方策で販売力強化を実施するのか、筆者は注目しています。