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大塚家具の資本増強・経営再建はまだまだ紆余曲折があるのでは

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経営不振に陥っている大塚家具が資本提携を含む経営再建策を検討していることが報道されています。

大塚家具に資本注入が必要なのは事実ですが、現預金が尽きかけているであろう時期まで何ら発表がなかったということは重要な意味を持っています。

すなわち、大塚家具を買収しようと強く考える企業・ファンドがほとんどないということです。

今回は、大塚家具の資本提携について簡単に確認していきましょう。

 

報道内容

まずは、以下の新聞記事を引用します。

まずは日経新聞の記事です。

大塚家具、経営再建へ資本増強検討
2018/08/03  日経新聞

 大塚家具が資本提携を含む経営再建策の検討を始めたことが3日、分かった。店舗閉鎖や売り場縮小を進めてきたが、大塚久美子社長と父親で創業者の勝久前社長が対立し、ブランドイメージが悪化したことなどで業績の低迷が続いている。
 大塚家具は3日、決定した事実はないとしながらも「資本増強や業務提携について多面的に検討している」と公表した。14日に発表する2018年12月期の業績予想を下方修正する見込みであることも明らかにした。
 スポンサーを探すため、投資ファンドや金融機関を通じて国内外の複数の企業と交渉している。現時点では経営権や再建策の内容を巡り、条件が折り合っていない。
(以下略)

次に朝日新聞の記事です。

こちらはスポンサーについて更に踏み込んだ内容となっています。 

大塚家具、身売りへ 提携先のTKP軸に最終調整

8/4(土)  朝日新聞デジタル

 経営不振が続く大塚家具が自力での再建が困難な状況に陥り、身売り交渉を進めていることがわかった。昨年11月に資本・業務提携した第3位株主の貸し会議室大手、ティーケーピー(TKP)が増資を引き受け、経営権を握る方向で最終調整に入った。今月中旬までに買い手企業を決める方針だ。取引銀行は家電量販大手ヨドバシカメラによる子会社化を提案しており、交渉の行方には流動的な面も残る。
 大塚家具は6月以降、家電量販店や百貨店など複数の流通大手のほか、企業再生ファンドなどに支援を打診してきた。その中から、大塚家具に6%強を出資するTKPが第三者割当増資により過半の株式を取得する案が有力となった。中国の高級家具メーカーからの出資受け入れも一時、検討されたという。
  TKPは、売り場の縮小によって生じた大塚家具の店舗の空きスペースを借りて、会議室やイベント会場に変えるなどの提携関係にある。会議室などに置く家具を自社で製造・販売する事業も手がけており、大塚家具を傘下に収めれば相乗効果が発揮できるとみて買収に名乗りを上げた。

以上が報道内容になります。

 

大塚家具がスポンサーを探す理由

大塚家具がスポンサーを探す理由は、単純です。

商品が売れず、現預金が尽きかけているからです。

以下の記事にあるように筆者は大塚家具の再建はスポンサーが必要と考えていましたが、2017年12月期の決算発表と同時にスポンサーが発表されなかったことで、スポンサー探しが苦戦しているものと想定しています。

大塚家具の企業分析については以下の記事をご参照ください。 




TKPはスポンサーになり得るか

朝日新聞はTKPが過半数の株式を取得し経営権を握る方向で最終調整に入ったと報道しています。

では、TKPはスポンサーとして適格でしょうか。

以下TKPの決算および大塚家具の決算を確認しましょう。

 

<TKPの決算状況(2018年5月時点)>

  • 現預金 62億円
  • 総資産 380億円
  • 純資産 95億円
  • (2019年2月通期業績予想)売上高346億円、営業利益40億円、当期純利益21億円 

<大塚家具 2017年12月通期決算>

  • 売上高 410億円
  • 営業利益 ▲51億円
  • 当期純利益 ▲71億円
  • 総資産 291億円
  • 純資産 176億円

両社の決算状況を確認して言えることは、TKPには大塚家具を支えるほどの経営体力がないという事実です。

大塚家具で大幅にコストダウンを行うことが出来れば良い(売上は維持が前提)のですが、それが難しい場合にはTKP自体の経営存続にかかわることになる可能性があります。

TKPの経営陣、そして株主はこの買収を良しとするのでしょうか。

また、大塚家具の取引銀行団(取引はコミットメントラインぐらいでしょうが)は、本当にTKPとの資本提携を了承するのでしょうか。

 

大塚家具のこれから

上記の朝日新聞の記事にあるヨドバシカメラの買収というのは、実現性があるシナリオでしょう。

ヨドバシカメラからすれば、大塚家具の販売フロアに自社が取り扱う家電を置き、販売の相乗効果を狙えるためです。大塚家具にとっても家電とのセットで「リビングの総合提案」ができる等のメリットはあるでしょう。

しかし、どの企業がスポンサーについたとしても大塚家具はコストを削減しなければなりません。

商品の家具が売れていないことは事実です。

これはヨドバシカメラと資本提携しても、傘下に入っても変わらぬ課題です。

最悪の場合は、ヨドバシカメラが大塚家具の現店舗をヨドバシカメラに変えてしまえば良いということで、ヨドバシカメラならば大塚家具を傘下に収めることもあるのではないでしょうか。

しかし、相乗効果が見込めないような企業、ファンドであれば大塚家具を買収する意味はありません。

大塚家具は表面上の財務内容は良いのですが、ビジネスモデル上の強みがないこと、売る資産がないこと(商品以外)、から門外漢にはあまり改善の余地=儲ける源泉がないためです。

大塚家具のスポンサー探しは、もう少し紆余曲折があるのではないでしょうか。