銀行員のための教科書

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イベントから勝負の場になってきた株主総会

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2018年6月の株主総会は、やはり波乱が起きました。

昨年から比べても会社提案の議案への賛成を得るのが難しくなってきています。

ほんの数年前までの「シャンシャン」総会は過去のものになりそうです。

今回は2018年6月の株主総会についてのトピックスについて確認していきましょう。

 

全体の流れ

今回の6月総会では、会社提案議案が否決された会社が3社となりました。

これは前年総会と同数となっています。

また、会社提案議案の取り下げは14社となり、前年総会から比べて+12社と大幅に
増加しました。

会社提案議案の否決については、取締役の選任の否決、取締役に対する退職慰労金制度廃止に伴う打切支給の否決、取締役・監査役の選任の否決の3つの事例が発生しています。

 

取締役選任の否決事例

まずは、取締役選任の否決事例について見ていきましょう。

  • 対象企業は21 LADY
  • 株主提案を行ったのはサイアムライジングインベストメント1号合同会社(株式会社サイアム·パートナーズが運営するファンド)
  • 総株主の議決権の数に対するファンドの持分割合は16.8%であり第2位株主
  • 株主提案の理由は、5期連続で当期純損失を計上し、営業CFもマイナスを計上することとなり、監査法人から継続企業の前提に関する重要な疑義をつけられている状況となったこと
  • 株主としては、抜本的な経営改善が必要と判断し、取締役会の経営モニタリング機能を強化するために、株主から社外取締役3名を選任し、現任の社外取締役1名とあわせて取締役会の過半数を社外取締役とすることを提案
  • 結果として、第1位株主(33.4%)である代表取締役社長の選任が否決
  • なお、会社提案の4名中、上記社長を除く3名および株主提案の取締役3名の追加選任は全員可決

当該企業は外国人比率は1%未満であり、国内投資家も含めて株主提案に賛成に回ったものと想定されます。

特に機関投資家は議決権行使基準を公表するようになり、その中で経営不振先の経営トップへは反対票を投じるようになってきているのも一因でしょう。


取締役·監査役の選任否決事例

次に東証1部上場企業の事例です。

  • 対象企業JPホールディングス
  • 取締役については、会社提案の8名のうち、社長を含む6名が否決
  • 株主から提案されていた取締役5名のうち2名が可決、3名が否決
  • 更に監査役3名も否決

JPホールディングスをめぐっては、創業者で前社長の山口洋氏と、荻田氏ら経営陣が対立していました。

この1年で2度も臨時株主総会が開かれるなど混乱が続いていた状況にあり、事態を早期収拾できない前社長らに対する一般株主の不満がくすぶる中、可決に必要な過半数の賛成獲得に失敗し、前社長は退任することになったのです。
結果として、萩田前社長の得票率は36%となり、異例の低得票となりました。

この株主総会決議により、監査役が法定員数を欠くことになり、臨時株主総会を開催することも発表しています。

なお、JPホールディングスは外国人株主は6%と少なかったものの、筆頭株主である投資会社(27.4%)と機関投資家等が反対に回ったものと想定されます。


退職慰労金制度廃止に伴う打切支給の否決

退職慰労金の廃止に伴って、過去の退職慰労金の精算について否決された事例もあります。

  • 対象企業はテクノメディカ
  • 特段ニュースにはなっていないが、取締役に対する退職慰労金制度廃止に伴う打切り支給について、賛成率39.6%となり否決

機関投資家等投資家の動きとして、業績・企業価値の向上には関係がなく、基本的には在職年数によって支給される退職慰労金に対しては反対票を投じる傾向があります。

これは各社の議決権行使基準を見れば分かります。

また、テクノメディカは外国人株主比率が32.9%(四季報ベース)となっており、外国人株主が反対に回った可能性は大です。


所見

今回は2018年6月の株主総会で会社提案議案が否決された事例を確認しました。

いずれの企業にも反対されるだけの理由はあったものと思われます。

企業は今までは、外国人株主・ファンドだけを気にしていれば良いと考えていたかもしれませんが、日本の機関投資家ですら議決権行使行動を変えてきているのが実態です。

企業は機関投資家の議決権行使基準を参考としながら、議決権の賛成票がどの程度になるかを想定していかなければなりません。

業績不振だろうと、不祥事が起きていようと、取締役選任議案が可決されていたのは過去の事象となってくるのかもしれません。

これからは、上場企業であれば、自社の経営トップ、取引先の経営トップ等が株主総会によって突然交代を迫られることもあり得るのです。

経営トップと約束したから大丈夫と思っていても、その当人が突然退任するかもしれないのです。

これは、ビジネスパーソンとしては認識しておかなければならない事象といえるのではないでしょうか。