銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2017-01-01から1年間の記事一覧

投信会社のネット直販開始にみる裏の理由

三菱UFJ国際投信が2018年度上半期にインターネット経由で投資信託を直接販売するとの報道がなされています。 これは一見すると、投信会社が販売会社(銀行や証券会社)を中抜きすることにより安いコストで商品購入者に商品が届くため、購入者にとってメリッ…

総合型企業年金基金(DB)のガバナンス改革~代議員定数の基準新設~

2017年9月15日に厚生労働省が確定給付企業年金制度にかかる改正案のパブリックコメント募集を開始しました。 この中で企業年金基金(以下DB)の代議員定数にかかる項目が新設されています。 この代議員定数にかかる新設条項が特に総合型DBに与える影響につい…

厚生年金基金の減少(解散、代行返上)と総合型企業年金基金の創設

厚生年金基金という用語をお聞きになったことがある方は多いのではないでしょうか。 ピーク時には1,800基金超、加入者数1,200万人を超えていた企業年金の一つの形でした。 この厚生年金基金は現時点ではほとんど存続していません。 今回は金融知識の一環とし…

【余話】三菱UFJ信託銀行の貸出業務移管(三菱UFJ銀行への貸出業務統合・一本化)について

2018年4月に三菱UFJ信託銀行の貸出業務が三菱UFJ銀行に統合されるとの発表がありました。 この統合は三菱UFJ信託銀行の貸出12兆円を三菱UFJ銀行(2018年4月に商号変更)に移管し、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)内での各社の機能別再編を果た…

コミットメントラインの契約期間は、なぜ364日が多かったのか

銀行が融資を確約するコミットメントライン契約では期間が「364日」となっているものが多数ありました(近時は減少しました)。 コミットメント契約は、1年毎に更新されるのが一般的ですから毎年期限が1日ずつ前倒しになっていきます。例えば12月30日だった…

MiFID2の影響~運用会社の成果報酬導入の背景~

日経新聞にフィデリティが顧客から収受する手数料を運用成果に連動させる新制度を導入する旨の記事が掲載されていました。 今回はこの成果連動の運用手数料導入の流れについて考察します。 報道内容 成果連動手数料の導入背景 MiFID2の影響 報道内容 日経新…

中国をはじめとした海外不動産投資家は本当に日本から逃げ始めているのか

近時、中国人の不動産投資家が日本の不動産を売り始めているというようなニュースがなされています。 中国人を含めた海外の不動産投資家は本当に日本の不動産を売却しているのでしょうか。 今回は外国人不動産投資家の動向について考察します。 中国人の日本…

IT重説(重要事項説明)の開始

2017年10月から賃貸契約仲介にかかるITでの重要事項説明が開始されます。今回はこのいわゆるIT重説について考察します。 IT重説とは 対象となる不動産取引 IT重説のメリット IT重説の今後 今後の方向性 IT重説とは IT重説とは、インターネット等を利用し、対…

不動産信託のメリット・デメリット~不動産信託は魔法の杖ではない~

J-REIT等不動産のプロの不動産取得では不動産信託が用いられます。 現物の不動産を信託し、信託受益権化することで不動産売買のメリットが得られるとご存知の方はいらっしゃるでしょうが、実際にどのようなメリットがあるか、デメリットは何かご承知でしょう…

サプライチェーン・ファイナンス ~サプライチェーン領域におけるブロックチェーン技術の活用事例~

金融領域においてブロックチェーン技術の活用が拡大してきています。 その中でも、銀行の大企業取引をかなり変えてしまう可能性のある実証実験が2017年10月からスタートします。 この実験は銀行の法人取引の将来像が見てとれます。 今回はサプライチェ…

ブロックチェーンによる本人確認の共有化とその将来像

金融機関がブロックチェーンを利用し、顧客情報を共有して顧客の利便性向上、事務負担の軽減を目指す動きが出てきています。 今回はこのブロックチェーン技術の活用事例と、今後の展開について考察します。 ブロックチェーンによる本人確認の共有化実証実験 …

AIスコア・レンディングについて

みずほ銀行とソフトバンクがAIスコア・レンディングを日本で初めて開始しました。 今回はこのAIスコア・レンディングについて考察します。 AIスコア・レンディングとは AIスコア・レンディングの評価 他企業との競合 AIスコア・レンディングとは AIスコア・…

業務自動化と今後の仕事の方向性(MUFGの事例/デジタルフォーメーション戦略)

三菱UFJフィナンシャル・グループの平野社長が国内の事務作業の自動化やデジタル化で「9,500人相当の労働量の削減を実現したい」「従業員をよりクリエーティブな仕事に振り向ける」と述べたと報道されています。 今回はこの自動化、デジタル化、クリエーティ…

ATMは本当に銀行のお荷物なのか

2017年9月8日の日経新聞には「銀行ATM 今やお荷物」という記事が掲載されました。 内容としては、コンビニや駅ナカなどに新規参入ATMが急増してきたことから、コスト削減のために自前のATM網を無くしたり縮小したりする銀行が増えていると伝えています…

基準地価の動向

2017年9月19日に地価調査(2017年7月1日時点)が発表されました。 マスコミの報道では土地の価格が上昇しているイメージを持たれている方もいるのではないでしょうか。 今回は地価調査について考察します。 地価調査とは 全国平均 三大都市圏 …

地方銀行の苦境と金融庁の監督指針

金融庁は金融機関の財務(B/S)から損益(P/L)に監督の焦点を移行していくと表明しています。そして画一的な検査・監督ではなく金融機関の自主性に重きを置く監督方針に変更していくとしています。 足元の動きは本当に金融「処分」庁から金融「育成」庁に変…

ビットコインは生き残るのか

ビットコインについて連日で様々な記事が出ています。 筆者はビットコインは専門外ですが、ビットコイン・仮想通貨ついては非常に興味があるため、今回の記事で考察します。 直近の報道 仮想通貨とは ビットコインの現状 ビットコインの今後 直近の報道 直近…

機関投資家の株式議決権行使にかかる誤解

ダイヤモンドオンラインに、三菱UFJ信託が三菱自の社長人事にNO!議決権行使「仁義なき個別開示」という記事が掲載されていました。三菱UFJ信託が三菱自の社長人事にNO!議決権行使「仁義なき個別開示」 | Close-Up Enterprise | ダイヤモンド・オンライン …

MiFIDⅡの衝撃~証券アナリストは存在しなくなるのか

AI

AIの開発・進化により証券アナリストという職業は消滅するとの懸念が様々な記事等で出されています。 しかし、AIの普及前に証券アナリストが激減するのではないかとの予測がなされるようになってきました。その理由はMiFID2(ミフィッド2)です。 今回は証…

機関投資家の株主総会における議決権行使結果の開示

機関投資家が守るべき行動規範であるスチュワードシップ・コードが2017年5月に改定されたことに伴い生命保険会社、信託銀行が株主総会における議決権行使結果について開示をしています。 今回は、この議決権行使結果の開示について背景・今後の影響を考…

積立NISAについての整理

2018年1月より積立NISAがスタートします。銀行の営業店では積立NISAについて特段盛り上がっていないでしょうが、資産運用会社では商品設定にかなりの労力をかけたと思われます。 結果、当初の発表から積立NISAの対象として認定される投資信託の数が増加…

投信等の回転売買問題

金融庁が主要行に立ち入り検査を実施するとの記事が出ていました。 www.bloomberg.co.jp 金融庁が国内の主要な銀行などを対象に、顧客本位の投資商品を提供しているかどうかに焦点を当てた立ち入り検査を実施する方針であるとのことです。 金融庁は銀行の投…

退職給付会計と年金財政決算の違い

退職給付会計や年金制度は銀行員にはあまりなじみのないものです。 しかし、退職給付会計は実質的には従業員からの借入といえます。企業の財務内容を今後評価していくならば退職給付会計面も勘案しなければなりません。 今回は、用語が似ていることもあり混…

LTCMから得る教訓の重要性

かつてLTCM(Long Term Capital Management)という世界で最も有名なヘッジファンドがありました。 このヘッジファンドは結果として破綻してしまいましたが、このファンドの破綻劇から得られる教訓は今でも重要です。 今回はLTCMから得る投資原則の重要性に…

私募投資信託の残高増加は懸念する必要があるのか

日本において私募投信の残高が急増しています。日銀のマイナス金利政策導入後の運用難の環境下、少しでも収益を確保するために私募投信に資金が流れているのです。今回は私募投信の残高増加に懸念はないのか考察します。 私募投信とは 私募投信の規模 私募投…

ヤフーによるジャパンネット銀行の連結子会社化は良い戦略

ヤフーによるジャパンネット銀行の連結子会社化が2017年8月1日に発表されました。今回はこの動きについて考察します。 発表内容 連結子会社化の目的 ジャパンネット銀行とは ジャパンネット銀行の課題 ジャパンネット銀行の戦略 ジャパンネット銀行に…

ドンキホーテの銀行業参入はセブン銀行モデルなのか

ドンキホーテホールディングスは2017年6月期決算発表(グループ事業説明会)で、大原CEOが「銀行業や金融業は当然視野に入っている」と述べたとの報道がなされています。 大原CEOは「売上金は日々溜まり、集金で回収してもらう。ATMがあるなら、ATMに入…

CAT債(キャットボンド)の魅力と課題

低金利の環境下、資産運用で収益を確保することは非常に難しくなっています。 投資家は、近時は、伝統的な4資産(国内株式、外国株式、国内債券、外国債券)に加えて、不動産(REIT等)のようなオルタナティブ投資を行うことによる分散投資で収益を確保しよ…

不動産クラウドファンディングとJ-REITの比較

フィンテック(Fintech)に続き不動産テックという用語を耳にするようになってきています。 不動産テックには様々な形態が出てきていますが、今回は不動産クラウドファンディングについて特にJ-REITとの比較を行いながら考察します。 不動産クラウドファンデ…

アパート建築の着工減少の本当の背景は?

近時は、賃貸アパートの建設やアパートローンの貸出が過熱しているとの記事や、それを金融庁や日銀が問題視しているとの記事を目にすることが多くなりました。現状は「本当のところどうなのか」について今回考察します。 貸家着工の状況 アパートローンの状…