みずほ銀行とソフトバンクがAIスコア・レンディングを日本で初めて開始しました。
今回はこのAIスコア・レンディングについて考察します。
AIスコア・レンディングとは
AIスコア・レンディングとは利用する顧客自身のさまざまなデータをAI技術を活用してスコア化し、そのAIスコアをもとに、それぞれの顧客に適正な条件を提示して貸出を行うサービスです。
画面のイメージを見た方が想像がしやすいかもしれません。
出所 画像はソフトバンクのHPから引用
ポイントとなるのは以下の点です。
- スマホのみでも完結できること
- AIスコア取得には18種類の質問に答えるだけであり迅速であること
- 様々な個人情報を提供することによりスコアがアップする可能性があること
- 提供する情報にはライフスタイルも含まれること
- スコアによって借入額・金利が事前に想定できること
- 外国人留学生でも対象となること
- みずほ銀行やソフトバンクとの取引があることによって借入条件が変化すること
以上が当該サービスの特徴的なところでしょう。
AIスコア・レンディングの評価
筆者はAIスコア・レンディングには将来性があると考えています。
年収や趣味等でスコアリングをつけるだけであれば今までの統計データ等を利用したスコアリングモデルを使えばよく、AIスコア・レンディングとまで名乗る必要はないでしょう。
AIによってどの程度まで情報を収集し、学習していくのかがポイントとなると思いますが、基本的にはAIスコア・レンディングが個人ローンのスタンダードになっていくのは間違いありません。
各銀行等とも将来的には導入し、個々のAIによって重視する項目が変わってくる可能性があるというだけです。
今回のみずほ銀行とソフトバンクのAIスコア・レンディングの有利な点は、みずほ銀行での取引情報とソフトバンク(通信会社)の取引情報をマッチングさせて個人のスコアを出せるところでしょう。
また、「100種類以上の情報提供を想定して」いますから、様々なステータスの個人に関する貸し倒れ実績等の情報を今後収集し、AIで分析していくということになります。この情報収集、分析は早くスタートした方が有利です。
個人で一般的に利用されるカードローンもしくは消費者金融は年収等の簡単な情報のみに基づいています。これでは個人の信用力を深く分析することはできません。よって、借入人のほとんどが自身の信用力よりも厳しく評価されている(=高い金利で借入を行っている)可能性が高くなっています。
今回のAIスコア・レンディングは個人の属性を深く確認できる訳ですから、個人の信用力をより精緻に評価できる可能性があり、金利面や金額面で競争力を発揮できるでしょう。
よって、みずほ銀行・ソフトバンクの個人取引情報利用、事業スタートのタイミング、そして個人の属性を精緻に把握できることが当該AIスコア・レンディング事業の優位点になるということです。
このように有望な事業ですが、目下の問題は銀行カードローンの社会問題化かもしれません。
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他企業との競合
みずほ銀行とソフトバンクがAIスコア・レンディングを他行、他事業者に先んじてリリースしたことは非常に意味があるでしょう。このような事業は早い方が知名度、情報の蓄積等において有利だからです。
ただし、AIスコア・レンディングで競争力を持てそうな企業、業態は他にもあります。
日本での最有力はヤフーとジャパンネット銀行です。Yahoo!JAPAN IDを利用し個人のネットでの行動、興味の情報収集に加え、ヤフオク!やYahoo!ショッピングでの購買履歴、Yahoo!カードの支払履歴等膨大な個人データを活用できるからです。
今回のAIスコア・レンディングでは、ソフトバンクは連結子会社であるヤフーの保持するデータは使えないのではないかと想定しています。日本で最も個人情報を収集している一社であるヤフーの情報を使えれば、より精緻な個人の信用評価が可能でしょう。そのため、ヤフーとジャパンネット銀行が最有力といえるのです。
ヤフーについては、ジャパンネット銀行の子会社は決済を強化することが主眼だと認識していましたが、AIスコア・レンディングも有望だと思われます。
各社のAIスコア・レンディングでの今後の展開に注目しています。