三菱UFJフィナンシャル・グループの平野社長が国内の事務作業の自動化やデジタル化で「9,500人相当の労働量の削減を実現したい」「従業員をよりクリエーティブな仕事に振り向ける」と述べたと報道されています。
今回はこの自動化、デジタル化、クリエーティブな業務について考察します。
MUFGの方向性
三菱UFJフィナンシャル・グループの平野社長は「FIN/SUMウィーク2017」での講演で以下のポイントを述べています。
- 長期的な政界経済の低迷、規制強化で金融業界の経営者は危機感を深めている
- 組織全体としてデジタル技術による経営改革に取り組み、既存業務を大幅に効率化する必要がある
- 業務の大胆なデジタル化によって、今後7年間で2,000億円の利益押し上げ効果を目指している
- この2,000億円のうち3分の2は業務プロセスの効率化によるもの
- これまで比較的単純な作業に従事してきた従業員をよりクリエーティブな仕事に振り向ける
MUFGのデジタルフォーメーション戦略①
前述のMUFG社長の講演内容はMUFGが2017年9月に発表したデジタルフォーメーション戦略の中の一部だと思われます。
http://www.mufg.jp/ir/presentation/backnumber/pdf/slides170911.pdf
MUFGの課題認識・問題意識が見えますので、銀行員にとっては参考となるでしょう。
ポイントは以下の点です。キーワードを抜粋します。
問題意識
- 銀行がなくなる
- 銀行業の 再定義
- 何を仲介するのか
- 供給するサービスは
- ゴールが見えない
- Pathが見えない
- レガシーをどうするのか
- 社会からの要請
- Open化の流れ
デジタライゼーションとイノベーション
- 諸届電子化
- 店頭オンライン化
- 事務のSPT化
- ペーパーレス
- 外部知見
- 公募アイディア
- AI
- 未来型店舗
- データ利活用
MUFGのデジタルフォーメーション戦略②
ではどのような銀行業務に具体的に影響がでるのでしょうか。
MUFGの資料からは以下の点がポイントになってきそうです。
- バックオフィス業務の自動化
- 顧客のデジタルチャネルシフト誘導強化(店舗の再編・統合)
- グループプラットフォーム化、オペレーション共有・効率化(子会社群の効率化)
- ビッグデータのマーケティングおよび業務推進・予兆管理での利用
- IBM Watsonの照会対応・運用相談
- AIファンド
- 人型ロボット店頭設置
- 内外事務センター等での手作業事務の自動化
上記の業務に関係している銀行員は自身の業務が大幅に変わる、もしくは無くなることも想定しなければならないでしょう。
MUFGのデジタルフォーメーション戦略③
さらに具体的にはどのような影響があるのかをみていきます。
FAQの自動応答
オペレーターの代替としての電話照会自動システムは正しい回答率が9割超まできているようです。電話オペレーターの業務は自動化されていくことはほぼ間違いないでしょう。
AIによる業務代替
MUFGの調査ではAIで代替可能な業務プロセスを調査し約4割で代替可能と試算しています。
そのうち、主要5テーマがAIによる代替業務として挙がっています。
その5テーマとは、ヘルプデスク(応答業務自動化)、帳票処理(口座振替依頼書の振り分け、転記作業の代替)、検索(情報収集・アクセスの高度化)、営業支援(情報収集・ネクストアクションの推薦)、審査(審査業務の効率化)です。
この業務に関係する銀行員は留意する必要があるでしょう。
事例では住宅ローンの団体信用保険申込書の点検業務で年間2,500時間相当の手作業削減を実現したと発表されています。
銀行員はどのような仕事をすることになるのか
今まで見てきたように業務の自動化による影響は相応に大きいでしょう。
そして従業員はクリエーティブな仕事に振り向けるとMUFGでは明言しました。
では、クリエーティブな仕事とは何でしょうか。
MUFGではカルチャー改革から始めるようです。ここにMUFGの問題意識も現れています。
<現在>
- プロジェクト志向:万全を期す、失敗を許さない、機会損失を責めない
- 縦割り組織の中で動く
- 定められたプロセスの通りに動く
- リスクを避ける
- 内部の知見/経験の偏重
<改革後>
- プロダクト志向:顧客体験の変化、スピード重視、チャレンジを推奨、失敗から学ぶ(正解がない中でトライ)
- エンティティ・部門の枠を跨ぎ協力
- 機動的に動く
- まず実験してみる「やってみよう」
- 継続的にイノベーションを起こす
筆者にはクリエーティブな仕事を銀行ができるのか、銀行という組織・風土が許すのか等々疑問に思うところは多々あるのですが、MUFGはトップがこのように動かしていきたいということなのです。
銀行員は現在の業務をしっかりと対応しながらも、新たに求められることに対して今のうちから準備しておいた方が良いのかもしれません。