銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

積立NISAについての整理

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2018年1月より積立NISAがスタートします。
銀行の営業店では積立NISAについて特段盛り上がっていないでしょうが、資産運用会社では商品設定にかなりの労力をかけたと思われます。

結果、当初の発表から積立NISAの対象として認定される投資信託の数が増加し120本となりました。

対象投信120本=積立NISA、来年1月開始-金融庁:時事ドットコム

http://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/08.pdf

金融庁公表資料(2017年8月30日付)

今回は、注目を集めている積立NISAについてiDeCoとの比較によるメリット・デメリットも含めて考察します。

積立NISAとは

積立NISAとは積立に特化した少額非課税制度をいいます。

積立NISAでは投資した資産の運用益が非課税になるメリットがあります。

日本においては、NISA、ジュニアNISAに続く3番目の少額非課税制度となります。

導入は2018年1月からとなっており、年間の投資上限額は40万円です。

政府等は「貯蓄から投資へ」、すなわち株式市場等へ個人の資金を流したい意向があります。積立NISAにもその役割を果たすことが期待されています。

積立NISAの制度概要

年間投資限度額 年間40万円
運用期間    20年間
投資可能商品  金融庁が認めた投資信託
非課税対象   運用益

積立NISAを銀行の担当はセールスするのか?

積立NISAについては来年の導入に向けて、これから広報等が増加していくことになるでしょうから、世の中では話題性が増加していくことが想定されます。

ただし、営業担当の銀行員が積立NISAをお客様にセールスするのはあまり得策ではないと筆者は考えています。

年間40万円までしか積み立てられないのであれば、銀行収益への貢献は非常に限られているためです。これはiDeCoと同様でしょう。

ただし、iDeCoはセールスに法的な問題がありましたが、積立NISAにはそれがありません。

 

収益性を少しでも確保すべく、積立NISAの販売はネットを窓口にする方が戦略としては正しいと思います。将来の顧客を開拓したい、囲いこみたいという銀行の考えはあるでしょうが、銀行の個人・リテール分野はネットに移行していくことは間違いありませんし、顧客を囲いこむのは非常に難しいためです。

なお、積立NISAを銀行の店頭や渉外担当が販売することになるならば、一定程度は金融庁からの圧力もしくは同庁への忖度(そんたく)があるのかもしれません。

積立NISAとiDeCoの比較

積立型の非課税制度としては、他に個人型DC、通称iDeCoがあります。

現段階では銀行員なら積立NISAとiDeCoについてお客様に案内が出来るようにはしておいた方が良いでしょう。

積立NISAとiDeCoの主な違いは以下の通りです。

  • 運用可能期間については、積立NISAは20年、iDeCoは60歳までの預け入れが必須
  • 積立NISAは中途解約可能、iDeCoは解約不可
  • 運用可能額は積立NISAが年間40万円まで、iDeCoは年間14.4万円(確定給付年金加入者、公務員)、24万円(企業型DC制度加入者)、27.6万円(企業型DCのない会社の社員)、81.6万円(自営業)まで
  • 積立NISAは運用益が非課税だが、iDeCoは掛金拠出分が所得控除となり運用益も非課税

積立NISAとiDeCoの個人にとっての優劣

以上をみてくると積立NISAよりiDeCoの方が所得控除があるため大きなメリットがあります。

筆者からすると圧倒的にiDeCoの方が制度は優れています。

よって、ほとんどの個人はまずiDeCoに加入すべきです。

そしてiDeCoの掛金枠を全て使いきってもまだ積立が可能な場合に、積立NISAを利用すれば良いのです。

日本で最も優れた運用商品は間違いなくDC です。こちらの記事もご参照下さい。


ただし、積立NISAを行った方が良い方もいます。それは収入のない主婦・主夫のような方です。iDeCoのメリットのほとんどは所得の控除です。よって主婦・主夫はiDeCoを利用してもあまり意味はないのです。むしろ60歳まで引き出せなくなってしまうため、途中で引き出しが可能な積立NISAの方が優れています。
以上、積立NISAについて最も重要なポイントを考察しました。お客様との会話の前の頭の整理として当該記事がお役に立てば幸いです。