銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2017-01-01から1年間の記事一覧

銀行の「名ばかり管理職」問題

銀行は長時間労働・サービス残業が横行していました。かなり改善されてきたと思いますが、それでもまだまだ労働時間は長いのではないでしょうか。 今回は銀行における残業代のつかない管理監督者、いわゆる名ばかり管理職問題について考察します。 [:content…

三菱UFJの中間決算は余裕あり

三菱UFJフィナンシャル・グループの2018年3月期中間決算が発表されました。 詳細は11月21日に発表されるのでしょうが、現段階で開示されている資料をもとに三菱UFJの業績状況について今回は分析することにします。 メガバンクトップの三菱UFJでも本業は厳し…

三井住友FGの中間決算評価~あえて危機感を演出されているのでは?~

三井住友FGの2018年3月期中間決算が発表されました。 この中間決算については、日経新聞等マスコミが「銀行の本業が厳しい」と報道しています。 筆者はメガバンクを含む銀行業界の置かれている状況が厳しいとは考えていますが、今回の銀行決算についてのマス…

みずほFGの中間決算にみる苦境と裏の目的

(画像はみずほFGのホームページより) みずほFGが2018年3月期の中間決算を発表しました。 この中間発表においてグループの構造改革も発表しています。 報道では長引く低金利の影響により収益力が低下したことが要因とされています。 (報道例)http://www3.nhk.…

金融庁の金融行政方針(平成29年度)のポイント~地方銀行への影響~

2017年11月に金融庁が金融行政方針を発表しました。 この金融行政方針は今後の金融行政が何を目指すか、その方向性を捉える資料となり、銀行経営にも多大な影響があります。規制業種である銀行は「官」を無視できないのです。今回はこの金融行政方針の内容を…

適格退職年金(適年)が担っていた信用創造という役割~産業金融の観点から~

適格退職年金、通称「適年(てきねん)」という仕組みをご記憶の方も多いでしょう。 この適年は2012年に実質的に廃止され、現在では残っていません。 適年という仕組みは従業員の老後保障のために導入されたとお考えの方が多いのですが、実際には高度成長期…

接待の帰りに事故にあったら労災になるのか~理不尽だけど現実~

接待がなぜ労働時間=残業にならないのかという記事をアップした際に、「では接待の帰りに事故にあったら労災にならないのか」という趣旨のご質問をいただきました。 今回は、この接待と労災の関係について整理します。 (前回記事) www.financepensionreal…

「バブルの物語」から見えるビットコインをはじめとした暗号通貨~人間はそんなに変わらないのでは~

2017年11月9日に日経平均株価が25年10か月ぶりの2万3,000円をつけました。 米国でもダウ平均が過去最高を更新し続けてきました。 不動産や金など様々な資産の価格が上昇してきています。 そして、ビットコインに代表される仮想通貨、暗号通貨の価格上昇がす…

メガバンクの店舗リストラの背景を簡単に解説する

2017年11月8日の産経新聞ホームページにはみずほフィナンシャルグループが全国の拠点の半数を小型店に切り替える検討に入った旨の記事が掲載されました。 www.sankei.com また、同日の読売新聞ホームページには三菱東京UFJ銀行が今後5年程度でフルバンク型の…

接待はなぜ労働時間=残業にならないのか

今回は会社員とって非常に納得感がないであろう「接待」について考察します。 会社員にとって(もちろん銀行員にとっても)、接待は残業や休日出勤には通常該当しません。 これは特に若手のうちは納得のいかないことではないでしょうか(歳を重ねると、慣れ…

残業問題を解決するには三六(サブロク)協定破棄が交渉材料になるという暴論

近時の働き方改革の議論をみていると少々違和感を感じずにはいられません。 企業も労働組合もスタートの立ち位置から議論した方が良いように感じます。 銀行員にとっても残業問題は他人事ではありません。自身の働き方にも影響しますし、取引先企業で問題が…

解雇の法的位置付け~正社員は簡単にリストラされないという事実~

前回までの記事でメガバンクのリストラについて考察してきました。 その中で繰り返し触れましたが、日本では正社員は簡単には解雇されません。 今回は、この「解雇」について法的な位置付けを考察します。 これは、正社員(銀行員含む)自身にとっても重要な話…

【余話】メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える~皆様のコメントから~

今回は先日アップした「メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える」という記事(文末にリンク掲載)に対する皆様からのコメントについて、自分のできる範囲でお答え致します。 本当に多くのコメントをいただきありがとうございました。 はてなブックマー…

メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える③~三菱東京UFJ銀行の事例~

マイナス金利政策の影響による収益減、国内人口減等を背景に、店舗閉鎖によるコスト削減、AI活用による業務量削減への対応としてメガバンクが人員を削減すると発表・報道されています。 今回はシリーズでこのメガバンクの人員リストラ問題について考察してき…

メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える②~みずほ銀行の事例~

前回、メガバンクのリストラ報道について内容を確認した上で、三井住友銀行についての状況を確認・想定しました。 www.financepensionrealestate.work 一方で、みずほ銀行は今後10年で1.9万人の「業務量」を減らすとしています。 今回は、みずほ銀行について…

メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える~三井住友銀行の事例~

「3銀行大リストラ時代 3.2万人分業務削減へ」(日本経済新聞、2017年10月28日記事)という記事をご覧になった方も多いのではないでしょうか。 マイナス金利政策の影響による収益減、国内人口減等を背景に、店舗閉鎖によるコスト削減、AI活用による業務量削…

金融庁の金融レポートにみる銀行の運用商品販売の今後

今回は2017年10月に公表された金融庁の金融レポートから、金融庁が問題意識を持つ「銀行の顧客本意の業務運営」等についてみていきます。 この金融庁の問題意識を確認することにより銀行の個人・リテール部門における販売商品・販売方法の将来的な方向性等が…

金融庁の金融レポートにみる地方銀行の未来

2017年10月に金融庁が金融レポートを発表しました。 金融レポートは毎年公表している金融行政方針の進捗状況・実績等を評価し、現状分析・問題提起を行う目的で金融庁が公表しているレポートです。 今回はこの直近の金融レポートにおいて示された金融庁の特…

テイラー・ルールとは何か

米国ではFRB(連邦準備制度理事会)議長人事が大詰めを迎えています。 2017年10月31日現在ではパウエル氏が有力とされていますが、共和党にはスタンフォード大のテイラー教授を支持している議員もいるようです。 テイラー教授はテイラー・ルールを提唱したこ…

不動産アセットマネジメント業務はなぜ存在するのか

不動産の証券化投資スキームでは、不動産アセットマネジメント業務を行うアセットマネジャーを活用することが非常に多くなっています。 少なくとも10年前には、不動産アセットマネジャーは不動産証券化スキームに組み込まれていませんでした。この不動産アセ…

資産管理会社を活用した相続対策の基本

相続対策に有効なのは法人を作ることだとお聞きになった方も多いのではないでしょうか。 しかし、なぜ法人を活用すると相続対策になるのでしょうか。そしてデメリットはないのでしょうか。 今回は簡単に資産管理会社といわれる法人設立による相続対策につい…

信託銀行とは利益相反のかたまり~信託銀行が解体される可能性~

信託銀行という金融機関があります。 金融業界に勤めている人はともかく、一般にはあまり知られていないのではないでしょうか。 この信託銀行については近時様々な動きがあります。 今回は信託銀行がどのような金融機関であるか、信託銀行の様々な動きはどの…

邦銀、そのなかでも地銀にこれから何が起きるか~日銀レポートからの考察~

2017年10月23日に日銀が金融システムレポートを公表しました。 主な内容としては、邦銀(日本の民間銀行)の低収益の背景に過剰競争があるとの分析となっています。 今回はこの日銀の金融システムレポートの内容を確認し、今後の邦銀の動向について考察しま…

不動産の両手仲介は「悪」なのか~今後の動向予想~

ソニー不動産が「片手取引・仲介」を全面に押し出して一部で人気を集めているようです。 片手取引もしくは片手仲介という聞きなれない言葉は、不動産の売買を仲介する業者の取引形態の1つです。 不動産仲介業者は、不動産の売り手と買い手、両方の売買の橋渡…

有償ストック・オプションがなくなる未来

2017年10月20日の日経新聞に「従業員が対価払う株式購入権 報酬か投資か 議論熱く」という記事が掲載されました。 内容としては、今まで費用計上しなくてもよかった有償ストック・オプションが費用計上しなければならなくなる可能性があるというものです。 …

【余話】これからのIRは表情を読むAIへの対応が必要

AI IR

今回は簡単にロイターの記事をご紹介します。 記事の内容としては、日銀の黒田総裁の表情をAIが読み取り、その表情と金融政策の変更との間に相関関係を発見したと東京大学出身の研究者ら(一人は野村證券金融経済研究所のエコノミスト)が発表したというもの…

受益者連続型信託は遺産分割協議の対象外となるのか~遺留分に関する疑問点~

大和ハウス工業グループが信託会社を設立したと発表しました。 この信託会社を設立した目的のひとつに顧客の相続対策があるとしています。 このような信託会社は大東建託、スターツコーポレーション、積水ハウスも設立しており顧客の相続対策ニーズが高いこ…

収益不動産購入による相続対策~借入金そのものには節税効果なし~

賃貸アパートの乱立、銀行のアパートローンの抑制等を報道等で目にします。 賃貸アパート建築、購入が相続税対策になるということはほとんどの方が認識されているでしょう。 しかし、具体的にはどのような効果があるのかをご存じの方は以外と少ないのではな…

労働契約法の2018年問題~有期雇用の無期雇用への転換~

2018年4月から有期労働契約の無期労働契約への転換が本格実施されます。 これは労働契約法の2018年問題と呼ばれており、企業側にも様々な対応が必要となります。 今回の記事は、有期雇用の無期雇用への転換についてみていきます。 無期労働契約転換が実施さ…

サステナブル投資の類型

GPIFが2017年7月にESG指数に連動した運用を開始したことでESG投資が注目を浴び始めています。 今回はESG投資を含む概念であるサステナブル投資についてみていきます。 サステナブル投資とは サステナブル投資の分類・戦略 ネガティブ/排除・スクリーニング …