三井住友FGの2018年3月期中間決算が発表されました。
この中間決算については、日経新聞等マスコミが「銀行の本業が厳しい」と報道しています。
筆者はメガバンクを含む銀行業界の置かれている状況が厳しいとは考えていますが、今回の銀行決算についてのマスコミを含めた発表・報道の仕方については違和感を感じています。
一連の流れはメガバンクや日経新聞等が示し合わせてリストラモードに入るための雰囲気作りをしているように感じられるということです。
今回は三井住友FGの決算内容について考察します。
筆者のような考え方もあるとご認識いただければ幸いです。
報道内容
まずはマスコミがどのような報道をしたかをチェックしていきましょう。
日経新聞ホームページから以下引用します。
三井住友FGの4~9月期、純利益17%増株式売却や海外事業の拡大寄与
2017年11月14日 18:28
三井住友フィナンシャルグループが14日発表した2017年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比17%増の4201億円だった。預貸金利ざやの縮小などで本業の収益は悪化したものの、持ち合い株式の売却益や運用商品の販売好調、海外事業の拡大などが全体の収益を押し上げた。本業のもうけを示す実質業務純益(三井住友銀行単独ベース)は40%減の3053億円だった。預貸金利ざやは0.99%と前年同期から0.09ポイント縮小した。(記事抜粋)
https://r.nikkei.com/article/DGXLASFL14HSY_U7A111C1000000
この報道をみると、普通にニュースに接した人は、三井住友FGの本業は厳しいが他の分野で収益を取り返したと、受け取ることでしょう。そして、その本業である銀行単体の利益(実質業務純益)は▲40%も減少したとされていますので、やはり銀行の業績は厳しいのだと認識するのです。
では、三井住友FGの決算は本当に厳しいのでしょうか。
以下でみていきましょう。
三井住友FG中間決算状況
三井住友FG連結ベース
まずは三井住友フィナンシャルグループの連結決算数値を確認します。
連結粗利益(一般企業の売上高に相当) 14,657億円 前年同期比+483億円
連結業務純益(一般企業の営業利益に相当)6,013億円 前年同期比+532億円
連結経常利益 6,155億円 前年同期比+1,013億円
連結純利益 4,201億円 前年同期比+609億円
以上見ていただいた通り、業績が厳しいのではなく、連結ベースでは「業績好調」というべき内容です。
ここに疑いの余地はありません。厳然たる事実です。
三井住友銀行単体ベース
次に三井住友銀行単体の決算数値を確認します。
業務粗利益(一般企業の売上高に相当) 7,091億円 前年同期比▲2,048億円
実質業務純益(一般企業の営業利益に相当) 3,053億円 前年同期比▲2,067億円
経常利益 3,684億円 前年同期比▲1,117億円
中間純利益 2,844億円 前年同期比▲1,136億円
このようにみると三井住友銀行は単体決算として非常に厳しく、報道の通りメガバンクはリストラを行っていかなければならないように感じられます。
では、本当にそうなのでしょうか。
以下で決算内容についてもう少し掘り下げてみていきます。
三井住友銀行単体決算の分析
上述の通り三井住友銀行は単体で業務粗利益も業務純益も約2,000億円減少しています。一般企業の営業利益(本業の利益)ベースで約4割も利益が減少しているのですから、危機的状況にあるように感じられるでしょう。
そして業務粗利益(いわゆる売上高に相当)の内訳をみると「国内の資金利益」が▲1,862億円減少しています。
資金利益は貸出金の利息や有価証券の利息・配当金等を計上する銀行の本業にかかわる項目です。
よって、そのまま読めば「低金利環境が続いて銀行の貸出は儲からなくなってきている」と理解されてしまいます。
ところが、ここに落とし穴があります。
今回、恐らくどのマスコミも報道していないのですが、前年同期(2016年9月中間決算)には、SMBC日興証券から三井住友銀行に対して2,000億円の配当が支払われていることがきちんと三井住友FGの発表資料にも掲載されています。
気になる方は以下のリンク先にある「2017年度中間期実績の概要(1,525KB)」の5Pをご覧ください。
http://www.smfg.co.jp/investor/financial/latest_statement.html
この配当金支払は三井住友銀行の資金利益に計上されていました。
したがって、配当金は臨時に計上された収益だということができます。
そうすると、三井住友銀行単体での決算は、前年同期比較で、実質的にはほとんど減益となっていないのです。業務粗利益(売上)も業務純益(利益)も約50億円程度の減少に留まります。
これが、押さえておくべき事実です。
三井住友FGの中間決算に関する評価
上記でみてきた通り、三井住友FG連結での決算は好調といえます。増収増益なのですから、これを否定はできません。
また、三井住友銀行単体の決算は大幅な減益ですが、これは前年同期に一時的な利益が計上されていた要因がありますので、実質的には大幅減益ではありません。
そもそもSMBC日興証券から同じグループの三井住友銀行に配当金が支払われていただけの話ですから、連結決算では消去されて表には出てこない数字でしかありません。
すなわち、三井住友FGの中間決算は、「悪くない」のです。
これが、三井住友FGの中間決算に対する筆者の評価です。
ただし、今回の中間決算が好調だったとしても、低金利環境の継続、フィンテックの普及、マザーマーケットである日本の人口減少等は、今後間違いなく銀行経営に影響を及ぼします。人員、店舗、システム等の構造改革を行わなければならないことに疑問の余地はありません。
しかし、決算数字を曲解して伝える必要はないはずです。
マスコミは銀行側の発表を鵜呑みにして報道しているのかもしれませんが、冷静に数字を分析することも役割なのではないでしょうか。
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