相続対策に有効なのは法人を作ることだとお聞きになった方も多いのではないでしょうか。
しかし、なぜ法人を活用すると相続対策になるのでしょうか。そしてデメリットはないのでしょうか。
今回は簡単に資産管理会社といわれる法人設立による相続対策について考察します。
どの程度の所得があればメリットがあるのか
これは一般的にいわれていることですが、個人の所得金額が900万円以上の場合は、資産管理会社を活用した方が良いとされています。
例えば所得が1,000万円の場合、所得税率は33%、住民税率は10%の合わせて約43%の税率となります。
資産管理会社活用のメリット
皆さんは会社四季報をご覧になったことはあるでしょうか。会社四季報には上場企業の上位株主の記載があります。その株主の中には「○○コーポレーション」のような創業者の名前からとった社名であると推測されるものがあります。これは資産管理会社であることがほとんどです。
そのような上場企業の創業者も利用している資産管理会社のメリットは何でしょうか。活用すると何が良いのでしょうか。
以下3点がポイントとなります。
所得税率と法人税率の差
日本の所得税率は所得税・住民税・復興特別所得税合わせて最高税率で55.95%、相続税の最高税率は55%になっています。
一方で、法人税率は低下傾向にあります。2017年現在の法人実効税率は29.97%であり、個人と比べた最大税率の差は25%以上(中小企業の場合はさらに優遇があるため)となっています。
すなわち個人よりも法人の方が税率が低いのです。
所得分散(相続財産の肥大化防止)
特に個人で不動産を保有している場合は、個人から法人へ収益不動産を売却することにより賃料収入を法人に付け替え、この収入を後継者(子息)等へ役員報酬として支払うことで、給与所得控除の活用、所得税率の軽減(=支払先を分散させて個人一人あたりの所得税率を低減)、将来の相続税納税資金の準備が可能となります。
また死亡退職金の非課税枠利用(500万円 × 法定相続人数=非課税)も可能ですし、不動産相続手続きにかかる費用負担(不動産流通税等≒所有権移転登記等)も法人ならば所有者が変わらないので削減できます。
(死亡退職金については国税庁HPご参照)
No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|相続税|国税庁
相続財産評価の圧縮
個人で不動産を購入するよりも法人で購入した方が、相続税の圧縮効果が大きいケースがあります。
これは相続財産を不動産から資産管理会社の株式に変える効果があり、株式の評価額には類似業種比準価額方式(※)を適応できる場合があるためです。
※類似業種比準価額方式は、自分の会社と、他の類似業種・規模の標準的な会社とを比べて評価する方法です。純資産価額方式(時価評価)だと相続税評価額が高くなりすぎるの場合に主に利用されます。
資産管理会社のデメリット
資産管理会社のメリットは上記でイメージをつかんで頂けたのではないでしょうか。
一方で、メリットの裏には通常デメリットがあるものです。
資産管理会社を活用するデメリットは以下に整理できます。
- 社会保険への強制加入
- 赤字決算でも均等割部分の納税義務(最低で7万円の法人にとっての住民税)
- 法人設立費用(登記費用等)
- 法人維持費用(税理士報酬)
- 決算および税務申告の手間
- 勤務先の兼業禁止等服務規程への抵触可能性
上記をみれば分かるように、デメリットは「手間」ぐらいでしょう。
資産管理会社設立には、あまりデメリットはありません。
まとめ
資産管理会社を用いた相続対策は、基本的には「税率の差を利用する」「分散を用いて累進課税下における適用税率を引き下げる」「様々な控除枠を活用する」ということです。
万能ではありませんが、ケースによっては節税となる可能性はあります。
また収益不動産購入との親和性が高いことも特徴となります。
銀行員にとっては上記知識があれば、とりあえずは良いでしょう。
(参考記事)