自動車の自動運転技術の開発競争が激化しています。
2020年代にはある程度の自動運転化が本当になされている可能性もゼロではありません。
この自動運転技術が完成、普及となった場合には、金融業界にも不動産業界にも非常に大きな変化をもたらすことになります。
今回は自動運転技術による影響について考察します。
自動運転技術の現状
自動運転技術の完成はすぐ間近に迫っているように感じる人も多く存在するのではないでしょうか。マスコミ報道では、様々な開発会社が技術を発表したニュースや、自動運転を見据えた技術を手にいれるための大型買収のニュースも目にしている方もいるでしょう。
筆者は自動車業界の専門家ではないためテレビや雑誌でみる程度しか技術開発動向については分かりません。ただ、技術的には未だに多くの課題を抱えているとは認識しています。それでも技術的なことであれば、おそらく開発者たちは乗り越えるのではないでしょうか。そのため自動運転技術はもう間もなく完成してくるようにも思えます。
ただし、自動運転技術の開発が抱える問題は技術的なものだけではありません。筆者がもっとも問題だと認識しているのは、自動運転技術の倫理面、法的責任の問題です。
分かりやすい倫理面の事例は、事故が避けられない状況にあるときの問題です。
すぐ前に走っているトラックが急ブレーキをかけたとします。
後ろの自動運転車はブレーキをかけても衝突することが避けられません。そこで右側に避けようとすると通学中の小学生の列に突っ込みます。左側に避けようとすると中年の男性の方が自転車にのっていて同じように衝突してしまいます。
この場合、自動運転を担うAIはどのように行動すべきでしょうか。
トラックに追突すると乗車している自動車所有者が死亡する可能性があります。
右側に避けると将来ある子供を死亡させてしまうかもしれません。
左側によけると一家の大黒柱の男性を死亡させてしまい、その家族を路頭に迷わせてしまうかもしれません。
AIはどのような学習をしようと、結局は人間が選択肢を示す・指示するしかないのです。
上記の例の選択肢を指示することのできる開発者・メーカーはいるのでしょうか。
それを是と認める国はあるのでしょうか。
また、法的責任の観点では、自動運転車が事故を起こした場合の法的責任は誰がとるのかという問題があります。
メーカーがとるのであれば、そのような巨額の賠償リスクを伴う自動運転車を販売するメーカーは出てくるのでしょうか。
以上の通り、自動運転技術の普及には大きな課題があります。私見ですが、一般道での自動運転はそう簡単には普及しないと考えています。
自動運転が普及した場合
上記のように自動運転の普及には大きな課題があります。
しかしながら、技術的にも倫理的、法的責任においても問題をクリアしたとします。そうするとわれわれの生活には大きな変化が訪れます。ポイントは人間が乗車せず自動運転車だけで走行、駐車ができるようになったときです。
自宅からスマートフォンで自動車がよべるようになったら、不動産の価値にはパラダイムシフトが起きるぐらいのインパクトが発生します。
筆者が勝手に想像する事例は以下の通りです。
自宅近くに駐車場が不要になる
自動運転車が勝手に走行できるようになれば郊外の安い駐車場で十分になります。
乗車していた人は家の前で降りますが、自動車は勝手に郊外の駐車場に帰っていくのです。掃除機のルンバが勝手に充電場所に戻るようなものです。
家の近くで高い賃料を払い駐車場を借りていた人にとっては大幅なコストダウンとなる一方で、都心では駐車場の賃料が大幅に下落する可能性があります。
商業施設の駐車場が不要になる
蓄電池の性能が向上すれば太陽光発電のような再生可能エネルギーで全ての電力が賄われるようになる可能性があります。
この場合、自動運転車を走行させるコストはかなり低くなるかもしれません。
そうすると自動車の所有者が商業施設にいる間は、自動運転車に勝手に一般道を走行させておけば駐車場が必要なくなります。
必要なマンション設備が変更となる
駐車場が不要となれば特に機械式駐車場を備えるマンションにとっては困ることになります。
維持費が継続的に発生し続ける可能性もありますし、駐車場代金が入ってくることを前提にマンション全体を運営しているところもあるでしょう。
機械式駐車場は完全に不要な設備になるのです。
また、自動運転車のシェアが当たり前になれば自動車の利用代金が大幅に低下する可能性が高いでしょう。その場合、自動車を気楽に利用する人が増え、マンションの設備に大型の車寄せが必要となる可能性もあります。
今あるマンションはこのような機能を簡単には提供できず時代遅れとなってしまう可能性があります。
駅近の住宅価値が変わる
不動産は駅近であれば間違いないといわれてきましたが、自動運転が普及すればこの神話も崩れるかもしれません。
郊外から自動車で寝ながら出勤するライフスタイルもありえるようになるからです。
不動産の価値が変わる
以上のように事例をみると不動産の価値が激変する可能性に気づくでしょう。
ロードサイドの店舗には駐車場が不要になるかもしれません。コンビニに駐車場があるのは意味がないかもしれません。機械駐車場を備え付けたオフィスビルはコスト競争力で負けるかもしれません。
そのため、今までは素晴らしい投資対象だった不動産の価値は激変することだってありえます。
現在は、駅前の駐車場は利回りさえ確保できれば手間のかからない良い投資物件です。コンビニの30年普通借も立地さえ良ければ同じように手間のかからない投資でしょう。銀行でいえば物件の担保評価も駅近であることは重要なポイントになります。
この前提が崩れてしまうのが自動運転技術の普及です。そして、人が一切関与しなくても良いレベルに自動運転技術が向上し、それが実施される時が不動産価格が大幅に変動する時なのです。
まだ懸念するには早いかもしれませんが、不動産への投資や、その投資案件への融資については将来を少しだけ想定することも必要かもしれません。