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防衛白書を見ると中国の脅威が理解できる

日本政府が、2022年版防衛白書を了承しました。軍拡を進める中国の動向を「安全保障上の強い懸念」と改めて指摘したうえで、ウクライナに侵攻したロシアと軍事的な連携をさらに深化させる可能性がある点を「懸念を持って注視する必要がある」と強調したと報道されています。

日本を取り巻く軍事的な環境については、ロシアのウクライナ侵攻を見て、改めて注目している方も多いのではないでしょうか。

防衛白書をご覧になったことが無い方もいらっしゃるとは思いますが、今回は防衛白書について確認してみたいと思います。

 

兵力比較

まずは、全体像を見るのが一番です。

以下の図をご覧ください。

<わが国周辺の安全保障環境等>

<わが国周辺における主な兵力の状況(概数)>

(出所 令和4年版防衛白書)

日本周辺には、強大な軍事力を有する国家などが集中し、軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっています。中国の軍事力は脅威であり、将来的には米軍では抑止力となり得ない可能性が高いことがこのデータで分かるのではないでしょうか。

また、朝鮮半島においては、半世紀以上にわたり同一民族の分断が継続し、南北双方の兵力が対峙する状態が続いています。また、台湾をめぐる中国の問題のほか、中国による南シナ海をめぐる問題なども存在します。日本という観点では、北方領土や竹島の領土問題が依然として未解決のまま存在しています。

そして、これに加えて、近年では、領土や主権、経済権益などをめぐる、純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンの事態が国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向にあり、今後、さらに増加・拡大していく可能性があると防衛白書では指摘しています。グレーゾーンの事態は、明確な兆候のないまま、より重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらんでいると防衛白書は注意喚起しているのです。

以下の図のようにロシア・北朝鮮・中国等、軍事力の強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著ということになります。

(出所 令和4年版防衛白書)

 

主要国の国防費

では次に主要国の国防費について確認しておきましょう。やはり先立つものが無ければ防衛も出来ないということです。

<主要国の国防費(2021年度)>

(出所 令和4年版防衛白書)

このデータにあるように日本の国防費は対GDP比では他国に比べて大幅に低い水準にあります。2倍ぐらいとしても問題ないと考える識者は多いでしょう。

<主要6か国の国防費の推移(対数グラフ)>

(出所 令和4年版防衛白書)

また、このグラフで分かるように、日本の国防費は過去25年で1.8倍になりましたが、他国は3倍程度にはなっています。特に中国は10.7倍であり、米国の背中を追っています。

以下は中国が公表している国防予算の推移です。

<中国の公表国防予算の推移>

(出所 令和4年版防衛白書)

中国は、2022年度の国防予算を約1兆4,504.5億元(1元=17円で換算すると、日本円で約24兆6,577億円)と発表しました。これを前年度の当初予算額と比較すると約7.1%(約951億元)の伸びとなっています。中国の公表国防予算は、1989年度から2015年度までほぼ毎年二桁の伸び率を記録する速いペースで増加してきており、公表国防予算の名目上の規模は、1992年度から30年間で約39倍、2012年度から10年間で約2.2倍となっています。

<中国の主な海上・航空戦力>

(出所 令和4年版防衛白書)

そして、上記のグラフのように航空戦力の近代化状況などから、中国は、国土の防空能力の向上に加えて、より遠方での戦闘及び陸上・海上戦力の支援が可能な能力の向上を着実に進めていると考えられると防衛白書では説明しています。

 

所見

以上、防衛白書の一部を抜粋して見てきました。

中国は、過去30年以上にわたり、透明性を欠いたまま高い水準で国防費を増加させてきました。力を背景とした一方的な現状変更を試み、軍事活動を拡大しています。日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念で、こうした傾向は近年より一層強まっているとされています。

冷静に見ていくと、中国の軍事力は、既に米国でも対抗するのが難しくなってきています。米国も中国とだけ正面で衝突することにはならないでしょうから(例えば、ロシアが干渉してくる等)、日本は米国のみならず周辺国と協調して中国の脅威に当たっていく必要があります。

一度、防衛白書を冷静に眺めてみると、日本の置かれた環境がどのようなものか理解できるのではないでしょうか。