銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

日本銀行の給料水準に興味はありますか?

食料品、ガソリン価格や電気代が上昇し生活に物価高の影響が出てきている中で、円安に注目されることが多くなってきています。円安と言えば、もちろん日本銀行の金融政策について注目が集まるのは当然です。低金利政策を採用したままだから円安の進行が止まらない、といった論調をご覧になった方も多いでしょう。我々の日々の暮らしに物価が影響を与えるようになればなるほど、日本銀行への注目が高くなっていくように思います。

この日本銀行ですが、勤めている役職員はもちろん日本のエリート層です。ただ、普通の銀行と異なり一般利用者向けの店舗がある訳でもなく、また日本銀行の役職員の数もあまり多くないことから、日本銀行の役職員を直接知ったり、意識する機会は少ないのではないでしょうか。その役職員がどのような生活を送っているのかも一般的には知られていないでしょう。

日本銀行の役職員がどのような生活を行っているのか、それを推察するために日本銀行の役職員の給料水準はどの程度なのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。日本銀行は公的機関ですから、実は給料水準が公開されています。今回は、日本銀行の給料水準について見ていきたいと思います。

 

一般職員の給料水準

まずは、日本銀行の一般の職員がどの程度の給料を得ているかです。

日本銀行の職員給料については、日本銀行法に基づき「適切な政策運営及び業務サービスの維持・向上を図るために必要な人材を確保する上で十分競争力のあるものとし、そうした人材の、主要民間金融機関のほか主要民間企業等における処遇の実情をも勘案」して決定することになっています。そのため、毎年の職員の給料改訂に当たっては、主要民間金融機関・主要民間企業等の年収動向を実際に調査し、これらの平均的な給与改訂率を主たる判断材料として給与改訂を行っているとされています。調査先(比較対象先)は、採用等の人材確保の面で競合する業種の主要先であって、全国規模で業務を展開している先のうち、調査への継続的な協力の得られる先とされています。

単純に言えば、日本銀行は国家公務員と同様に位置付けでありながらも、主要金融機関、主要民間企業の年収動向を参考に、採用面で競争力を保つ形の給料水準となっていると言えます。

日本銀行の常勤職員の給料は2021年度支給では以下のようになっています(単位未満四捨五入、以下同様)。

  • 常勤職員:給料平均額815万円、人員数3,820名、平均年齢43.4歳、
  • うち、指定職相当職員:1,992万円、人員数40名、平均年齢54.8歳
  • うち、事務・技術職員:822万円、人員数3,449名、平均年齢43.1歳
  • うち、その他職種:607万円、人員数331名、平均年齢45.2名

この指定職担当職員は、いわゆる年棒制が適用されている職員です。

そして、事務・技術職員が、いわゆる総合職の正社員と考えれば良いでしょう。事務・技術職員のうち、年棒制が適用されている職員の平均給料は1,494万円であり、適用人員数は692名、平均年齢は48.4歳となっています。

更に細かく見ていくと、事務・技術職員における代表的職位では以下のように給料が公開されています。

  • 参事役級:平均1,829万円、人員数77名、平均年齢51.1歳
  • 企画役級:平均1,439万円、人員数615名、平均年齢48.0歳
  • 非管理職級:平均641万円、人員数2,757名、平均年齢41.8歳

参事役級と企画役級は日本銀行における管理職クラスと考えて良く(管理職は全体の20.1%・692名と発表されており、上記の参事役級と企画役級の合計が692名であるため)、日本銀行の管理職クラスはかなりの給料水準であることが分かります。

参事役は英語での表記はAssociate Director-General、企画役の英語表記はDirectorとなっています。参事役は一般企業の執行役員クラスと考えても遜色ないものと思われます。また企画役は一般企業の課長クラスと考えれば良いのではないでしょうか。

 

役員報酬

次に日本銀行の役員の報酬水準について確認しましょう。

マスコミで最も取り上げられるのは、もちろん総裁職です。それらの役員はどのような給料水準なのでしょうか。以下はいずれも2021年度の役員報酬であり、年度の途中で就任・退任した役員を含みません。

  • 総裁 3,501万円
  • 副総裁 2,767万円
  • 審議委員 2,653万円
  • 監事 1,569万円
  • 理事 2,138万円

日本銀行の職務執行を監督する政策委員会は、委員9人で組織し、審議委員6人、総裁及び副総裁2人がメンバーとなっています。審議委員は、日本銀行の「社外」取締役と考えて問題ないでしょう。

監事は、一般企業で言うところの監査役です。

理事は「総裁の定めるところにより、総裁及び副総裁を補佐して当銀行の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故があるときは総裁の職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときは総裁の職務を行う」(日本銀行組織規程)とされています。一般企業で言うところの「役員」と考えておけばズレはないでしょう。

これらのいわゆる日本銀行役員の給料水準は上記の通りです。国家公務員のキャリアトップである事務次官は概ね2,300~2,500万円前後の給料水準であり、国会議員も基本給と期末手当で2,200万円前後の給料水準です。また、直近のデータとしては、2022年7月4日に公開された国会議員の所得では、岸田文雄首相は2,837万円でした。このような事例と比較すると、日本銀行の総裁・副総裁は相応の水準の給料を得ていると言えます。

 

所見

日本銀行の給料水準は、一般的には恵まれていることが分かったのではないでしょうか。

しかし、日本の経済や景気に大きな影響を与える、責任のあるポジションのエリートが得る給料と考えると決して高いとは言えないのではないでしょうか。キャリアと呼ばれる国家公務員の流出が続いている背景には、過剰な労働時間ややりがいのない仕事に加え、給料水準が低い(仕事の量・質対比で)というのもあるでしょう。

今回、日本銀行の役職員における給料水準について確認してきました。

日本の財政が厳しい中、国家公務員や日本銀行職員の給料水準が改善されていく可能性は高くないと思われますが、相応の処遇を用意しておくことは必要なものと筆者は考えています。皆さんはどのようにお考えになるでしょうか。