コロナ禍は様々業種に影響を及ぼしています。
百貨店は不振となり、飲食店は全体で見ればかなり厳しい状況にあります。ホテルは閑古鳥が鳴いているような状況とされますし、旅行代理店は先行きが見通せない状況にあります。
このような中、不動産はどのような状況にあるのでしょうか。
今回は、コロナ禍における不動産に焦点を当ててみたいと思います。
不動産市況DIのデータから見る
不動産の「今」を知る参考となるものに、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と不動産総合研究所が3ヵ月毎に発表している不動産市況DI調査があります。
この調査は、直近で2020年7月に行われており、まさにコロナ禍における不動産取引の状況を把握することができるものです。
簡単に言えば、不動産の仲介事業者の声を集めた調査と考えれば良いでしょう。
では、以下でこのデータを見ていくことにしましょう。
土地価格・取引の動向
(出所 全宅連・不動産総合研究所「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書~第18回 不動産市況DI調査~」)
まず、不動産仲介現場の実感としては、土地の取引価格は横ばいと取られている事業者が65%程度いるということになります。
もちろん、全体の約1/4は下落していると回答していることも認識しておかねばなりませんが、コロナでは土地価格はまだ明らかな下落には至っていないと言えるのではないでしょうか。
但し、2020年7月の調査時点から見て3ヵ月後(2020年10月)に向けての業者予想では、土地価格がやや下落するが4割を占めていますので、先行きについては厳しい見方をしていることが分かります。
尚、特に悲観的な傾向が顕著に現れたのが近畿です。3ヵ月後に土地価格が下落すると回答した割合が6割強になっています。
近畿は土地取引の件数が足元では減少しているという割合が6割となっています。3ヵ月後の取引件数は7割弱が低下すると回答しており、近畿では土地取引件数の減少が、価格の下落見通しに影響している可能性があります。
尚、3ヵ月後の土地取引件数の減少という観点では、中部も7割弱が下落すると回答しており、近畿と中部では取引が弱含みということが分かります。
戸建住宅の価格・取引動向
次に戸建住宅について確認しましょう。
最初に中古、次に新築の順で回答を見ていきます。
(出所 全宅連・不動産総合研究所「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書~第18回 不動産市況DI調査~」)
中古の戸建価格動向では、関東で下落しているとの回答が比較的多くなっています。
取引動向では近畿が突出して悪化しています。
次に新築戸建住宅です。
(出所 全宅連・不動産総合研究所「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書~第18回 不動産市況DI調査~」)
新築の戸建住宅については、取引価格、件数とも中部が突出して悪化しています。
戸建住宅で見ると関東、中部、近畿と三大都市圏は総じて厳しい状況で不動産仲介業者は見ていることになります。
尚、新築戸建住宅では関東で取引件数が大幅に増加すると回答している層が存在します。これは、コロナ対応の在宅勤務増加に伴うものかもしれません。
マンションの価格・取引動向
次にマンションについても簡単に確認しましょう。
(出所 全宅連・不動産総合研究所「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書~第18回 不動産市況DI調査~」)
中古マンション価格は、関東と北海道・東北・甲信越が悪化してきていますが、3ヵ月後には中部と近畿でも悪化する見通しです。
特に、中部は先に述べた戸建住宅も含め不動産価格に対して悲観的な不動産仲介会社が増えてきているということでしょう。これには様々な要因が考えられますが、やはりコロナ影響を受けた自動車業界の業績悪化があることは容易に想像出来ます。
また、新築マンション価格については、やはり中部が悪い状況にあります。
一方で、取引件数という観点では、中国・四国の極端な悪化が目立ちます。しばらく中国・四国では新築マンションの販売が見送りとなるということかもしれません。
所見
コロナ禍においては不動産価格は下落し、取引件数も減少しているだろうと誰でも思い込みがちです。
しかし、今回の不動産市況調査を見る限りは「横ばい」が最も大きい項目であることが多いのです。すなわち、現状はコロナ前とあまり変化はないのです。
今回の調査以外の他のデータを見ても不動産価格は大幅な値崩れは起こしていません。
非常にニュースになりにくい、面白くない現実かもしれませんが、コロナショックが起きても不動産価格はあまり変化していません。
その上で、不動産仲介という最初に価格の変化に気付く領域において、事業者が将来の価格下落を予測していることには注意が必要です。
今後の不動産価格には注目していきたいと思います。