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コロナショック後の中古マンションマーケットに注意

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東日本不動産流通機構 (東日本レインズ)が2020年5月の不動産流通市場の動向について発表しています。

コロナショックで我々の生活に密接に関係する中古住宅はどのような影響を受けているのでしょうか。

今回は、首都圏の中古マンションおよび中古戸建住宅についての動向を確認していきましょう。

 

中古マンション価格

首都圏の2020年5月の中古マンションの成約物件は以下の通りとなっています。

  • 件数 1,692件、前年同月比▲38.5%
  • 単価 52.03万円/㎡、前年同月比+0.4%
  • 価格 3,296万円、前年同月比▲0.9%
  • 専有面積 63.35㎡、前年同月比▲1.3%
  • 築後年数 23.07年、前年同月 21.63年

以上のように成約件数は前年比▲38.5%と、新型コロナウイルスの感染拡大により2020年4月に続いて大幅減となりました。成約㎡単価は前年比+0.4%、成約価格は前年比▲0.9%と、双方ともほぼ横ばいです。専有面積は前年比で▲1.3%となっています。

成約件数はすべての地域が前年比で3割を超える大幅な減少となり、埼玉県は4ヶ月連続、その他の地域は3ヶ月連続で前年同月を下回りました。成約㎡単価は東京都区部、多摩、神奈川県他が前年比で上昇し、神奈川県他は6ヶ月ぶりに前年同月を上回っています。


中古戸建住宅

首都圈の2020年5月の中古戸建住宅の成約物件は以下の通りとなっています。

  • 件数 779件、前年同月比▲20.56%
  • 価格 2,668万円、前年同月比▲16.2%
  • 土地面積 150.71㎡、前年同月比+1.8%
  • 建物面積 104.32㎡、前年同月比▲1.1%
  • 築後年数 22.58年、前年同月 21.77年

以上のように成約件数は前年比▲20.5%と、中古マンションと同様に2020年4月に続いて大幅減となりました。成約価格は同▲16.2%の2ケタ下落となり、3ヶ月連続で前年同月を下回っています。土地面積は前年比で1.8%拡大し、建物面積は同1.1%縮小しました。

成約件数はすべての地域が前年比で減少し、多摩は8ヶ月連続で前年同月を下回りました。

成約価格は神奈川県他を除く各地域が前年比で下落し、埼玉県は5ヶ月連続、東京都区部は4ヶ月連続で前年同月を下回っています。

 

リーマンショック後の動向

次に、今回の中古マンション、中古戸建住宅の動向を、過去と比較してみましょう。

リーマンショック直後の2008年10〜12月の首都園における中古マンション成約件数は6,424件(前年同期比▲9.9%)で、4期ぶりに前年同期を下回っていました。すべての都県、地域別で前年同期を下回りました。

成約物件の1㎡当たり単価は首都圏平均で38.66万円(前年同期比▲3.7%、前期比▲1.9%)で、前年同期比、前期比ともに2期連続で下落しました。

成約物件価格は2,515万円(前年同期比▲3.1%、前期比▲2.7%)で、前期比では2期連続でマイナスとなりました。前年同期比では22期ぶりのマイナスです。成約物件を価格帯別に見ると、3,000万円以下の価格帯の比率が拡大(67.3%→69.3%)しているのが目立っていました。

成約物件の平均専有面積は 65.06㎡(前年同期比+0.6%、前期比▲0.8%)となり横ばい程度です。平均築年数は16.86年で、古い物件にシフトしていました。

次に、首都圏における2008年10〜12月の戸建住宅成約件数は3,040件(前年同期比▲8.2%)で、前年同期を下回っています。都県、地域別に見ると、東京都区部を除き前年同期を下回りました。新築・中古別では、中古戸建住宅が2,168 件(同▲8.4%)、新築戸建住宅は872 件(同▲7.7%)で、中古戸建住宅は3期ぶりのマイナス、新築は7期連続のマイナスとなりました。

成約物件価格は3,275万円(前年同期比▲6.2%、前期比▲2.1%)で、前期比では6期連続で下落しています。成約物件を価格帯別に見ると、3,000万円以下の比率は拡大(47.8%→50.1%)しました。

成約物件の土地面積は 133.38㎡(前年同期比▲2.3%、前期比▲1.8%)、建物面積は102.45㎡(同+0.1%、同+0.2%)で、土地面積は縮小、建物面積は拡大しています。

平均築年数 (中古)は17.97年で、新しい物件にシフトしていました。

 

まとめ

コロナショックでは、中古マンション、中古戸建住宅の双方とも売買の成約件数が減少しました。

前述のリーマンショック時点のデータよりも、今回のコロナショックの方が成約件数が大幅に減少しています。これは、やはりコロナでは外出自粛もあり、不動産会社の営業ができず、個人として不動産会社に相談もできなかったことが大きいと思われます。

一方で、リーマンショック時と異なる点は、中古マンションの成約価格が、リーマンショック時が下落していたのに対して、今回のコロナショックでは中古マンションの成約価格が横ばいとなっていることです。

これは、コロナショックが人の動きを制限したため、 売買自体が成立せず価格の下落が表面化しなかった可能性もありますし、単に不動産価格の下落が起きていないという解釈も成り立ちます。

一方で、中古戸建については、コロナショックでは大幅な価格低下となりました。リーマンショック時にも成約価格は▲6.2%となっていましたが、今回のコロナショックでは▲16.2%となっています。かなりのインパクトがあります。

リーマンショック時の動きをも加味すると、今後は中古マンション価格の下落が容易に想定されます。そして、中古戸建住宅の成約価格の下落率は、前述の通り、足元ではリーマンショック時を上回ります。

よって、中古の住宅については、弱含みで推移していく可能性が高いと言えるのではないでしょうか。

そして、そもそも成約件数の低下により取引自体が成立しない可能性も視野に入れるべきでしょう。

将来のことは分かりませんが、売りたい時に売れないとなると、住宅価格は更に下がる傾向にあります。中古住宅の売買を考えている個人は、この事実について頭に入れておいても良いのではないでしょうか。