銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

銀行から投資信託・外貨建保険などの運用商品を買ってはいけない

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金融庁が「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」を発表しました。

金融庁は、日本国民が、金融事業者の「顧客本位の取組み」の状況を比較でき、より自分にあった金融事業者を選択し、自身の資産形成に取り組めるような環境の構築を目的に、金融機関へのモニタリングを行い、それを公表しています。

今回は、この金融庁のモニタリング結果について確認すると共に、銀行から投資信託や外貨建保険のような運用商品を買っても良いのかについて考察してみましょう。

(当該ブログは「銀行員のための教科書」を名乗っておりますが、今回の記事は、サービスを受ける側の個人の立場から執筆しております)

 

金融機関の販売体制の実情

金融庁のモニタリングは内容が分かりづらいところはあるかもれませんが、基本的に金融機関の運用商品販売体制に対して辛辣な見解を出しています。

まず、販売会社による顧客本位の業務運営の取組みの実態把握について見ていきましょう。 

<(金融機関の)提案プロセス>

  • 長期分散投資の提案力を充実させるためのベースとなる、分散投資モデルポートフォリオを販売会社が保有していないため、その提案内容は、販売員の技量や感覚に委ねられている
  • 顧客資産全体への提案ではなく、「遺す資産」に色分けされた一部資金に対して、外貨建保険などの個別商品を販売するケースが多く見られる。

<(金融機関内の)業績評価>

  • 収益だけではなく、預り資産残高や顧客基盤に関する項目のウェイトを拡大する傾向が定着。 
  • 投資信託においては、個別商品の手数料率に関係なく、一律の収益評価を行う動きも定着。 
  • 一方で、商品カテゴリー間では、(例えば外貨建保険など)収益評価が高いカテゴリーが存在し、それらの商品への取引偏重傾向が見られる。

<(金融機関の)人材育成>

  • ライフプラン設計サポートのコンサルティングを充実させる人材育成を図る販売会社が見られる一方、個々の商品売りを脱する人材育成ができていない販売会社もあり、販売会社・販売員間のバラツキが拡大。 
  • 中長期的な販売員のキャリアプランを明確化することによる販売員の育成、販売員間のスキル格差や、提案水準のバラツキ解消への取組みが重要。

(出所 金融庁/投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について)

金融庁が指摘しているのは、以下がポイント(本音)でしょう。

  • 運用提案が個々の販売員の技量に委ねられている(組織的なものではなく、大手だから安心ということもない)
  • 安全に運用すべき資金なのに、リスクの高い商品を勧めている
  • 銀行員個人にとって収益評価の高い商品を勧める傾向にある
  • 個々の運用商品売りを脱せず、顧客のライフプラン全体にとって良い提案を行えるような人材育成が出来ていない金融機関がある 

このようなモニタリング結果は、当然に金融庁のバイアスがかかったものであるとは思いますが、それでも、皆さんは銀行から運用商品を買いたいと思うでしょうか。

 

投資商品の販売動向 

投資信託の保有顧客数は、以下の図表を見ると、ネット系証券会社においては大幅に増加していることが分かります。ネット系証券会社におけるリスク性金融商品の保有割合を年齢別に見ると、30代~50代の資産形成層が中心である一方、銀行及び大手証券等においては、60代以上の高齢者層に偏っていることがわかります。

従来型の対面手法を用いないネット系証券会社が資産形成層の運用ニーズを多く取り込んでいるという事実を踏まえれば、銀行や大手証券等においても、その増加要因について顧客の意識も含めて分析しつつ、デジタライゼーションに取組み、販売チャネルを強化し、資産形成層のニーズを掘り起こしていくことが、経営上重要になることが想定されると金融庁は指摘しています。

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この図表だけ見れば分かる通り、銀行の主要顧客層は60代以上なのです。この世代が存命なうちは良いかもしれませんが、将来的には相続が発生し、その際には被相続人は今まで同様にネット系証券会社での取引へ移していくでしょう。

今のままだと、少なくとも投資信託という切り口では、銀行は高齢者のためのサービス企業でしかありません。そして、じり貧です。

 

投資信託の販売手数料率

投資信託の平均販売手数料率を見ると、銀行は、ここ数年低下傾向を継続する一方、大手証券等では、顧客への丁寧な説明が必要な、複雑な商品を多く販売している等の要因もあり、緩やかな上昇傾向にあるとされています。

銀行の販売チャネル別の販売手数料率については、代理店販売(保険)や紹介販売(投資信託及び債券)の手数料率が、自行販売(投資信託)よりも高い傾向にあります。顧客にとっては留意が必要かもしれません。

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投資信託の販売手数料は平均で銀行が1.5%前後となっています。大手証券は2.5%程度です。

ゼロ金利政策が続いている中、1.5%の運用利回りを確保するのは簡単ではありません。販売手数料は投資の成功率を引き下げるのです。

そして、販売手数料については、地銀だと代理店販売が、3.7%の手数料率となっています。この水準の利回りを出すのは本当に簡単ではありません。
 

所見

以上のデータは筆者が金融庁の調査から抜粋したものです。

これらのデータをご覧になって皆さんはどのように考えるでしょうか。

少なくとも筆者は銀行から投資信託等の運用商品を購入しようとは思いません。

「立派な銀行」から買った投資信託が、運用成績まで良いという保証はないのです。

一方で、銀行側も現状のままだと将来的には高齢者が存在しなくなります。未来の新たな高齢者は、ネット系証券を使いこなす、金融リテラシー(知識)のある世代です。

今のままの「高齢者のための、対面方式による銀行」がそのまま残れると思うのは、甘すぎるでしょう。