銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

金融庁の次のターゲットは外貨建一時払い保険か

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金融庁が投資信託等の販売会社における「顧客本位の業務運営」の足元の取組状況について公表しました。

この公表では、金融庁の問題意識、取り組みを求めている事項が記載されています。

今回は、銀行のリテール(個人)営業において将来的に影響する「顧客本位の業務運営」の今後の動向について見ていくことにしましょう。

 

「顧客本位の業務運営」の取組状況公表の背景

まず、「顧客本位の業務運営」の足元の取組状況をなぜ金融庁が公表しているのかについて確認しておきましょう。

金融庁では、2017 年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」という。)を策定し、原則を採択し、取組方針を策定・公表した金融事業者のリストを金融庁のホームページに公表するほか、顧客本位の業務運営を客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)を公表するよう働きかけを行ってきた。また、KPI について、それぞれの販売方針等を踏まえ、その目指す販売等の方向が相当程度端的に示されている好事例を公表し、各金融事業者の KPI の改善を促してきた。
さらに、本年6月には、「見える化」を更に促進するため、各金融事業者による「自主的な KPI」とは別に、長期的にリスクや手数料等に見合ったリターンがどの程度生じているかを示す、比較可能な共通 KPI と考えられる3つの指標(①運用損益別顧客比率、②投資信託預り残高上位 20 銘柄のコスト・リターン、③投資信託預り残高上位 20 銘柄のリスク・リターン)を公表した。

(出所 投資信託等の販売会社における顧客本位の業務運営のモニタリング結果について平成 30 年9月 26 日)

このように国民の安定的な資産形成を図るためには、金融商品の販売、助言、商品開発、資産管理、運用等を行う全ての金融機関等が、インベストメント・チェーンにおけるそれぞれの役割を認識し、顧客本位の業務運営に努めることが重要との認識の下、金融庁は取組状況を公表しているのです。

 

公表内容

金融庁は、投資信託等の販売会社における「顧客本位の業務運営」の取組状況の公表についてと題して、以下リンク先で、資料を公表しています。

投資信託等の販売会社における「顧客本位の業務運営」の取組状況の公表について

今回は、この資料から筆者がポイントとなると考える項目を抜粋します。

 

【課題への取組状況】

  • 顧客が、販売員の投資商品販売に関する説明に納得できなかった場合、手数料を返金するという「説明責任保証」サービスを提供 【海外事例】
  • 「顧客本位の業務運営」を実践し、顧客より高い評価を得た販売員を選定・表彰し、対外的に名前を公表
    →「顧客本位の業務運営」に努めれば、高く評価されることを販売員に意識付けるとともに、表彰者による販売員の指導・育成を期待
  • パッケージ化された金融商品と個別の金融商品を購入する場合における重要事項に関する情報を一覧化した資料を用いて提供
    各販売員のスキルに委ねる運営から、同一資料を使った運営により、サービスの均質化を図る
  • 顧客の預り資産に関し、商品横断的な運用損益状況を、より頻度を高めて提供
    →特に、解約手数料の高さに関する苦情が多い貯蓄性保険について、販売代理店からも、解約返戻金の見込み額等を定期的に顧客に提供

この項目では、金融庁が実践すべきと考えている事項を示していると考えて良いでしょう。

 

【販売状況】

  • 投資信託の販売額は、足元、市場環境が不透明となる中、大幅に減少。(2016年度を100とした場合、2018年上の販売額は主要行82、地方銀行86) 
  • 投資信託の平均保有期間は、主要行等・地域銀行・大手証券ともに、18年度上期に長期化。特に、主要行等の伸びが高い。預り残高が横這いで推移する一方、販売額が大幅に減少しており、乗換販売が減少している可能性。(投信平均保有期間は主要行で2014年度2.3年→2018年度3.5年まで長期化)
  • ファンドラップの預り残高及び保有顧客数は、主要行等・地域銀行ともに、増加傾向。特に、地域銀行の伸びが顕著。
    ファンドラップの販売額は、足元、主要行等において若干伸びが鈍化しているが、地域銀行は継続して伸長。
  • 一時払い保険(全体)は、主要行等、地域銀行において、残高・販売額ともに、近年、増加傾向。
  • 外貨建一時払い保険は、主要行等・地域銀行において、残高・販売額ともに、近年、大幅に増加。
  • 足元で解約された外貨建保険は、定額・変額ともに全体の1%程度(件数ベース)に留まる中、定額の半分、変額の7割が運用損を計上。
  • 商品カテゴリー別の手数料額の比率を見ると、主要行等・地域銀行ともに、足元で、投資信託が減少する一方、保険が増加。特に、地域銀行で顕著。
  • リスク性商品の月次販売額は、足元においても、四半期末ごとに伸びが見られ、期末収益目標を意識したプッシュ型営業が、引き続き行われている可能性。

以上の通り、金融庁の目線は、投資信託から外貨建一時払い保険に移って来ていることが分かります。

今までは、毎月分配型の投資信託や、投資信託の回転売買が問題とされていました。しかし、今回は保険に焦点があてられています。

今後、銀行のリテール営業の場では、保険に対する風当たりが厳しくなる可能性があります。

金融庁の次の一手には注目が必要です。