銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

地元の経済規模、景気を簡単に確認してみる~都道府県別の預金と貸出金の残高~

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となりの県の出身者と「どちらの地域の方が上か」と張り合ったことがある方はいらっしゃるでしょうか。(筆者は千葉と埼玉の出身者の「戦い」を比較的多く見てきました)

そして、自分の地元が一番だとは思うものの、他地域と比べると本当はどのような立ち位置にあるだろうと気になることもあるのではないでしょうか。

地域間の比較という観点では、ご自分の住んでいる(もしくは地元の)都道府県が、日本全国で比較した場合に、どのような経済力を持つのかについて考えみたことがある人も多いかもしれません。

地域ごとのGDP比較という考え方もあるでしょうが、今回は単純に地域間の預金と貸出金の額で比較をしてみたいと思います。結構、分かりやすい指標になるのではないかと思います。

 

地方間の比較

以下のデータは全国銀行協会(全銀協)が集計している2020年3月末時点のものです。

全銀協に加盟している都市銀行、地方銀行、信託銀行等の合算データとなり、各地域の銀行協会で集計した数字となります。

(単位億円) 預金 貸出金 預貸率
金額 全国対比 金額 全国対比
北海道 170,142 2.1% 108,179 2.1% 64%
東北計 353,508 4.5% 210,591 4.1% 60%
関東計 4,033,563 50.8% 2,831,013 55.0% 70%
北陸計 237,718 3.0% 135,574 2.6% 57%
中部計 824,258 10.4% 436,018 8.5% 53%
近畿計 1,226,618 15.5% 653,861 12.7% 53%
中国計 332,260 4.2% 221,380 4.3% 67%
四国計 200,997 2.5% 126,909 2.5% 63%
九州計(沖縄含む) 557,253 7.0% 422,707 8.2% 76%
合計 7,936,317 100.0% 5,146,142 100.0%

65%

(出所 全銀協/各地銀行協会社員銀行主要勘定から筆者が作成)

このように地方で区切ると日本の預金も貸出金も関東に集中していることが分かります。

日本では、銀行だけだと約800兆円の預金があり、そのうち400兆円が東京で預けられています。そして280兆円が東京で貸出されているのです。

預貸率(集めた預金が、どの程度貸出に回ったかを示す指標)も関東は高くなっています。 

預貸率が70%を超えているのは九州と関東だけです。

資金ニーズがあるということは、お金がそれだけ動いているということです。他地域よりも相対的に景気が良いということになるでしょう。

 

都道府県別の預金・貸出金

大きな地域での比較について上記で確認しましたが、以下では都道府県別で確認しておきます。

自分の地元が日本でどの程度の割合を占めているのか、ライバルの県に勝っているか、預金が貸出にどの程度回っているのか、そんなことを考えながら以下のデータを眺めてみると面白いかもしれません。 

(単位億円) 預金 貸出金 預貸率
金額 全国対比 金額 全国対比
北海道 170,142 2.1% 108,179 2.1% 64%
うち札幌市 103,287 1.3% 72,034 1.4% 70%
青森 43,021 0.5% 26,993 0.5% 63%
岩手 46,906 0.6% 24,403 0.5% 52%
宮城 106,597 1.3% 69,479 1.4% 65%
秋田 37,714 0.5% 20,541 0.4% 54%
山形 42,145 0.5% 24,173 0.5% 57%
福島 77,125 1.0% 44,912 0.9% 58%
東北計 353,508 4.5% 210,591 4.1% 60%
茨城 120,339 1.5% 69,251 1.3% 58%
栃木 82,105 1.0% 48,507 0.9% 59%
群馬 80,702 1.0% 42,860 0.8% 53%
埼玉 315,884 4.0% 164,100 3.2% 52%
千葉 306,983 3.9% 148,349 2.9% 48%
東京 2,692,194 33.9% 2,164,693 42.1% 80%
神奈川 435,356 5.5% 193,253 3.8% 44%
うち横浜市 215,080 2.7% 96,181 1.9% 45%
関東計 4,033,563 50.8% 2,831,013 55.0% 70%
新潟 92,597 1.2% 51,680 1.0% 56%
富山 57,322 0.7% 34,125 0.7% 60%
石川 53,294 0.7% 30,845 0.6% 58%
福井 34,505 0.4% 18,924 0.4% 55%
北陸計 237,718 3.0% 135,574 2.6% 57%
山梨 30,215 0.4% 12,013 0.2% 40%
長野 81,558 1.0% 36,218 0.7% 44%
静岡 148,362 1.9% 99,820 1.9% 67%
岐阜 79,998 1.0% 45,420 0.9% 57%
愛知 401,556 5.1% 205,978 4.0% 51%
うち名古屋市 261,422 3.3% 145,795 2.8% 56%
三重 82,569 1.0% 36,479 0.7% 44%
中部計 824,258 10.4% 436,018 8.5% 53%
滋賀 59,555 0.8% 36,195 0.7% 61%
京都 134,434 1.7% 64,491 1.3% 48%
うち京都市 106,510 1.3% 52,649 1.0% 49%
大阪 684,091 8.6% 397,879 7.7% 58%
兵庫 239,152 3.0% 110,744 2.2% 46%
うち神戸市 97,590 1.2% 48,997 1.0% 50%
奈良 68,364 0.9% 27,676 0.5% 40%
和歌山 41,022 0.5% 16,876 0.3% 41%
近畿計 1,226,618 15.5% 653,861 12.7% 53%
鳥取 23,791 0.3% 13,823 0.3% 58%
島根 25,242 0.3% 13,303 0.3% 53%
岡山 84,454 1.1% 55,699 1.1% 66%
広島 133,872 1.7% 102,414 2.0% 77%
山口 64,901 0.8% 36,141 0.7% 56%
中国計 332,260 4.2% 221,380 4.3% 67%
徳島 46,940 0.6% 21,080 0.4% 45%
香川 54,701 0.7% 27,942 0.5% 51%
愛媛 72,185 0.9% 62,137 1.2% 86%
高知 27,171 0.3% 15,750 0.3% 58%
四国計 200,997 2.5% 126,909 2.5% 63%
福岡 242,388 3.1% 197,080 3.8% 81%
うち福岡市 112,921 1.4% 121,038 2.4% 107%
佐賀 26,495 0.3% 13,327 0.3% 50%
長崎 50,330 0.6% 34,008 0.7% 68%
熊本 65,550 0.8% 47,532 0.9% 73%
大分 39,609 0.5% 24,385 0.5% 62%
宮崎 33,756 0.4% 26,733 0.5% 79%
鹿児島 48,767 0.6% 38,877 0.8% 80%
沖縄 50,358 0.6% 40,765 0.8% 81%
九州計(沖縄含む) 557,253 7.0% 422,707 8.2% 76%
合計 7,936,317 100.0% 5,146,142 100.0% 65%

(出所 全銀協/各地銀行協会社員銀行主要勘定から筆者が作成)

日本で唯一預貸率が100%を超えていると思われるのは福岡市です。

これからどのようになるかは分かりませんが、インバウンド需要に対応した投資等、福岡市は投資案件の多い都市です。

やはり預貸率が低い都道府県は、景気が思わしくない地域に近いでしょう。もちろん、愛知(というか名古屋)や京都のように無借金企業が多い地域特性もありますので、一概には言えませんが、それでもお金が必要とされている地域は、景気が良い傾向にはあります。

 

まとめ

今回ご紹介したデータは、あくまで銀行の預金と貸出金、そして預貸率だけです。

付加価値の源泉が、固定資産ではなく無形資産に移っていく可能性が高いこれからの時代には、借入をする企業が多い地域が景気が良いとは限らないかもしれません。

しかし、現時点においては、まだまだ簡易に景気動向を判断する指標としては、なかなか良いのではないかと筆者は考えています。

皆さんの地元は、どうでしたでしょうか。

予想通りでしたか。それとも予想とは違っていたでしょうか。