全国地方銀行協会(第一地銀協)が第一地銀の2020年3月期決算を発表しました。
本業不審にあえぐとされる地銀の決算はどのようなものだったのでしょうか。
今回は第一地銀の決算内容を確認しましょう。
第一地銀の業績
第一地銀の2020年3月期業績は以下の通りです。
(出所 全国地銀協Webサイト)
- コア業務純益は、資金利益の減少を主因に、前年同期比▲3.3%(▲336億円)の9,962億円。
- 業務純益は、コア業務純益が減少したものの、国債等債券関係損益が益超に転じたことから、+0.2%(+21億円)の9,761億円。
- 経常利益は、業務純益は若干増加したものの、株式等関係損益の減少等により、▲7.1%(▲658億円)の8,610億円。
- 当期純利益は、▲4.8%(▲296億円)の5,926億円。
ここでポイントになるのは、貸出金利息は+0.8%となっていることです。
地銀は低金利に苦しんでいるという報道がなされていますが、貸出金利息は若干なりとも増加しています。
(出所 全国地銀協Webサイト)
次に、銀行の本業である貸出と預金の利鞘です。
貸出金自体の利回りは▲0.05%となっており、貸出金と預金等のコストとの差である預貸金利鞘は▲0.03%の0.21%まで低下しています。
(出所 全国地銀協Webサイト)
ここまで利鞘が下がると経費を圧縮しなければ利益を確保できません。
しかし、上の図表のように、人件費は横這いです。そして、システム経費や店舗の賃借料等の物件費は増加しています。
第一地銀はコスト削減が出来ていないと言えるでしょう。
(出所 全国地銀協Webサイト)
前述の通り貸出金利息は+0.8%でした。
一方で貸出金の残高自体は+4.3%となっています。
すなわち、貸出金の金利水準自体が減少しているのです。
貸出金は増加しても、収入である利息はあまり増加していないのです。
(出所 全国地銀協Webサイト)
コスト削減が叫ばれているはずの第一地銀ですが、人員数はほとんど変わっていません。
また、店舗数は出張所を含みますが、むしろ増加しています。
(出所 全国地銀協Webサイト)
本業の利益である業務純益は、この10年で▲3割となっています。
(出所 全国地銀協Webサイト)
貸出金残高はこの10年で約4割増加しているにも関わらず、貸出金利息は▲2割です。貸出金利回の低下が著しいということです。
(出所 全国地銀協Webサイト)
不良債権処理額は2018年度から増加に転じています。
但し、2018年度はスルガ銀行のシェアハウス問題があり、不良債権処理損失から償却債権取り立て益を除いた実質与信費用は1,363億円に達していましたので、2018年度はスルガ銀行という要因を除けば、2019年度は不良債権処理額が大幅に増加したことになります。
しかし、リーマンショック後の2010年度に比べると不良債権処理額は半分に留まります。
所見
第一地銀の決算のポイントについて見てきました。
2020年3月期決算だけを確認すると、第一地銀の決算は、報道されている印象ほどには悪くないと感じるのではないでしょうか。
しかし、第一地銀の収益は、貸出金利回の低下により蝕まれています。
貸出残高だけは増えていますので、企業の経営環境が悪くなると、不良債権がリーマンショック時以上に増加する可能性があります。
収益力は低下したにもかかわらず、抱えるリスクだけは増加したのです。
これが第一地銀の現状です。
現時点での取り得る選択肢は、やはりコスト削減でしょう。
今後、第一地銀がどのような具体策を取っていくのか、注目したいと思います。