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大塚家具の2020年4月期決算について

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大塚家具の2020年4月決算が発表されました。

今回は2019年1月~2020年4月までの変則決算となっています。

大塚家具はヤマダ電機の傘下となり生き残りを目指していますが、今回の決算はどのような結果となったのでしょうか。

今回は大塚家具の2020年4月期決算について確認していきましょう。

 

報道内容

大塚家具の2020年4月期決算について、まずは概要を押さえておきましょう。以下の日経新聞の記事が分かりやすいでしょう。

大塚家具、最終赤字77億円 20年4月期、新型コロナで客数減 
2020/6/19 日経新聞

大塚家具が19日発表した2020年4月期の単独決算は、最終損益が77億円の赤字だった。最終赤字は4期連続で赤字幅は過去最大。前期は16カ月の変則決算のため単純比較はできないが、前の期は32億円の赤字だった。新型コロナウイルスを受けた臨時休業や外出自粛で需要期の3~4月に客数が落ち込んだ。店舗改修のための投資などに伴う減損損失も響いた。
売上高は348億円と、12カ月決算だった前の期実績(373億円)を下回った。営業損益は76億円の赤字(前の期は51億円の赤字)。営業赤字と営業キャッシュフロー(CF)のマイナスが4期続いた。22年4月期までの猶予期間内に営業黒字または営業CFのプラスなどを達成できないとジャスダック市場の上場廃止基準に抵触する。
店舗閉鎖や都市部での競争激化を受け主力の家具販売が不振だった。ヤマダ電機の子会社となり家具などの評価基準を見直し、約18億円の棚卸し資産評価損も計上した。
21年4月期の業績見通しは新型コロナの収束のメドが立たないため未定とした。在宅需要を取り込み、6月前半の受注額は前年を上回っているという。大塚久美子社長は同日、日本経済新聞の取材に対し、「ヤマダ電機の家電の取り扱いを本格的に始め今期の黒字化を目指す」と話した。

(出所 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60573790Z10C20A6DTA000/

大塚家具の決算は、16ヵ月決算となっているのに前年度の12ヵ月決算の売上高を下回るという苦戦ぶりです。最終損益の赤字幅は過去最大です。

ヤマダ電機の傘下に入ったとはいえ、大塚家具の業績は厳しい状況が続いていることが分かります。

では、もう少し詳しく業績を見ていくことにしましょう。

 

大塚家具の決算

大塚家具は、いまだに業績の底打ちが見えません。

それを最も端的に表しているのは売上高でしょう。

  • 2020年4月期売上高(16ヵ月):34,855百万円
  • 2020年4月期平均月商:2,178百万円(=34,855÷16)・・・A
  • 2018年12月期売上高(12か月):37,388百万円 
  • 2018年12月期平均月商:3,116百万円(=37,388÷12)・・・B
  • (A-B)÷B×100=▲30%

大塚家具は、2020年4月期決算とその前年度決算を、平均月商ベースで比べると、▲30%となっていることが分かります。 

コロナの影響があったとはいえ▲30%は尋常ではありません。

営業施策が有効ではなく、経営危機は一切収まっていないと言えます。

販管費が19億円増加したことから、営業利益は▲76億円となっています。

但し、販管費は月平均15億円弱まで低下しており、2018年12月期の月平均18億円よりは改善しています。

棚卸資産評価損は▲18億円計上しており、期末の棚卸資産が78億円と前期比▲14億円弱減少していますが、評価損を加味すると在庫は増えているという見方もできます。

ひと月当たりの営業損益の赤字額では、2020年4月期が▲476百万円であるのに対して、2018年12月期が▲431百万円です。

コロナの影響、棚卸資産評価損計上というような事象はあったとしても、採算が改善していないのが現状ではあります。

但し、筆者の私見では、想定していたより損益は悪くなかったと思います。

 

資金繰り

大塚家具は2020年4月末時点で36億円の現預金を保有しています。

土地は1億円、投資有価証券はゼロとなり、資金繰りのために売却できるものは、ほぼ無くなりました。

キャッシュフロー(キャッシュの出入り)は厳しい状況が続いています。

本業から得られたキャッシュは▲70億円(営業CFは赤字)となり、キャッシュは流出しています。

この営業CFの赤字を投資CFの黒字14億円(過去の投資の回収で、2020年4月期は主に有価証券の売却です)で埋めきれていません。

この資金繰りの危機を救ったのがヤマダ電機です。2020年4月期にはヤマダ電機からの増資も含め70億円の株式発行収入がありました。

すなわち、資金繰り面では本業での現金流出を株式の増資による収入で補ったということになります。

もちろん、増資がなければ資金繰り破綻していたでしょう(銀行は大塚家具に対して融資は難しいでしょう)。

 

今後の大塚家具

大塚家具はヤマダ電機の傘下として、家電と家具の融合した販売戦略を模索していくでしょう。

With コロナの時代には、在宅勤務が多くなり、住環境が見直される可能性はあります。その場合は、特に自宅での仕事用の机、椅子等のニーズが顕在化するでしょう。

もしかしたら、ヤマダ電機・大塚家具連合は面白い立ち位置にいるかもしれません。

一方で、筆者は大塚家具の再生は簡単ではないと思います。大塚家具のイメージは悪化しており、販売力・商品力も低下しています。

そして、コロナ後で所得に悪影響を受けた人は数知れません(残業代の減少もその一例です)。日本全体で購買力は落ちていると思われます。

そのような中で、大塚家具の何とも言えない価格帯の家具を購入するでしょうか。

また、家電と家具をそもそも一緒に買うでしょうか。

クロスセルでの成功例は、TSUTAYA(レンタルビデオ+本)、ヴィレッジヴァンガードぐらいなのではないでしょうか(私見が混じり過ぎているかもしれませんが)。

ヤマダ電機自身も、ヤマダ・エスバイエルホームとの相乗効果はまだまだ上がっていないものと思います。

今後、大塚家具は早期に再度の資金繰り危機に陥り、とりあえずはヤマダ電機の100%子会社(上場廃止)となるのではないかと筆者は想定しています。

その後、新たな経営トップの下で再生を目指すことになるでしょう。

尚、レオパレス21をヤマダ電機が支援するのではないかと報道されています。ヤマダ電機との相乗効果という観点では、レオパレスの方が大塚家具よりは良いように思います。