大塚家具が2019年1~3月の決算を発表しました。
大塚家具は中国企業からの出資や、社長と父親の和解が報道される等、話題には事欠きませんが、業績は落ち着いているのでしょうか。
今回は大塚家具の業績について確認しましょう。
報道内容
大塚家具の業績については新聞記事が概要を掴むのに良いでしょう。以下、日経新聞記事を引用します。
大塚家具の19年1~3月期、最終赤字14億円
2019/05/10 日経新聞経営再建中の大塚家具が10日発表した2019年1~3月期の単独決算は、最終損益が14億円の赤字(前年同期は1億円の黒字)だった。東京都内の旗艦店を中心に大型店の販売が振るわなかった。広告を抑制したため来客数が減った。
売上高は25%減の68億円だった。昨年秋に実施した「在庫一掃セール」の反動も出た。同期間の既存店売上高は減少した。営業損益は14億円の赤字と前年同期(14億円の赤字)並みにとどまった。店舗を再編して賃借料を減らしたほか、広告費や人件費も抑えた。
同社は従来の12月期から4月期に決算期を変更した。今期は19年1月から20年4月まで16カ月間の変則決算。20年4月期の単独業績予想は「新たな計画に基づき精査中のため未定」とした。
事業継続リスクのある企業として投資家に注意を促す「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」を引き続き決算短信に掲載した。
大塚家具の業績は、売上高が前年同期比▲25%の大幅減収、営業損益は前年同期並みの赤字、最終損益は赤字転落です。
昨年秋に実施した在庫一掃セール後の反動減の影響も出ており、そもそも店舗が21店舗から14店舗まで減少しています。そのため減収となることは想定されていたことと言えるかもしれません。
大塚家具決算における問題点
大塚家具は2018年1~3月時点では21店あった店舗を14店まで削減しました。この対応によりかなりコスト削減は進んだと想定されます。
また、既存店売上高は1月=79.2%、2月=78.7%、3月=84.1%、4月=86.7%と上向きになってきています。
そして、大塚家具は資本増強策を発表し、2019年1~3月間ではこのうち26億円の資金調達が完了しています。
今までの様々な対策により大塚家具の業績は回復したと言えるのでしょうか。
筆者は大塚家具の経営危機はまだ全く終わっていないと認識しています。
まず、直近で増資で得たのは26億円のはずです。一方で、現金は2018年12月末と2019年3月末を比べると32億円→39億円と+7億円となっています。すなわち26億円-7億円=19億円が消えたことになります。
売掛金が+5億円となっていますので、この5億円は問題ありません。しかし、残りの14億円はどうなったのでしょうか。
これが、基本的には費用として外部流出したものと想定されます。ちょうど最終赤字額は▲14億円です。
大塚家具の経営危機は、会社の費用を本業の商品販売にかかる利益で賄えず、今まで蓄積した現預金や他の資産売却で乗り切ってきたものの、その資産も尽きてしまったことにありました。
そのため、大塚家具は、第三者からの資金を得て、資金繰り難を乗り切ると共に、EC販売強化や中国市場への進出を図っていく等の新たな売り上げを作りに行くことを目指しています。
大型店を中心に来店客数が減少し、売上の減少がコスト削減のペースを上回る状況となっております。営業損失を解消し、営業キャッシュ・フローをプラスにするためには売上高の減少を食い止めることが必須であり、成長分野であるEC販売の強化及びそれに伴う物流施設及び既存店舗の改装(リニューアル)への投資、中国向けの卸売や中国の顧客層を中心としたコントラクト事業などの新たな販路拡大並びにブランドイメージの再構築及び従来水準(2014 年以前で年間約 35 億円規模)のマーケティング及びプロモーションの展開を図るための資金の調達が急務
(出所:2019年2月15日付当社発表資料/第三者割当による新株式及び新株予約権の発行、業務・資本提携契約の締結並びに主要株主、主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ)
しかし、この資金流出のペースでは、前向きな投資が出来ない可能性があります。
現状は1ヵ月に5億円弱(=3ヵ月で14億円程度)の資金流出となっています。大塚家具の現預金は39億円(2019年3月末)です。そして、4月に8億円を追加で資金調達しています。
受取手形・売掛金が23億円ありますが、この受取手形・売掛金は経常的に営業していれば発生するものです(大塚家具が目指している法人向けの売上に注力していくならば、むしろ更に増加するでしょう)。よって、受取手形・売掛金は簡単に回収できません。
よって、 現在の現預金39億円と追加調達額8億円の合計47億円からすると、現金流出が止まらなければ、10ヵ月程度で資金がショートしてしまうことになります。
すなわち、大塚家具は増資で資金調達を行い経営危機は一服しましたが、現金流出が続いている状況に変わりはありません。
大塚家具は、増資によって資金繰り破綻の時期を後ズレさせることには成功しました。しかし、商品が売れず(売上高が改善しない)現金の流出が続く、という根本的な問題は解決していません。
大塚家具の経営危機は全く終わっていないのです。