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大塚家具の2020年4月期3Q決算は、資金繰り不安を解消できず

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業績不振の大塚家具が2020年4月期3Q決算(2019年1〜9月)を発表しました。

赤字が継続しており、黒字化の目処は立っていません。

今回は大塚家具の直近の決算におけるポイントについては簡単に確認しましょう。

 

決算の概要

大塚家具の2019年1~9月期決算は減収、赤字幅は改善となりました。概要は東京商工リサーチの記事が分かりやすいと思いますので以下引用します。

大塚家具 コスト削減で総利益率は改善も5期連続減収、6期連続の赤字と不振続く
2019年11月14日 東京商工リサーチ

 経営不振が長期化している(株)大塚家具(TSR企業コード:291542085、江東区、大塚久美子社長、JASDAQ)が11月14日、2019年1~9月期決算を発表した。
 売上高は210億300万円(前年同期比23.2%減)、営業利益は29億1,800万円の赤字(同48億6,300万円の赤字)だった。売上は2015年同期から5年連続の減収、営業利益は2014年同期から6年連続の赤字。
 消費増税前の9月、駆け込み需要で昨年11月以来、10カ月ぶりに既存店売上が前年より14.1%増となった。しかし、今年5月の仙台ショールーム閉鎖など直営店3店舗、提携店1店舗を閉店し、店舗再編を進めたことが響き、売上高は210億300万円(前年同期比23.2%減)と大幅減収だった。
 損益は、前期(2018年12月期)実施した商品評価基準の見直しによる評価替えの効果が表れ、総利益率は改善した。業務提携している(株)ヤマダ電機(TSR企業コード:270114270、群馬県、三嶋恒夫社長、東証1部)に社員を出向させ、ECサイト強化で利益率の改善を目指したほか、賃借料などの削減で販管費を圧縮し、営業利益率の改善も進めた。
 しかし、大幅減収や構造改革の負担が重しとなり、営業利益は29億1,800万円の赤字(同48億6,300万円の赤字)、経常利益は30億1,700万円の赤字(同49億6,900万円の赤字)、純利益は30億6,200万円の赤字(同30億5,300万円の赤字)だった。
現預金残高は21億9,000万円で、前期末(2018年12月末)から10億400万円減少。期中の資産流動化により長期借入金は8億円となった。増資で38億円を調達予定だったが、26億円にとどまったことも背景にある。
 通期(2020年4月期、決算期変更)の業績予想は据え置いた。
 足元の売上は再び厳しさを増している。10月の既存店売上は前年と比べて23.5%減少。消費増税や前年の在庫一掃セールの反動が出ている。

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20191114_03.html

赤字幅は縮小したのですが、かなり業績としては厳しい状況にあります。

上記の記事にあるように「損益は、前期(2018年12月期)実施した商品評価基準の見直しによる評価替えの効果が表れ、総利益率は改善し」ていますが、これは前期に在庫の評価減(簿価を下げること)をしたからと想定されます。単純に言えば、高く仕入れすぎた商品について、先に赤字を出しておけば、次の期には商品の原価が下がっているので利益率が改善して見えるだけです。

全体的には、店舗閉鎖もあり減収幅は大きく、販管費(コスト)削減が販売減に追いつかず赤字が継続しているということになります。

 

決算のポイント

大塚家具の決算のポイントは、単純です。キャッシュが足りなくならないか、すなわち「資金繰りが破綻しないか」がポイントです。

大塚家具には、商品以外に売るものはほとんど無くなりました。外からお金を調達するか、商品を売る以外に、キャッシュを稼ぐことは出来ません。

2020年4月期3Q決算(2019年1〜9月)は、外から増資という形で資金を調達しました。それでも前期末(2018年12月末)から10億円のキャッシュが減少しています。

以下がキャッシュの流れにおけるポイントです(2019年9月末時点)。

  • 現預金は22億円、2018年12月末(前期末)からは10億円の減少
  • 売掛金・受取手形は前期末比+5億円(キャッシュにはマイナス寄与)
  • 商品在庫は前期末比▲3億円(キャッシュにはプラス寄与)
  • 差入保証金は前期末比▲5億円(キャッシュにはプラス寄与)
  • 買掛金・支払手形は前期末比▲2億円(キャッシュにはマイナス寄与)
  • 短期借入金は前期末比▲13億円(キャッシュにはマイナス寄与)
  • 前受金は前期末比+9億円(キャッシュにはプラス寄与)
  • 長期借入金は前期末比+8億円(キャッシュにはプラス寄与)
  • 以上の項目だけをまとめると、5億円のキャッシュプラス要因
  • 2020年4月期3Q決算(2019年1〜9月)には増資で26億円調達しているため、26億円と上記5億円の合計31億円キャッシュが増加する要因あり
  • 実際には2019年9月末時点で10億円現預金が減少していることから、期間中に実際に減少したキャッシュは10億円+上記31億円の41億円と推定可能

以上の通り、現時点で22億円の現預金を保持する大塚家具ですが、2019年1〜9月の間に41億円のキャッシュが減少しています。1ヶ月に▲4.5億円のペースですので、このままのペースでキャッシュが減少すれば5ヶ月後には資金繰りが行き詰まります。

もちろん借入を行う、商品を何らかの形で現金化する等、大塚家具は様々な手を打つとは思いますので、5ヶ月で破綻するということにはならないのが通常です。

それでも、キャッシュが減り続けていることには変わりなく、大塚家具の資金繰り不安は全く終わっていないのです。

これが大塚家具の2020年4月期3Q決算(2019年1〜9月)のポイントです。