3メガバンクの2020年3月期決算が出揃いました。
このコロナ禍において、メガバンクの中では業績苦戦が続くみずほ銀行の決算はどうだったのでしょうか。
今回は、他メガバンクと比較しながら、みずほ銀行の2020年3月期単体決算について簡単に確認します。
みずほ銀行単体業績
メガバンクは各社とも傘下企業が増加し、単純比較は難しくなってきています。今回はみずほフィナンシャルグループではなく、みずほ銀行単体の決算に焦点をあて、決算の特徴を確認します。
みずほ銀行の単体決算における主要な項目は以下の通りです。
<みずほ銀行単体 2020年3月期決算>
- 業務粗利益 1兆3,046億円(前期比+2,296億円)
- うち国内業務粗利益 7,509億円(同+815億円)
- (国内業務粗利益のうち資金利益 4,140億円、同▲424億円)
- (国内業務粗利益のうちその他業務利益 398億円、同+221億円)
- うち国際業務粗利益 5,537億円(同+1,481億円)
- (国際業務粗利益のうち資金利益 2,151億円、同+217億円)
- (国際業務粗利益のうちその他業務利益 1,008億円、同+1,351億円)
- 経費 ▲8,381億円(同+291億円※経費減少)
- うち人件費 ▲3,239億円(同+133億円※経費減少)
- うち物件費 ▲4,648億円(同+166億円※経費減少)
- 業務純益 3,609億円(同+1,080億円)
- 臨時損益 698億円(同+382億円)
- 当期純利益 3,078億円(同+4,522億円)
- 国内総資金利鞘 ▲0.21%(同▲0.00%)
- (預貸金利利回差 0.76%、同▲0.03%)
- 与信関係費用 ▲1,724億円(同▲1,501億円)
みずほ銀行の2020年3月期決算は、増収増益となり、最終利益は黒字転換しました。
増収となった主な要因は国際業務の「好調」です。
しかし、一般的に想像されるように海外での貸出増加による収益増加というよりは、海外での債券売却による収益増加が要因です。これは、各国の中央銀行の金利引下げによるものでしょう。あえていえば本業が改善した訳ではありません。
また、経費は低下していますが劇的なものではありません。
結果として、一般企業の営業利益に該当する業務純益は、前述の国際業務の好調により大幅増益を達成しています。
最終利益は、前期に発生した巨額のシステム減損という特殊要因が無くなり、最終黒字転換転換となりました。
国内総資金利鞘は▲0.21%と前期比横ばいであり、本業で利益を出せない構図には変わりありません。
尚、不良債権処理費用は、コロナによる将来の影響を加味し、大幅に増加しています。
他メガバンクの決算
では、みずほ銀行と比べて他メガバンクの決算はどのようになっているのでしょうか。
まずは最終利益トップの三井住友銀行から確認しましょう。
<三井住友銀行単体 2020年3月期決算>
- 業務粗利益 1兆4,120億円(前期比+164億円)
- うち国内業務粗利益 7,627億円(同▲868億円)
- (国内業務粗利益のうち資金利益 5,617億円、同▲764億円)
- (国内業務粗利益のうちその他業務利益 154億円、同+1億円)
- うち国際業務粗利益 6,493億円(同+1,032億円)
- (国際業務粗利益のうち資金利益 3,164億円、同+104億円)
- (国際業務粗利益のうちその他業務利益 814億円、同+329億円)
- 経費 ▲8,081億円(同+35億円※経費減少)
- うち人件費 ▲3,196億円(同+56億円※経費減少)
- うち物件費 ▲4,383億円(同±0)
- 業務純益 5,867億円(同+27億円)
- 臨時損益 ▲1,028億円(同▲1,684億円)
- 当期純利益 3,174億円(同▲1,600億円)
- 国内総資金利鞘 0.28%(同▲0.09%)
- (預貸金利利回差 0.91%、同▲0.03%)
- 与信関係費用 ▲496億円(同▲518億円)
三井住友銀行はみずほ銀行と比べて、単純に言えば、売上が多くコストは少ないということになります。
国際業務も資金利益ではかなり差があります。
そして、人件費も物件費もみずほ銀行よりも低いのです。
国内総資金利鞘はプラスを確保しており、本業で利益を上げています。
利益面ではみずほ銀行と大きな差がついていると言えます。
次に三菱UFJ銀行はどうでしょうか。
<三菱UFJ銀行銀行単体 2020年3月期決算>
- 業務粗利益 1兆5,463億円(前期比+109億円)
- うち国内業務粗利益 9,181億円(同▲560億円)
- (国内業務粗利益のうち資金利益 5,717億円、同▲1,221億円)
- (国内業務粗利益のうちその他業務利益 958億円、同+313億円)
- うち国際業務粗利益 6,282億円(同+669億円)
- (国際業務粗利益のうち資金利益 2,461億円、同▲712億円)
- (国際業務粗利益のうちその他業務利益 2,142億円、同+537億円)
- 経費 ▲1兆1,510億円(同▲40億円)
- うち人件費 ▲3,854億円(同+102億円※経費減少)
- うち物件費 ▲6,985億円(同▲152億円)
- 業務純益 3,953億円(同+69億円)
- 臨時損益 ▲639億円(同▲1,721億円)
- 特別損益 ▲9,951億円(同▲1兆1,379億円)
- 当期純利益 ▲6,531億円(同▲1兆3,163億円)
- 国内総資金利鞘 ▲0.00%(同▲0.08%)
- (預貸金利利回差 0.79%、同▲0.02%)
- 与信関係費用 118億円(同▲1,285億円)
三菱UFJ銀行は、みずほよりもかなり規模の大きい銀行です。
但し、三菱UFJ銀行はコスト負担も重く、悪く言えば図体が大きいということになります。
収益でいけば、三井住友銀行が最も良く、三菱UFJ銀行が中間、みずほ銀行が最下位となります。
ただ、場合によっては三菱UFJ銀行がみずほ銀行に利益で負ける局面もあり得ます。それぐらい銀行単体としては利益が接近してきました(ちょっと言い過ぎかもしれません)。
尚、不良債権比率は、三井住友銀行が0.46%、三菱UFJ銀行が0.67%、みずほ銀行が0.71%となっています。
健全性でも三井住友銀行がトップとなっています。
所見
みずほ銀行が3メガの中で最も厳しいポジションにいることは間違いありません。
収益力では三井住友銀行に劣り、規模と海外では三菱UFJ銀行に圧倒的に差をつけられています。
2020年3月期は海外での市場運用が上手くいきました。これは一過性と考えた方が良いでしょう。
みずほ銀行には強みがあまりないのです。
しかし、だからこそコスト削減を行うしかありません。システム問題に一定の目処をつけた今、みずほ銀行は人員削減・店舗削減をさらに進めることになるでしょう。
3行の単体比較にどこまで意味があるかは分かりません。各行ともフィナンシャルグループとして戦略も異なります。
しかしながら、日本ではフィナンシャルグループの核は銀行です。
この銀行単体同士の比較には、それなりに意味はあるのではないでしょうか。みずほ銀行の今後の戦略に注目しています。