メガバンク3行の2021年3月期(2020年度)決算が出そろいました。
マスコミではMUFGが利益額で首位を取り戻した等の報道がなされていますが、ほとんどは連結決算について説明されています。
今回は、時代遅れにはなりつつあるかもしれませんが、メガバンク3行の単体決算について比較してみたいと思います。各行の印象が変わるかもしれません。
3行の業績比較
メガバンク3行の単体業績の比較は以下となります。
(出所 各社IR資料から筆者作成)
上記数値は、三菱UFJ銀行単体、三井住友銀行単体、みずほ銀行単体の2021年3月期単体決算数値です。
皆さんも何か気づくことがあるのではないでしょうか。
筆者が考えるメガバンク3行の単体決算比較のポイントは以下です。
- 単体業績ではメガ3行はそこまでの規模の違いはない
- 国内は三菱UFJと三井住友は既に拮抗し始めている(三菱UFJは国内で国債等損益が▲640億円あり、三井住友は+30億円となり、この損益を勘案した場合)
- 同様に国際業務粗利益も三菱UFJと三井住友は拮抗してきている(三菱UFJは国際の国債等損益が+1,807億円、三井住友は+769億円)
- 営業費(コスト)は三菱UFJが突出して高く、その要因は特に物件費(店舗経費+システム経費が主)にある
- 与信関係費用についてもメガバンク3行に大きな差はない
- そのため、本業の利益である業務純益(一般企業の営業利益に相当)、当期純利益は、三菱UFJが最下位である
このように3メガバンク単体決算を総括することが可能です。
所見
メガバンク3行とも持株会社化し連結経営を行っている中で、銀行単体の決算数値を並べて比較することにどの程度の意味があるのかとお考えになる方もいるでしょう。
また、三菱UFJは、米国事業や東南アジア事業等は別法人化しています。従って、国際業務については各行の単体比較は意味が無いというご意見もあるでしょう。
しかし、単体の業績を比較することは相応には意味があります。メガバンク(連結)の経営を担うのは銀行のメンバーです。したがって、銀行単体の業績はそのメガバンクの戦略に大きく影響を及ぼすものと思われます。
三菱UFJ銀行という巨艦が行うべきは、やはりコスト削減なのです。コストが高すぎるからこそ、単体で見ると三井住友銀行のみならず、みずほ銀行にも利益面で負けています。これが現実です。
三井住友銀行は低コストオペレーションこそが強みです。一方で、銀行業界のサクラダファミリアとまで言われたシステムを減損したみずほも店舗削減にも踏み出し、コスト削減が進み始めています。
貸出業務の収益増等が簡単には見込めない中では、各行ともコスト削減をメインに経営を進め、デジタルシフトに舵を切っていくことになるのでしょう。