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3メガバンク単体の2021年3月期2Q決算比較~三菱UFJ銀行の課題が目立つ決算~

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メガバンクの2021年3月期2Q(4~9月)が出そろいました。

今やメガバンクは、証券会社やカード会社、消費者金融、信託銀行等を傘下に収めており、単純に銀行とは言い切れません。各社戦略にも差があり、メガバンクで単純な比較を行うのは難しくなりました。

そこで今回の記事では銀行を取り出して、メガバンクを比較してみたいと思います。

 

メガバンクの単体決算

まずは、メガバンク3行の単体決算を確認しましょう。

<三菱UFJ銀行(単体)>

  • 業務粗利益 8,886億円
  • うち国債等債券関係損益 1,927億円
  • 営業費 5,670億円
  • うち人件費 1,868億円
  • うち物件費 3,440億円
  • 一般貸倒引当金繰入額(▲は繰入) 135億円
  • 業務純益 3,352億円
  • 臨時損益 ▲713億円
  • うち与信関係費用 ▲683億円
  • 中間純利益 1,937億円

 

<三井住友銀行(単体)>

  • 業務粗利益 7,486億円
  • うち国債等債券損益 1,050億円
  • 営業費 3,979億円
  • うち人件費 1,618億円
  • うち物件費 2,096億円
  • 一般貸倒引当金繰入額(▲は繰入) ▲923億円
  • 業務純益 2,584億円
  • 臨時損益 ▲674億円
  • うち与信関係費用 ▲363億円
  • 中間純利益 1,444億円

 

<みずほ銀行(単体)>

  • 業務粗利益 6,950億円
  • うち国債等債券損益 381億円
  • 営業費 3,992億円
  • うち人件費 1,542億円
  • うち物件費 2,210億円
  • 一般貸倒引当金繰入額(▲は繰入) ▲607億円
  • 業務純益 2,350億円
  • 臨時損益 ▲1,024億円
  • うち与信関係費用 ▲189億円
  • 中間純利益 1,097億円

このように見ていくと、三菱UFJが利益トップ、みずほが利益では最下位ではあるということが明確に分かります。

 

3メガバンクの比較

では、同じデータですが切り口を変えて3メガバンクを比較してみましょう。

以下は、最大手である三菱UFJ銀行と三井住友銀行・みずほ銀行の業績を比較したものです。

(単位:億円) 三菱UFJ 三井住友 みずほ
実績 実績 MUFG差 実績 MUFG差
業務粗利益 8,886 7,486 -1,400 6,950 -1,936
うち国債等債券関係損益 1,927 1,050 -877 381 -1,546
営業費 5,670 3,979 -1,691 3,992 -1,678
うち人件費 1,868 1,618 -250 1,542 -326
うち物件費 3,440 2,096 -1,344 2,210 -1,230
一般貸倒引当金繰入額(-は繰入) 135 -923 -1,058 -607 -742
業務純益 3,352 2,584 -768 2,350 -1,002
臨時損益 -713 -674 39 -1,024 -311
うち与信関係費用 -683 -363 320 -189 494
中間純利益 1,937 1,444 -493 1,097 -840

これを見ると分かるのは、国債等債券関係損益を除けば、業務粗利益(=一般企業の売上高)については、三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行にはあまり差がないということです。すなわち、三菱UFJ銀行は他行に比べて債券で収入を「作った」ことになります。

一方で、営業費は三菱UFJが他行に比べて随分と高くなっています。その差は、人件費よりも物件費(主に店舗経費+システム経費)にあります。

そして、一般貸倒引当金繰入額では、三菱UFJ銀行が戻り入れがあったのに対して、三井住友銀行とみずほ銀行は引き当てを積んでいます。

まとめると、債券の売買等によって三菱UFJ銀行は売上高(業務粗利益)がトップである一方で、コスト(営業費)がかなり高く、今回は一般貸倒引当という形で不良債権処理費用の計上が無かったため、本業の利益(業務純益)でトップとなっていることになります。

尚、臨時損益に含まれる与信関係費用も加味しても、三菱UFJ銀行は不良債権処理費用が最も少なく、三井住友銀行は費用が最も多くなっています。

 

まとめ

3メガバンクを単体で比較することには、近時はあまり意味がないかもしれません。例えば、三菱UFJ銀行はタイの支店をタイの地場銀行に統合している等の事例もあり、銀行単体で比較しても、3メガバンクの本質的な違いは分析できなくなってきています。

しかし、それでも単体比較で、ある程度の傾向は読み取れます。

改めて指摘すれば、2021年3月期2Q決算において、最大手の三菱UFJ銀行は「債券運用(特に外債)に頼っている割合が多い」「物件費が高すぎる」ということでしょう。

単体だけを比較するのであれば、収益力、効率性等を考えると、三井住友銀行が現時点では最も優れていると筆者は考えています。