銀行員のための教科書

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アフターコロナでaaS(アズ・ア・サービス)化は加速するのか

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新型コロナウィルスは様々な価値観、生活様式を揺さぶっています。

コロナショック前には、所有と利用が切り離されるアズ・ア・サービス(aaS)化が進行していくと言われていました。

この流れは、アフターコロナで何か変わるのでしょうか。

今回はaaS化の流れについて簡単に考察してみましょう。

 

アズ・ア・サービス(aaS)とは

aaSで最も有名なのはSaaSでしょう。

SaaSとは「Software as a Service」の略で、「サービスとしてのソフトウェア」ということですが、意味としては「ソフトウェアをインターネットを通じて遠隔から利用者に提供する方式」を指します。従来パッケージソフトとして提供されていた機能が、クラウドサービスとして提供される形態のことです。

料金はパッケージソフトのように最初に一度だけ所定の金額を支払う「買い切り」型ではなく、契約期間に基づく月額課金や、何らかの使用実績に応じた従量課金が一般的となっています。

マイクロソフトのオフィスが例としては分かりやすいでしょう。従来は、オフィスのソフトを購入し、それをPCにインストールして使っていました。これが、現在はクラウドで使うことが可能になっています。

SaaSは、所有に対して料金を払うのではなく、利用に対して料金を払うビジネスモデルと言えます。

aaSでもう一つ聞くのは「MaaS(Mobility as a Service)」でしょう。

MaaSは、自動車などの移動手段を、必要なときだけ料金を払ってサービスとして利用することです。カーシェアリング、ライドシェア、オンライン配車サービスなどがあります。イメージとしては、Uberがその代表例でしょう。

ただし、MaaSの概念は幅広く、交通をその種別などにかかわらず移動のための一連の手段として位置づけ、それらをICTの活用により一つの統合されたサービスとしてとらえる概念と言えます。これまでは個別に運営・利用されていた鉄道やバス、タクシーなどの交通手段を、ICTを活用してクラウド化し、1つのプラットフォームに統合し、シームレスなサービスとすることになります。

ちなみにReal Estate as a Service(REaaS)の代表例としてWe Workが挙げられることもあります。こちらはシェアオフィスです。

このようにSaaSから派生して、従来は購入したり固定的・長期的な利用契約を結んで利用してた様々な資源を、サービスとしてネットワーク越しに必要なときに必要なだけ利用し、実績に応じて代金を支払う提供方式が様々な対象や分野で登場してきています。

これらを総称する概念として、XaaS(Xには様々な言葉が入ります、Xは数学で使った未知数のこと)もしくはaaSが使われています。

様々な産業でaaS化が進展していくと予測されています。

 

aaS化は加速するのか

アフターコロナではaaS化は加速するのでしょうか。

これは幅広い問題です。

しかし、ソフトウェアの利用という観点では、間違いなく加速するでしょう。

会社のPCで作業していたものが、在宅勤務・テレワークを通じて作業を行うようにすることが更に一般化されていきますので、クラウドを使った端末を選ばないソフトウェアの利用が必要となります。

しかし、業界によってaaS化の流れが加速するかは異なるでしょう。 

aaS化は、価値創出の形が「所有」から「利用」さらに「効用」に移っていくことです。

例えば、自動車だと、「所有(いつでも使える)=最初にお金を一括で支払う」から「利用(必要な時に使う)=利用した時に支払う」となり、将来的には「効用(他の移動手段を組み合わせ目的地に到着する)=効用の提供に対して支払う」ということになります。

ここで問題となるのは、コロナ禍の影響は、所有していることのメリットに焦点が当たるようになったことです。

自動車だと、公共交通機関やレンタカー(誰が使ったか分からない)での移動は怖いが、自分だけが使っている所有車だったら怖くない、ということが実際に起きています。筆者は維持費の高さに嫌気がさして現在は自動車を所有していませんが、移動の手段として、そしていざという時の宿泊場所として、必要かもしれないと考えるようになりました。

コロナ禍では、一部の分野では、むしろ所有の重要性が意識されるようになったと言えるのではないでしょうか。

コロナ禍はaaS化を押しとどめる方向にも作用するのです。

これからのaaS化は以下のような流れになっていくのではないでしょうか。

  • 個人や企業が、本質的に必要だと認識するものについては、完全にコントロールしたいと考えるようになり、今までの予想よりはaaS化は遅れると想定される
  • 但し、個人や企業の考えはそれぞれであり、同じモノであったとしても本質的に必要(=所有)とするか、利用・効用で良いと考えるかは個人・企業次第
  • また、コロナ禍で継続するはずだった「日常」は、簡単に崩れることが明らかになった
  • そのため、ある程度のコストを通常時は支払っていても、すぐに事業から撤退できる、すなわちコストダウンが容易な事業形態・生活形態を模索する動きが出てくる
  • すなわち、デジタル化・クラウド化の加速は止まることはなく、大きな流れは産業のaaS化となる

以上が大きなが流れとして筆者が予想することです。

尚、個別の業界でいけば、自動車業界は、aaS化は鈍化する可能性があると共に、加速する可能性があります。所有していない個人の中には自動車の所有は必要と考える人が出てくるでしょうが、一方で、アフターコロナの経済環境を鑑みれば所有コストを落とそうと考える人も出てくるでしょう。また、通勤に自家用車を使っていた人の中には、毎日通勤しないのであれば公共交通機関で十分と考える人も出てくるでしょう。

一方で、アパレル業界のFashion as a Service(FaaS)は在宅勤務が拡大すれば伸びる分野かもしれません。アパレルは営業自粛により大量の在庫を抱えています。一方で、個人としては毎日会社に行かないのであれば、多くの服を購入する必要がありません。会社に行く時だけ、それなりの服を着れば良いと考える個人は現れるでしょう。

各業界・産業でこのように新たな動きが出てくるのが、アフターコロナなのだと思います。

一つだけ間違いないのは、我々個人にとっては、選択肢が増えるということです。