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コロナで影響を受ける業界の就業者数

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新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う非常事態宣言により、様々な経済活動が停滞しています。

様々な店舗等が休業していますが、このコロナウィルスの影響を直接的に受けている就業者は、実際どの程度いるのでしょうか。

今回は、コロナウィルスで影響を受ける業界の就業者数について確認してみたいと思います。

 

コロナウィルスで影響を受ける業界

非常事態宣言が出ている中で「新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受ける業界」と言われても違和感を感じるかもしれません。どの業界も影響を何らかの形で影響を受けているからです。

しかし、その中でも影響の大きい業界があります。

例えば、一部報道では、コロナ問題の影響が最も大きいのは「航空、自動車・自動車部品、レジャーが減るカジノ関連、小売・観光、価格低下に直面する石油・ガス、国際物流の6分野」とされています。

この点については以下のグラフが見やすいかもしれません。

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(出所  ダイヤモンドZAi「コロナ・ショック」で最も打撃を受ける業種とは?小売り、ホテルなど“インバウンド”の恩恵を受けてきた業種の中でも、最も影響を受けるのは「百貨店」! https://diamond.jp/articles/-/232255

上記のダイヤモンドの図表では、機械や自動車が挙げられていますが、これらの製造業は製造・販売が出来ないと固定費負担が重い業種です。一方で、後からきちんと「売れる」のであれば、製造業は生産して在庫をストックしておくことが出来ます。

やはり、最初に影響を受けるのは「人やモノの移動・活動に関係する産業」でしょう。

では、どのような産業に、どの程度の数の就業者が属しているのでしょうか。

 

コロナウィルスで影響を受ける業界の就業者数

前述の影響を受ける業界というのは「人やモノの移動・活動」に関連していると言えます。

以下は日本不動産研究所のWebサイトからの引用のグラフですが、産業別の従業者数となっています。

黄色のグラフが「運輸業・郵便業」「卸売業・小売業」「学術研究、専門・技術サービス業」「宿泊業・飲食サービス業」「医療・福祉」等になっており、日本不動産研究所が考えるコロナウィルスの影響を如実に受ける産業です。

この黄色のグラフの従業者を合計すると34百万人強となります。

この平成28年経済センサスで調査された従業者全体が57百万人弱ですので、従業者の約6割が黄色の棒グラフの従業者数の合計となります。

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(出所 日本不動産研究所「コロナウイルス対策から考える都市の未来」http://www.reinet.or.jp/?p=23786

黄色の棒グラフの産業は人が移動・活動しなければ成立しない産業です。顧客の活動目的は、仕事、買い物、旅行、飲食等、多岐に渡っています。

日本における就業者数の約6割は、人やモノの移動・活動に関わる産業に携わっています。言葉を変えれば、日本の就業者は、かなりの割合で実質的には「サービス産業(第三次産業)に就業している」のです。

日本は、モノづくりの国と言われることが多い(もしくはそのように考えている人が多い)ですが、第二次産業である鉱工業・製造業・建設業などで就業する人の割合は全体の1/4程度なのです。

日本は圧倒的にサービス産業化しています。

そして、「サービス」には、特有の基本特性として「無形性(目に見えない)」、「同時性(提供と同時に消滅)」といったものを挙げることができます。「無形性」とは、サービスとして提供されるものが、行為や運動、機能、情報といったものであり、例えば製品という有形物を産み出す製造業とは性格を異にしています。また、「同時性」とは、生産と消費が同時に発生するということであり、例えば貯蔵や在庫が可能となる製造物と性格を異にしています。サービスは、売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する役務です。

すなわち、サービス産業とは、人やモノが移動や活動をすることに対して、形の残らない便益を提供するようなものであり、人やモノが移動や活動をしなければ、サービスのニーズが生まれません。

つまり、コロナの影響はサービス産業にこそ直接的に甚大な影響をもたらします。そして、サービス産業の就業者に所得等の形で影響が及び、その後に製造業にも消費者の購買意欲の減という形で影響が及んでくるのです。

コロナの影響を如実に受ける就業者はサービス産業というだけでも全体の6割は存在します。

そして、それだけ多くの就業者を抱える産業に影響が及ぶのであれば、その産業の就業者である「多数の消費者」が影響を受けるということになります。他産業にも波及することは必至なのです。

コロナの影響を受けないと当初は感じていた不動産業や銀行業も、今となっては影響を受けることを実感しているでしょう。家賃の猶予・免除要請や、貸付先の破綻等はこれから本格化します。

コロナで最初に影響を受ける業界の就業者数は全体の6割程度ですが、その後は、ほとんどの就業者が影響を受けるのです。