銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

銀行員が注目した2020年ニュースをまとめてみる

f:id:naoto0211:20201229114711j:plain

2020年・令和2年は新型コロナ感染症一色の一年でした。

我々は「歴史が変わる大きな転換点にいる気がする」一年でもありました。

今回は筆者が注目したニュースを通じて2020年を振り返ってみたいと思います。

あくまで銀行員目線です。どうしても金融面のトピックスを取り上げがちですが、その点はお許しください。

 

コロナ関連のニュース

  • 中国武漢で新型肺炎発生
  • 日本においてクルーズ船が横浜港停泊
  • 小中学校の休校要請
  • 4月の緊急事態宣言
  • 東京オリンピックの開催延期
  • 高校野球の春夏中止
  • Go Toトラベルキャンペーン開始
  • ワクチン投与開始

2020年はとにかくコロナでスタートしました。

海の向こうの中国の出来事だったはずの新型コロナウィルス感染症は、気づけば日本のみならず世界に蔓延し、猛威を振るいました。4月の緊急事態宣言は出さないと国民の恐怖感情が暴発するような雰囲気を感じたことを筆者は強く記憶しています。

そして、大人以上に一年一年が大事な子供達にとっては、重要な時間が奪われた時間だったと思います。勉強の遅れも心配されますし、高校野球やその他スポーツ等、一生の思い出になるはずだったイベントが無くなった子供達が、2020年を将来の時点で振り返る時には何を思うのでしょうか。

また、東京オリンピックというインバウンドを更に盛り上げるはずだったイベントは延期となりました。

Go Toキャンペーンは、様々な批判もありますが、目の付けどころは悪くはなかったように思います。筆者は、今回改めて実感しましたが、我々が携わるビジネスは、その多くが「人が移動」することを前提にしているということです。人の移動が止まると、かなりのビジネスが成立しなくなります。それを、恥ずかしながら筆者は今まで考えたことがありませんでした。

来年は明るいニュースが日本に、そして世界に溢れることを願います。

 

金融関連のニュース

  • 銀行の実務がデジタル化がされていないことがコロナ対応のネックに
  • 各国がコロナ対応で超金融緩和策を相次いで導入
  • 日銀が株式ETFでの含み損により債務超過となる懸念発生
  • 無利子・無担保融資(公的・民間金融)開始
  • スルガ銀行がシェアハウス問題で借入人と実質的な借金帳消しで合意
  • 公正取引委員会による銀行間送金手数料の引き下げ提言
  • ドコモ口座不正利用
  • 金融価格の上昇
  • 仮想通貨(暗号通貨)価格の上昇
  • 不動産価格の明確な下落見られず
  • 中央銀行デジタル通貨の研究加速
  • 東京証券取引所システムトラブルにより売買終日停止
  • 菅首相による「地銀の数が多すぎる」発言と地銀再編の支援策

筆者の属する金融業界では、デジタル化が本当に遅れていることを実感させられた一年でした。銀行の事務は、紙ベースのものが多かったり、FAXを未だに使っている業務があったり、問題は山積みです。その銀行の事務に影響され、法人取引先の経理部・財務部のメンバーの方も在宅勤務ができなかったこともあり、銀行のデジタル化の遅れが、経済活動のボトルネックになりそうだと筆者は恐怖すら感じました(今も完全には解消されていません)。

そして年初の株価下落とその後の株価上昇、金価格・仮想通貨の上昇は、金融緩和という公的施策がいかに株式市場や商品市場に影響を与えるかを如実に示しました。

一方で、株価下落時には日銀が債務超過になるのではないかとの議論もなされました。中央銀行の役割について改めて考えさせられる緊張感があったのではないでしょうか。

企業の資金繰り不安は、結果としては倒産の多発というような形では現れませんでしたが、それは公的な資金繰り支援策が機能したからです。無担保・無利子融資は、かなりのインパクトもありました。

スルガ銀行がシェアハウス所有者への借金帳消し発表したのも本年でした。このニュースを見た際には、他の銀行はアパートローンを提供しなくなるのではないかと思ったほどです。この合意は、銀行の「貸し手責任」を認めたものであり、個人においては借りた者勝ちの世の中になったことを意味する可能性があります。

銀行間送金手数料の引き下げ提言については、銀行のみならずNTTデータの問題も浮き彫りになりました。政府がフィンテック企業を育成していこうという流れの中で、日本の銀行は従前のサービスが侵食されていくことを実感したのではないでしょうか。

菅首相が誕生してからは、地銀の統合が脚光を浴びています。この流れは2021年に具体化するのでしょう。

 

企業関連のニュース

  • 企業の早期退職者募集
  • ジョブ型雇用導入の議論
  • 三井住友信託銀行とみずほ信託銀行の合弁会社による、上場企業の株主総会における議決権行使書のカウント漏れ問題発覚
  • 株主総会のネットのみでの開催可否にかかる問題
  • 「ハンコ」廃止の動き
  • テレワーク・リモートワーク・在宅勤務の普及
  • 「痛勤」からの解放
  • 一部企業でオフィス解約の動き
  • 企業のデジタルシフト
  • 物流施設の活況、オフィスの空室率上昇
  • ESG経営、SDGsの潮流が明確に
  • 安倍首相退陣と菅政権誕生
  • 大阪都構想住民投票、反対派勝利

上場企業等大企業の早期退職者募集が大きなニュースになった一年でした。そして、雇用のあり方についても議論となり、ジョブ型雇用という用語が一般に意識され始めたことも記憶に新しいでしょう。企業と従業員の関係が変わった転換点となったのが2020年だったと将来は記憶されているのかもしれません。

コロナ禍においては、株主総会を法律上はリアルで開催するしかなかったものの(結局法律の手当てはされず)、株主に自粛を求めることが出来るという何とも曖昧な形で株主総会のネット開催問題は終わりました。ネットでの株主総会開催は様々な論点があることは間違いありませんが、一方でリアルの株主総会が本当に有用かという問題もあります。今後の重要な課題ではないかと思います。

そして、信託銀行による株主総会議決権行使のカウント漏れという事件がありました。議決結果に大きな影響が出ないということでいつの間にか問題が鎮静化したように感じますが、この問題は企業統治の根幹を揺るがしたという点で、かなり大きな問題でした。議決権行使のあり方を見直す良いきっかけになることを期待します。

そして在宅勤務の拡大により「ハンコ」の問題がクローズアップされました。今でも様々な会社が自社の事務フローを見直している最中でしょう。この流れで「痛勤」時間からの解放が歓迎され、一部の企業ではオフィスの縮小に動き出しました。業務の見直しとオフィスのあり方については、一気に日本企業において変化が訪れるのではないかと筆者は期待しています。

そして、企業のデジタルシフト、EC販売への注力、物流施設への注目等もコロナ禍において加速しました。リアル店舗での運営・販売、リアルの営業というようなものが出来ない状況において、ビジネスをいかに続けていくのか、重い課題をコロナは突きつけています。しかし、この流れはコロナ以前からあったものであり、コロナはその流れを加速したということなのでしょう。

コロナは世界の様々な人々(経営者含む)の価値観に大きな影響を与えました。これからは持続可能性、全てのステークホルダーに対しての経営が、更に脚光を浴びることになります。

安倍前首相の退陣は一つの時代の終わりを感じさせます。筆者の感覚でしかありませんが、菅政権から発信されている政策を見るにつけ、日本が大国であるイメージを守ろうとした最後の政権が安倍政権だったのかもしれないと考えさせられます。

大阪都構想の住民投票の結果、反対派が勝利したことは、日本における地方自治体の縮小がいかに難しいかを、あえて言うならば、地方自治体から恩恵を受けている人々の既得権益を縮小すること(もしくはそれへの不安)がいかに反発を招くかを改めて証明しました。このような事象がこれからは日本全国で起きてくるのではないでしょうか。

 

国際関連のニュース

  • 英国のEU離脱確定
  • 香港国家安全法案の成立
  • 米国の警官による黒人暴行死、ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter)運動の拡大
  • バイデン大統領就任決定

英国のEU離脱は今更のように感じられるかもしれませんが、これも歴史的に見ると大きな事象なのだと思います。グローバリゼーションへの反発、移民への反発、中間層が何で食べていくのかという雇用の問題というような、問題が表に出てきたということでしょう。世界は保護主義、孤立主義に行くのでしょうか。政治家は、目先の支持を得るためだけに、国民に誤ったメッセージを伝えないようにしなければならないのではないかと思います(流れは逆の方向に進んでいるように思いますが)。

香港の一連の騒動は、中国という国への怖ろしさを実感させられる事象でした。「あの香港」が無くなってしまう、ということを感じさせられました。そして、台湾のみならず、恐らく日本にとっても他人事ではないのだろうと思います。

米国の警官による黒人暴行死は、改めて人種差別の現実を、そして、トランプ大統領就任以降に明らかになったアメリカという大国の表と裏、建前と本音の一端を見せつけられたように思います。新たな「世界の王」となったバイデン新大統領がどのようなかじ取りを行うのか、注目していきます。

 

最後に 

皆さんにとっての2020年はどのような年だったでしょうか。

2021年こそは、皆さんにとって素晴らしい年となることを祈念し、本年のブログを終了したいと思います。一年間ありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。