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現役世代が高齢世代と対立するのは世界的な潮流になるのではないか

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新型コロナウィルス感染症拡大は、致死率の高い高齢者の差別を起こしていると一部で報道されるようになりました。

新型コロナは、少子高齢化が進む世界の先進各国における世代間の対立を浮き彫りにしたように筆者には思えます。

今回は、新型コロナが引き起こしつつある世代間の対立について、簡単に考察してみましょう。

  

報道記事

新型コロナウィルス感染症により高齢者差別が起きていると話題になり始めています。

まずは新聞記事を確認しておきましょう。日経新聞からの引用です。

新型コロナで高齢者差別、国連総長「個人的にも憂慮」
2020/05/02 日経新聞

 【ニューヨーク=吉田圭織】国連は1日、新型コロナウイルスの感染者を治療する際に高齢者が差別される問題が各国・地域で浮上しているとして、改善を求める提言を出した。4月30日に71歳の誕生日を迎えたグテレス事務総長は「自身も高齢であり、年老いた母への責任もある。個人的にパンデミック(世界的流行)に対する深い懸念を抱いている」と述べた。
 新型コロナは高齢者の致死率が高い。提言では高齢者は病院で治療の優先順位が低いとされたり、外出制限の長期化で家庭内でドメスティックバイオレンス(DV)を受けたりするリスクが高くなると指摘した。高齢者は現役世代とのデジタルデバイド(情報格差)から、孤立によるメンタルヘルスの悪化も招きやすいとした。
 国連は、各国・地域が新型コロナ対策で高齢者問題をより意識し、全ての人に公平に医療サービスを提供する重要性を強調した。高齢者向けに、ラジオやテキストメッセージを通した情報配信を強化するよう求めた。

まさに、新型コロナウィルスが浮き彫りにしたのは、世代間の対立ではないかと筆者は考えています。

この記事で述べられているのは、あくまで致死率が高い(そして残りの人生が短い)高齢者が治療で差別を受けているというようなものです。

しかし、その裏には、もう少し深い世代間対立が起きているのではないでしょうか。

 

世代間の利害対立

新型コロナウィルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言、外出自粛、経済活動の停止についえて、現役世代は「死亡率の高い高齢者のために我慢している」「そして被害を受けている」と感じているのではないでしょうか。

ここに「平均貯蓄では現役世代をはるかに上回る」「年金は現在の高齢者は手厚いが少子高齢化が進む現役世代は所得代替率が低下する」「健康保険料が高くなったのは高齢者への支援金を取られているから」といった経済的にも高齢者世代は恵まれているという現役世代の負の感覚が重なります。

そして、今は誰も言わないでしょうが「新型コロナ対策の給付金という税金は、将来において誰が払うのか」という問題意識もあるでしょう。

特に日本においてはシルバー民主主義と言われて久しい状況です。

以下の図を見れば日本の政治家が「どの世代のご機嫌を取れば当選できるか」が分かるでしょう。

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(出所 総務省/国政選挙における年代別投票率について https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

現役世代の中でも20~40歳代の投票率は低いのです。

筆者が政治家で、政治家だけでご飯を食べているのだったら、自分を当選させてくれるはずの高齢者世代に受けの良い政策を取ります(きっと)。

 

今後すべきこと

我々には選挙という手段があります。世代間の利害対立があるのであれば、対立は選挙で行えば良いのです。利害対立を選挙を通じて解消していくのです。 

コロナ禍の中、改めて思うことは、政治家が日本という国を作るのではないはずです。我々国民が日本という国を作るはずです。

世界では、新型コロナウィルス感染症が蔓延するまでは気候変動に対して若者が団結して抗議活動を起こしていました。グレタ氏を中心とするムーブメントのようなものだと思いますが、今の若者でも団結できるのです。

私は、ネット社会の到来と共に興味関心が分断され、若者が団結することはほとんどなくなるのだろうと考えていました。もちろん、人間の基本的な欲望である衣食住がある程度充足されてきたことが前提です。

しかし、気候変動に対しては若者が一つの主義・主張の下に集いました。この主義・主張は気候変動に対するものですが、根底にあるのは既存の経営者を中心とした「大人たち」が自分達が暮らす地球を壊させないという考えです。これも世代間の対立なのです。

そして、世界の先進各国において共通した問題となっていくのは少子高齢化に伴う社会保障費用(医療費、年金等)の増加です。これも現役世代と高齢世代の世代間対立を生みます。

世代間の対立が、暴力に結び付く、差別に結び付くのは望みませんが、主張・議論、選挙で対立がなされるのは「あるべき姿」だと筆者は思います。

大いに対立し、大いに議論し、自らが暮らす国、世界を少しでも良くできればと思います。

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