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アフターコロナで住宅ニーズはどのように変わるのか

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コロナ禍により、業種・企業によっては、在宅勤務が当たり前の世の中が来る可能性が出てきました。

在宅勤務、テレワークが一般的になると住宅にも大きな影響が出ることは間違いありません。

今回は、アフターコロナで住宅ニーズにどのような変化が訪れるのか簡単に考察してみたいと思います。

 

二拠点居住という観点

コロナ前まではフリーランスといった一部の人にしか実現が難しかった都市と地方、国内と海外の「二拠点居住」や「多拠点居住」といった暮らし方が、今以上に広まるとの考え方があります。

また、住居は所有する資産ではなく、必要に応じて必要なときだけオンデマンドで借りるという「住」のシェアリングエコノミーが加速することが予想されています。もちろん、現在、住宅を保有している個人は、物件を民泊のように貸し出すことにもなるでしょう。

但し、平成30年住宅・土地統計調査によれば、普通世帯のうち、現住居以外の住宅を所有している世帯は511万世帯(普通世帯総数に占める割合9.5%)となっています。このうち、居住世帯のある住宅を所有している世帯は418万3千世带(同7.8%)、居住世帯のない住宅を所有している世帯は 138万2千世帯(同2.6%)となります。

この居住世帯のない住宅のうち、二次的住宅・別荘が38万世带(同0.7%) しかありません。すなわち、あくまで所有という観点ではありますが、日本では普通世帯総数の0.7%しか、二次的住宅・別荘を保有しておらず、とても二拠点居住や他拠点居住という形にはなっていないことになります。

これが、アフターコロナでどのように変わっていくのかが注目すべきポイントです。

 

住宅の間取り

テレワークをする個人は、 自宅において仕事に集中できる環境を求めるとともに、仕事と日常生活の明確な切り分けを求めることになる可能性が高いでしょう。例えば、Web会議中に子供が急に入ってくると困ります。加えて、Web 会議で写る自分の背景については、 あまり家庭的なものを見せたくはないでしょう。

そうすると、必然的に、必要とされる住居の間取りが変わってきます。

従来のLDKに書斎等の仕事空間を加えた LDK+1部屋型の住宅が必要となる可能性は高いのです。

一方で、住宅・土地統計調査を見ると、全国の民営賃貸住宅のうち半数が単身世帯用です。

全国的には、やはりワンルームが最も多く、4室に1室という割合です。また、単身世帯用として「1LDK」まで含めると53%となり、半数を占めていることが分かります。

東京23区になると更にこの傾向は高くなります。ワンルームが4割、「1LDK」まで含めた場合は約7割という結果です。東京23区はやはり単身世帯用の賃貸住宅が圧倒的に多いのです。

全国的には、民営貸貸住宅で2LDKを超える間取りの住宅は16.9%しかありません。

LDK+1部屋型の住宅は少なくとも貨貸住宅ではあまりないと考えても良いでしょう。


所見

現在、住居を保有する個人は、その間取りがアフターコロナで求められる機能に合致しているか、資産価値という観点から考えてみるのも良いかもしれません。

また、不動産投資家にとっては、今まで収益資産として安定してきた住宅という資産が、本当にこれからも安定的なのか、見直してみる必要もあるのではないでしょうか。

但し、筆者は都市部から地方に人が大移動する、都心の住宅に価値がなくなるとまでは考えていません。テレワークが当たり前になるほど、個人にとって住環境はこれまで以上に重要になってきます。都心には、やはり小売・飲食店等が集積しています。この生活にとっての利便性は、簡単には代替できません。

アフターコロナの世界はまだ見えていません。しかし、これまでと変わることと、変わらないことがあるはずです。その見極めが、特に住宅の所有者には求められているのかもしれません。