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これから猫派の時代が来るワケ

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コロナ禍においてペットを新たに飼う人が増えているという報道をご覧になった方は多いのではないでしょうか。

コロナ禍における自粛生活を充実させるために、ペットを新たな家族として迎えるというのは、確かにありそうな話です。もちろん、在宅勤務が増えているからこそ、ペットのお世話も出来るということでしょう。

日本においては、ペットいえば、やはり犬と猫が人気です。

今回は、日本におけるペットの動向について確認すると共に、その背景について考察してきたいと思います。

 

日本における犬・猫の飼育頭数

まずは、過去の日本における犬と猫の飼育頭数を確認しましょう。

以下は、一般社団法人ペットフード協会が実施した「平成19年(2007年)犬猫飼育率全国調査」によるものです。

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(出所 ペットフード協会「平成19年(2007年)犬猫飼育率全国調査」)

今から15年程度前は犬が1,307万頭、猫が1,009万頭程度であり、日本人は犬を多く飼っていました。

しかし、2020年10月時点の調査は以下のようになっています。

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(出所 ペットフード協会「令和2年(2020年)全国犬猫飼育実態調査」)

ペットフード協会の直近調査では、この直近5年間で見ると、犬は936万頭から849万頭まで減少しているのに対して、猫は931万頭から964万頭へと増加しています。

飼育率(全世帯に占める飼育している世帯数)では犬の方が多いですが、猫を飼っている世帯は平均飼育頭数が多いために、猫の方が犬よりも多くなりました。

 

コロナ禍における動き

2020年はペットを新たに家族に迎える動きがあると報道されていましたが、実際に過去5年間の中では新規者の飼育頭数が最も増加していると推計されています。

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(出所 ペットフード協会「令和2年(2020年)全国犬猫飼育実態調査」)

1年以内飼育開始者(新規飼育者)の飼育頭数は2019年と比べて増加し、増加率もそれ以前の年に比べて大きくなっています。「ペットショップでの購入が1年以内飼育開始者で例年に比べて多いことから、コロナにより外出を控える中、近くのペットショップへ足を運ぶ機会が増え、その結果、購入が伸びたのではないかと推察され(ペットフード協会)」ています。

 

飼育の阻害要因

コロナ禍においてペットを飼いたいと考える人も増えているとは思いますが、一方で飼育していない人の方が多数です。

ペットフード協会の調査(上記2020年実施分)ではペット飼育における最大の阻害要因は、「集合住宅に住んでいて禁止されているから」(犬26.8%、猫30.0%)となっています。

それ以外の主な理由には「旅行など長期の外出がしづらくなるから」(犬26.7%、猫24.2%)、「世話をするのにお金がかかるから」(犬21.9%、猫19.0%)、「ペットの価格が高いから」(犬13.8%、猫8.0%)といったものがあります。

特に2020年の特徴は「ペットの価格が高いから」という回答が過去2年は無かったものの、2020年から登場していることでしょう。

但し、2020年はペットの販売価格が高騰したようですが、初期投資(販売価格)よりもランニングコストの方が飼育阻害要因としては大きいとペットフード協会は分析しています。

2020年では、犬を飼育する生涯コストは2百万円超と推定されています。

<犬>

  • 平均寿命 14.48歳
  • 生涯必要経費 ¥2,073,531.-

一方で猫を飼育する生涯コストは犬に比べると少額です。

<猫>

  • 平均寿命 15.45歳
  • 生涯必要経費 ¥1,235,071.-

犬は外で散歩をさせなければならない犬種も多いことから、金銭的なコストのみならず、時間的なコストも猫を上回るといえるでしょう。

住環境、コスト、勤務形態、世帯構成等、様々なことを考えながら、ペットを飼育するかを考えることになるのは当然です。

 

所見

以上、日本における犬と猫という主要ペットの状況を確認してきました。

犬と猫の飼育数が減少していくであろうことは間違いないでしょう。

その要因の一つは、高齢化です。高齢者にとってみればペットという家族を残して逝くことを忌避するでしょう。そして日本の人口が減少していくのはほぼ間違いありません。ペットを家族として迎える人間の数が減っていくのです。

また、単身世帯の増加もあります。配偶者を亡くした高齢者の増加、未婚者の増加は今後も続きます。単身世帯は、そもそもペットを飼育しないという選択をしている可能性は高いでしょう。

そして、日本の都市化はまだ進んで行きます。ペット飼育不可の集合住宅に居住する人口の割合は高まっていくことになるでしょう。

そのため、犬と猫というペットの飼育数自体が減少していくのは避けられないものと思われます。

一方で、ペットの飼育数自体は減少が続くでしょうが、ペットの中で猫の割合は今後も高まっていくでしょう。

まず、単身世帯は犬よりは猫を飼う傾向にあります(冒頭の飼育頭数の割合の図表が示しています)。

そして、猫は犬よりは飼育経費が少なくすみ、散歩も必要ありません。

社会保険料関連の支出が高くなり手取収入が落ちてきていた家計にとってみれば、コロナで更に残業代等が減っていますので、コストは重要な要素になります。共働き世帯にとっては散歩の時間を確保するのも難しいかもしれません。

猫派の方が時代には合っているというのが、今までのデータからは示されているのではないでしょうか。

(正月早々、こんなことばかりを考えております。本年もよろしくお願い致します)