新型コロナウィルス感染症が拡大してきた間でも、オフィスや事業所、工場に通勤してきた個人は多いでしょう。
通勤は「痛勤」と言われるほど、長時間かつ不快なものと一部の地域ではみなされてきました。
コロナ禍後には、在宅勤務が拡がり、通勤も変わっていくかもしれません。
しかし、現時点では、大手企業を除けば、必ずしも一般的になっているとは言えないでしょう。また、平日の通勤電車にはまだまだ通勤客が乗車しています。
現在は、新型コロナウィルスへの感染を懸念しながら通勤している個人も多いでしょう。日本全体でコロナ前の通勤はどのようになっていたのでしょうか。一般的に通勤はどの程度の時間がかかっているものなのでしょうか。
今回は、通勤時間というものに少しだけ焦点を当ててみたいと思います。
NHKの世論調査
通勤時間はどの程度が平均なのでしょうか。
NHK放送文化研究所が調査している世論調査(国民生活時間調査)があります。本来は、一日当たり「個人がどれだけメディアを利用しているのか」を調査するもののようですが、派生して日本における個人の時間の使い方が分かるものです。
この調査によると、「東京圏で1時間45分、大阪圏で1時間27分、それ以外の地域で1時間10分」が通勤時間の平均です(出所 NHK放送文化研究所世論調査「東京圏の生活時間・大阪圏の生活時間」2017年6月1日https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20170601_6.pdf)。
日本人の睡眠時間の平均は、7時間40分(平成28年社会生活基本調査、男女10歳以上)です。よって、一日の活動している時間は16時間20分であり、そのうち東京圏だと11%が通勤に使われています。
ちなみに仕事は平均すると8時間2分(平成28年社会生活基本調査、男女10歳以上)です。すなわち、8時間2分の仕事をするために1時間45分かけて通勤しているのが東京圏の実情です。これは仕事の平均時間の22%に該当します。もちろん、通勤時間は勤務時間ではないので、給料は発生しません。
平成28年社会生活基本調査
次に社会生活基本調査をご紹介します。
この調査は、総務省統計局が5年ごとに実施しているもので、生活時間における行動の種類として、1日のうちの通勤・通学時間について、総平均時間、行動者平均時間等を調べることができます(他にもかなり膨大な調査事項があります)。
総務省「平成28年社会生活基本調査」
この調査では全体の通勤・通学時間平均(平日)は1時間17分です。男性は1時間24分、女性は1時間6分となっています。
これを都道府県で分けてみると以下の通りとなります。全都道府県を記載します。
<全国平均>
全国 77分
<北海道・東北地方>
北海道 61分、青森県 58分、岩手県 61分、宮城県 67分、秋田県 57分、山形県 58分、福島県 64分
<関東地方>
茨城県 76分、栃木県 68分、群馬県 67分、埼玉県 93分、千葉県 97分、東京都 91分、神奈川県 101分
<中部地方>
新潟県 63分、富山県 61分、石川県 61分、福井県 58分、山梨県 61分、長野県 61分、岐阜県 68分、静岡県 66分、愛知県 76分
<関西地方>
三重県 69分、滋賀県 71分、京都府 76分、大阪府 83分、兵庫県 79分、奈良県 90分、和歌山県 63分
<中部地方>
鳥取県 57分、島根県 57分、岡山県 69分、広島県 69分、山口県 61分
<四国地方>
徳島県 63分、香川県 60分、愛媛県 60分、高知県 61分
<九州・沖縄地方>
福岡県 72分、佐賀県 60分、長崎県 65分、熊本県 61分、大分県 57分、宮崎県 58分、鹿児島県 59分、沖縄県 63分
全国平均を超えているのは、やはり関東の4都県と関西の3府県です。奈良の通勤時間が長いのは少し特徴的かもしれません。
所見
日本における通期時間について見てきました。
関東地方の一部、関西地方の一部では「痛勤」と言われるほど、通勤に時間が取られていることが分かります。
我々個人が使える時間は、全ての人に平等に24時間です。
この貴重な時間のうち、特に関東圏と関西圏は、活動している時間の1割、仕事をしている時間の2割(すなわち仕事に関係する時間は純粋に仕事をしている時間の2割増)を通勤に使っていることになります。
この通勤時間は、自身で情報収集、読書、勉強、趣味、休息等に使える時間かもしれませんが、仕事に行くために拘束されている時間でもあります。そして、拘束されているにもかかわらず労働時間としては認められず、給料は発生しません。
この通勤時間もしくは「痛勤時間」については、今回のコロナ禍で企業にとっても、個人にとっても、その必要性、経済合理性、ワークライフバランス、働き方改革等について再考してみることが良いのではないでしょうか。
日本が生産性を上げるということは、このようなことの改善にあるのかもしれません。