銀行員のための教科書

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我らの2020年夏のボーナスはどうなるのか?

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コロナ禍に対しての緊急事態宣言がどのタイミングで解除され、経済が正常化を目指していくのかは全く不透明な状況です。

そのような中で、今夏のボーナスのみならず、今冬のボーナスについては期待できないと考えている人は多いでしょう。

今回は、ボーナスがどの程度支給されるかについて確認してみましょう。

 

第一生命経済研究所の予測

まずは、第一生命経済研究所の予測です。以下、同研究所の予測を抜粋します。

  • 民間企業の2020年夏のボーナス支給額を前年比▲4.0%と予想する(毎月勤労統計ベース)。

  • 今夏のボーナスは大企業と中小企業で差が生じる可能性が高く、中小ではより厳しい結果が予想される。大企業においても夏のボーナスは減少が予想されるが、これは主に、新型コロナウイルス問題が発生する前に既に生じていた19年の企業業績の悪化を反映したものである。

  • 落ち込みがより大きくなりそうなのが中小企業だ。中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことも多い。ボーナス支給額を決定する時期も組合がある企業に比べて遅くなる傾向があり、相対的に直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。そのため、新型コロナウイルスによる業績の急激な悪化の影響を強く受ける形で、中小・零細企業ではボーナス支給の見送り・大幅減額を行うところが多いだろう。

  • さらに厳しいのは今年の冬や来年夏だ。今年の夏のボーナスには新型コロナウイルスの影響は反映しきれていないが、今冬や来年夏の交渉は、急激に落ち込むことが予想される2020年の業績をもとに行うことになる。リーマンショック後の2009年のボーナスは前年比10%近い減少幅となったが、今冬や来年夏のボーナスはそれに迫る悪化幅になってもおかしくない。

(出所 2020 年・夏のボーナス予測 /第一生命経済研究所 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2020/shin200408.pdf

コロナ禍の中、良い予想が出てくるはずもありませんが、2020年夏の民間のボーナスは前年比▲4.0%を予想しています。

 

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの予測 

次に三菱UFJリサーチ&コンサルティングの予測です。

  • 2020年夏の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは、前年比-7.6%と新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく減少すると予測する。
  • ボーナスの支給総額は14.6兆円(前年比-7.9%)に減少する見通し。一人当たり支給額が大きく減少することに加え、夏のボーナスの支給労働者数は4,154万人(前年比-0.2%)に減少することで、ボーナスの支給総額は大きく減少するとみられる。支給労働者割合も80.2%(前年差-1.7%ポイント)に低下することが見込まれる。 
  • 業種別では、製造業では49万3,650円(前年比-4.3%)、非製造業では32万2,817円(同-8.7%)と、ともに悪化することが見込まれる。特に新型コロナウイルス の影響がより大きい非製造業の悪化幅が大きいと考えられる。

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(出所  2020年夏のボーナス見通し/三菱UFJリサーチ&コンサルティング  https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/04/bonus_2004.pdf

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの予測は、第一生命経済研究所の予測よりも更に厳しいものとなっています。

尚、働き方改革の一環として、2020年4月からパートタイム・有期雇用労働法が施行され、大企業に適用されています。この法律は、同一労働同一賃金を標榜しており、一部の大企業ではパートタイム労働者にも賞与を支給するようになることが予想されています。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、この影響について、一人当たり支給額を、事業所規模30人以上で2.5%程度、同5人以上で2.0%程度押し上げると想定しています。

それでも上記の予測となるのです。

 

公務員のボーナス予測

民間のボーナスが減額が見込まれる中で、公務員のボーナスはどうでしょうか。

  • 夏のボーナスは、2013年以来、8年連続で増加し、平均支給額は68万7,600円(前年比+1.3%)になると予測する。
  • 給与法が改正されたことで、勤勉手当が年間0.05ヶ月分引き上げられたことに加え、期末手当に続き勤勉手当も夏冬均等になるよう配分されることにより、支給月数が2.245ヶ月へと増加する(昨夏:2.195ヶ月)とみられる。
  • 増加幅のほとんどが勤勉手当の夏冬支給均等化という特殊要因により説明できてしまい、公務員のボーナスの実質的な伸びは鈍化している。

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(出所  2020年夏のボーナス見通し/三菱UFJリサーチ&コンサルティング  https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/04/bonus_2004.pdf 

この公務員のボーナスについては、早晩議論となる可能性があるでしょう。

民間が厳しい状況下で、国会議員等へも厳しい目が向けられています。雇用が安定している故に、このような時期は公務員のボーナスは厳しい視線を浴びることになりそうです。

また、上述の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの予測では、民間の夏のボーナスは、一人当たり月給の0.92ヵ月分、35万円程度ですが、公務員は、2.2ヵ月分、69万円程度となります。そもそもの水準があまりにも違うのではないかという議論が巻き起こるかもしれません。

筆者は、景気回復を見据えると、公務員のボーナスを下げるべきではないと思いますが、政治的な感情、国民感情は論理を超えます。どのようになっていくのか、冷静に注視したいと思います。