銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

これからも東京一極集中は続き、地方の魅力は高まらないという想定

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コロナ禍は、リアルの世界からデジタルの世界への社会構造の大転換を加速させることについては疑問を持たない人が大半ではないでしょうか。

コロナウィルス感染症拡大は、仕事の内容によっては場所を選ばない働き方が可能であることを見せつけ、東京への人の流れが止まったとの報道もなされています。

このような流れは、東京一極集中の緩和、地方創生につながる動きとなるのでしょうか。

今回は、なぜ東京一極集中が起きてきたのかについて、少し考察してみたいと思います。

 

東京圏への転入者動向

まずは、東京圏への転入者がどのような推移だったのか、長期の時間軸で確認しましょう。

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(出所 「国土の長期展望」最終とりまとめ 参考資料)

このグラフを見れば分かりますが、長期的に東京一極集中が続いています。

高度成長期には、地方から大都市圏への人口へ大きな流れがあり、第一次石油ショック後は、まさしく東京一極集中が始まりました。

そして少なくともコロナ前までは東京一極集中が続いていたことが分かります。

では、東京圏への転入社はどのような年齢層なのでしょうか。直近10年の動向は以下の通りです。

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(出所 「国土の長期展望」最終とりまとめ 参考資料)
この動向を見れば一目瞭然ですが、東京圏への転入超過数(転入から転出を控除したもの)では、15歳~29歳以下が9割を占めます。

この年齢層は、進学と就職で東京圏に転入してきたことが容易に想像できるでしょう。

 

足元の状況

しかし、コロナウィルス感染症拡大後は「東京から人口が流出している」という報道をご覧になった方は多いでしょう。

直近の東京都への転入超過数の推移は以下の図の通りです。

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(出所 「国土の長期展望」最終とりまとめ 参考資料)
緊急事態宣言が出された後、2020年5月から流れが明らかに変わり、比較可能な2013年7月以降初めての転出超過となりました。

コロナ禍において2020年6月を除けば東京都への人口流入は一旦止まり、2020年7月以降、8か月連続で転出超過となっています。

2021年3~4月は転入超過でしたが、依然として前年を大きく下回っています。

この要因は様々に解説されていますが、東京都内から隣接県(千葉、埼玉、神奈川)へ引っ越している事例が大半であり、いわゆる地方への転居は少ないと言えます。テレワークにおける仕事スペースの確保等を目的に、東京都内よりは広い住居を確保できる隣接県に移転する人は相応に存在するものと思われますが、一方で東京都内のマンションの売れ行きが好調であるように、テレワークで地方居住を選択するような動きは全体としてはわずかでしょう。

 

東京からの転出は続くのか

では、東京からの転出は続くのでしょうか。

筆者は、むしろ逆であり、今までの流れ同様に、東京一極集中が続くと考えています。

前述の通り、東京への転入超過数の大部分は、いわゆる若者が占めています。これが何よりもポイントになります。

まず、東京は大学が充実しています。

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(出所 「国土の長期展望」最終とりまとめ 参考資料)

このグラフにあるように、東京には有名な大学が多く、そしてその定員数は地方からの学生を吸収することが前提になっています。日本において大学に進学しようとすれば、東京を目指すことは非常に自然な流れです。東京は学生の町であるとも言えます。

そして、その大学生の就職先も東京にあるのです。

以下は大企業数の地域別シェアです。

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(出所 「国土の長期展望」最終とりまとめ 参考資料)

資本金10億円以上の企業の地域別シェアは、東京圏が全体の6割を占めます。

また、企業数も東京圏は増加しています。

一方で、大阪圏は企業シェア減少、名古屋圏は企業シェア横ばいとなっており、規模が大きいと想定される企業は、東京に集中する傾向が強まっています。

これは東京都に立地する上場企業の割合を見ても分かります。

以下のグラフのように上場企業の5割は東京に本社を構えています。そして、外資系企業も東京に集中しています。

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(出所 「国土の長期展望」最終とりまとめ 参考資料)

 

所見

東京一極集中を緩和し、地方創生を目指そうという動きは様々にあります。

コロナが一つのきっかけとなり、テレワークでどこでも仕事ができる環境も整いつつあります。毎日のように出社しなくても良いのであれば、地価の高い東京に住まなくとも良いと考えるビジネスパーソンもいるでしょう。

しかし、東京一極集中の要因は、若者を惹きつけていることにあります。若者を惹きつける理由は、進学と就職と想定され、この2つの要因が東京圏以外に分散されない限り、東京の一極集中は終わらないと筆者は考えています。

これは、古い考えなのかもしれません。テレワークの普及は、今までの人の流れを変えるのかもしれませんし、大学でもオンライン上での教育が普及していくのかもしれません。それでも、バーチャルの世界だけでビジネスや学問が完結することは無いと思われます。そうすると、結局は東京圏から離れられないのです。

また生活する環境としても、商業の集積は一朝一夕には進みません。飲食店、食料品店(肉屋、パン屋、ケーキ屋等々)が集積している地域はやはり魅力的です。店舗は、やはり駅近に集積していることが多いのは言うまでもありません。もちろん、遊びも同様です。

結局のところ、進学、就職、生活、遊び等、全ての面において東京圏は他地域に競争力を有しているのです。そして、人が集まるから、更に魅力が高まるのです。

世界的に見ても都市化の流れは変わりません。

以上を勘案し、筆者はこれからも東京一極集中は続く一方で、人口が減少していく地方の魅力は、残念ながら高まらないと想定しています。