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コロナショック後の3月上旬の消費はどうなっているのか?

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新型コロナウィルスの感染拡大によって、ほとんどの産業で活動が停滞しています。

この状況は特に2020年3月に入ってから顕在化していますが、消費の落ち込みは生活必需品等を除けば、相当な影響となっていることが想定されます。

この消費の落ち込みはどの程度のものなのでしょうか。ほとんどの統計は、後から発表されるため速報性に乏しく、足元の実績は当然ながら出ておりません。

その状況下で、現在の消費の落ち込み状況を知るすべはないのでしょうか。

この疑問に答える参考統計として「JCB消費NOW」という速報性に優れる統計データがあります。 これを見れば、「今の」日本の状況が分かります。今回はこのJCB消費NOW について確認してみましょう。

 

JCB消費NOWとは

JCB消費NOW は、JCB グループのカード会員のうち、無作為に抽出した約100万人分の決済データを活用して作成しているものです。国内会員に絞っているためインバウンド消費を含みません。

統計作成元取引金額は約8,000億円であり、続計対象会員のクレジットカード実取引データをもとに作成していますので、非常に貴重な統計データと言えます。

しかも、JCB消費NOWの「総合消費指数」と「業種別消費指数」は、JCBグループ会員のクレジットカード利用情報をもとに、決済手段によらない消費「全体」の消費指数を推計しています。

速報性に優れる点が現時点の日本の状況を把握するためには、特に優れている点です。

 

JCB消費NOWの速報データ

「JCB消費NOW」の3月前半(3月1日~3月15日)の連報データは以下の通り公表されています。

 

【3月前半概況】

<総合消費指数>
「小売(財)」「サービス」ともに2月後半から大幅に悪化。「総合」は前年比▲7.7%と、2019年10月前半の増税後下げ幅(▲6.5%)を超え、 計測開始(2016年4月)以降で最大の下げ幅に。「サービス(▲9.0%)」も、計測開始以降最大の下落。

<業種別消費指数>

  • 「スーパー(+14.0%)」は上昇を維持も、「百貨店(▲9.1%)」は大幅に下落。
  • 「EC(+4%)」は2月後半に続いて上昇。
  • 「居酒屋(▲11.4%)」を中心として、「外食(▲10%)」は大幅に悪化。
  • 「航空旅客(▲14.0%)」、「鉄道旅客(▲11.4%)」などの「交通(▲13.4%)」や「ビジネスホテル(▲11.5%)」など「宿泊(▲12.9%)」、「旅行(▲12.5%)」は下げ幅が拡大。
  • 「映画館(▲20.8%)」「遊園地(▲53.1%)」など、「娯楽(▲6.4%)」は大幅に悪化。

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(出所 JCB消費NOW)

3月前半のJCB消費NOWでは、「交通」「宿泊」「旅行」等の業種が大幅な落ち込みを見せています。総合では、前年比▲7.7%となっていますが、 これは2019年10月の消費増税後の落ち込みを越え、この4年で最大の下げ率となっています。

「交通」「宿泊」「旅行」のレジャー消費は軒並み▲11~14%の落ち込みとなっており、更に、これらの業種は、3月前半に「キャンセル」が急増していることが注意点として JCB 消費 NOW の公表で示されています。

また、映画館、遊園地も急激な落ち込みを見せており、娯楽業種も苦しいことが分かります。

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(出所 JCB消費NOW)

上図は、消費金額対比のキャンセル金額の比率の推移です。「交通」「宿泊」「旅行」業種全体で3月前半キャンセル比率の増加がみられ、中でも旅行については、消費金額対比95%がキャンセル金額となっています。 新型コロナの発生を受けて、 予定していた旅行をキャンセルする動きが広がったことが考えられます。

「JCB 消費 NOW」の公表データでは、キャンセル有無に関わらず「予約時点」の消費(購入)金額をグロスで算入しているため、今回のキャンセル金額の急増を考慮すると、 実際のレジャー関連の消費は今回公表の速報値から更に落ち込んでいる可能性が高いといえます(JCB 消費 NOWのコメントを引用)。

新型コロナウィルスの消費への影響は、商業施設やテーマパークの休業・休園、旅行の中止などにより、「交通」「娯楽」「宿泊」「旅行」などの業種においては、「消費者の数そのもの」が減少しています。そうした側面を考慮し、JCB消費NOW では「参考系列」を全項目算出しています。

JCB消費NOW で発表されている通常の指数は、JCBの会員一人当たりの支出を前提としていますが、 今回発表された参考系列は、 対象期間における消費したJCB会員の割合(確率)を考慮したものとなっているようです。

この参考系列で見ると、3月前半は、前年比で、百貨店が▲23.5%、居酒屋が▲27.6%、ホテルが▲43.0%、遊園地が▲96.9%、映画館が▲63.4%、航空旅客が▲41.6%、鉄道旅客が▲54.2%となっています。

この数値の方が実際の落ち込みに近い可能性が高いものと考えられます。 例えば、JR 四国が3月の運輸収入は前年同月の半分以下にとどまっていると発表していますが、 この発表とも整合性がとれています。

この参考系列が、更に3月下旬分ではどのように変化しているか注目すべきでしょう。

 

所見

はっきり言って、今回のコロナショックは、経済に与えるインパクトは東日本大震災やリーマンショックを超えるものと思われます。

日本のみならず世界中が、移動を止め、不要不急と言われるような消費を止めています。まさに世界の動きが止まっているのです。

「交通」「娯楽」「宿泊」「旅行」の業界は、既に大打撃を受けていますが、このままでは、更に大きなマイナスを受けます。

企業は一度破綻してしまうと、経済が通常に戻っても、雇用等は簡単に戻りません。

売上が半分以上も減少して、半年以上生き残ることが出来るような企業はほとんど存在しません。

これからは企業や個人をいかに破綻させないかが、重要な政策になるでしょう。