銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

コロナ環境下における消費動向~衣服の動向には今後注目~

f:id:naoto0211:20200830092734j:plain

コロナウィルスは我々の生活をすっかりと変えてしましました。

感染症拡大当初は、トイレットペーパーが不足したことを思い出される方もいらっしゃるでしょう。そして、外出や外食が減り、もちろん旅行に行くことも減っています。

現在はWith コロナとして、徐々に生活が戻ってきている感じはしますが、実際のところ我々の消費活動はどのような状況にあるのでしょうか。

今回はコロナ禍における消費動向について見ていくことにしましょう。

 

コロナ禍における消費動向

消費動向を調べるにはJCB消費NOW(クレジットカードのみならず現金での消費動向も含む)が最も速報に優れています。

7月後半の消費動向については以下のようにJCB消費NOWで解説されています。

7月前半より「小売総合」は若干回復したものの「サービス総合」の回復基調が止まっており、「全総合」の回復基調は足踏みが続いています。新型コロナウイルス感染症拡大前に比べて大きく消費が落ち込んだ外出型のサービス業種の回復傾向には差がみられており、7月後半、政府による「Go To トラベル」キャンペーンが始まる中、「旅行」は回復傾向が鈍化し、「交通」は悪化傾向です。一方で、「宿泊」は回復傾向が続いており、遠出せず近場で余暇を楽しむ傾向が高まっている可能性が考えられます。
「外食」や「娯楽」は回復傾向が続いていますが、「映画館」は回復傾向がみられません。
「EC」や「コンテンツ配信」といったデジタル消費はコロナ感染拡大前に比べて10~20%以上の高い伸び率が続いています。ただ、「EC_飲食料品小売業」「EC_機械器具小売業」はコロナ前に比べて成長を維持する一方で、ECモール等を含む「EC-各種商品小売業」や、「EC_織物・衣服・身の回り品小売業」「EC_医薬品・化粧品小売業」「EC_その他小売業」は伸びが鈍化しており、EC内でも業種ごとに差がでてきています。

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES) 

 少し概要がつかめたと思います。

 

小売およびサービスの動向

では、グラフで実際の消費動向を見ていきましょう。

f:id:naoto0211:20200830095620p:plain

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES)

上表はコロナ感染拡大前である1月後半の消費動向と比べた消費動向です。

小売総合は比較的安定していますが、サービス総合の回復は足踏みが続いています。

f:id:naoto0211:20200830102138p:plain

f:id:naoto0211:20200830102409p:plain

f:id:naoto0211:20200830102730p:plain

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES)

外出型サービス業の回復傾向には差が出ています。

政府による「Go To トラベル」キャンペーンが始まりましたが、「旅行」は回復傾向に鈍化がみられ、「交通」は悪化傾向にあります。

一方で、「宿泊」は回復傾向が続いており、余暇を遠出ではなく近場で楽しむ傾向の上昇が想定されます。

「外食」や「娯楽」は回復傾向が続いていますが、「娯楽」では、比較的密になりにくい「ゴルフ場」が4か月半ぶりにコロナ前の水準まで回復する一方で、「映画館」には回復傾向がみられません。但し、外食が回復傾向にあるといっても3割超の減少となっていますので、飲食店にとって苦しい状況は変わらずでしょう。

 

デジタル消費

次にデジタル消費について見ていきましょう。

f:id:naoto0211:20200830102854p:plain

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES)

「EC」や「コンテンツ配信」といったデジタル消費は、当然ながらコロナ感染拡大前に比べて高い伸び率が続いています。しかしながら、「EC」は6月後半以降、伸び率の縮小が続いています。

f:id:naoto0211:20200830103341p:plain

f:id:naoto0211:20200830103353p:plain

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES)

このECの内容を見ていくと、「EC_飲食料品小売業」「EC_機械器具小売業」はコロナ感染拡大前に比べて約40%以上の成長を維持していますので、好調のままです。

一方で、「EC_織物・衣服・身の回り品小売業」「EC_医薬品・化粧品小売業」等については伸びが鈍化しています。

在宅勤務が続いたり、遊びに外出することが減少していることがアパレルや化粧品の苦戦の理由だと端的には思われるかもしれませんが、留意すべきこともあります。それが以下のグラフです。

f:id:naoto0211:20200830103830p:plain

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES)

上図表の通り、実店舗を含めた全体としての「アパレル(織物・衣服・身の回り品小売業)」は伸びが拡大しています。(この要因については、筆者はアパレルの消費動向には知見が無いため、正直に言えば良く分かりません。)

尚、在宅勤務、テレワーク対応としての消費は以下が参考になります。

f:id:naoto0211:20200830104138p:plain

(出所 JCB消費NOW/PR TIMES)

家電などを含む「機械器具小売業」や「家具」などの耐久財消費は、5月後半以降伸びが鈍化傾向にありましたが、2か月ぶりに「家具」はプラス幅を拡大、「機械器具小売業」も鈍化傾向が止まっています。

7月後半では、コロナ感染拡大前に比べて「家具」は約13%プラス、「機械器具小売業」は約20%プラスとどちらも二桁の強い伸びを示しています。

 

所見

コロナは人々の消費行動を変えています。

外食は減り、旅行は近場となり、インターネットを通じて家の中での消費を行っていることが数字でも確認できます。そして、在宅勤務、テレワークに備えるための消費も続いています。

一方で、外出時に特に活躍する「衣服」がリアル店舗を含めて回復傾向にあります。

コロナ感染症拡大前の我々の消費は、「人が移動すること」を前提にしているものが多かったことを実感された方は多いでしょう。

外食、アパレル、映画館、ゴルフ等々、全て家の中の消費ではありません。この「家外」消費が回復しないことには日本の経済は冷え込んだままでしょう。

衣服が回復傾向にあることがどのような意味を持つのか、筆者としては今後の消費動向に注目したいと思います。