銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

銀行員が注目した2019年ニュースまとめ

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早いもので2019年が終わろうとしています。

今年も様々なことがありました。皆様にとってはどのような年だったでしょうか。

今回は、筆者の独断と偏見で一年のニュースを振り返ってみたいと思います。

 

1月

  • 東証大発会における株安。2万円大台を下抜け、一時は770円あまり下落。年初から波乱のスタートに。
  • 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長を巡る一連の事件で、日本の刑事司法制度が海外からクローズアップ。弁護士が同席できないなど取り調べ環境や勾留の運用などを「人権軽視」と批判的な論調に捉えられた事象。日本企業の経営トップを海外の優秀な人材が忌避するのではないかとの意見も。
 

2月 

  • 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効。
  • 賃貸アパート大手のレオパレス21が、33都府県の1300棟余りで施工不良が見つかったと発表。
  • ホンダが、英スウィンドン工場の乗用車生産を2021年中に終了すると発表。欧州販売の低迷を受けてのものであり、英国の欧州連合(EU)離脱とは関係がないと説明。
  • 格付けが低い企業への融資をまとめたローン担保証券(CLO)の米国での2018年の残高が6100億ドル(68兆円)超とリーマン・ショックが起きた08年の2倍に。
  • 上場子会社に独立取締役を義務付け、少数株主の利益保護を図るべく、政府の未来投資会議で指針策定に着手。
  • 上場する79の地方銀行・第二地方銀行・グループの2018年4~12月期決算はスルガ、武蔵野、栃木の3行が最終赤字に転落し、ゼロだった1年前から暗転。
  • 日銀の貸出金統計によると、邦銀による2018年末の国内貸出残高は504兆3974億円と、1997年末以来となる21年ぶりの高水準に。景気回復と低金利を追い風に中小企業への融資が増加。

 

3月

  • 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が保釈。身柄拘束が解かれたのは、役員報酬を隠したとされる金融商品取引法違反事件で2018年11月19日に逮捕されて以来。
  • 2019年度予算が成立。一般会計総額は101兆4571億円。7年連続で過去最大を更新し、当初段階で初めて100兆円超え。
  • 文部科学省は大学卒業予定者の就職内定率が91.9%と発表。1998年2月1日の調査開始以来過去最高。
  • FRB、2019年の想定利上げ回数を2回からゼロに。資産縮小も9月末で停止。
  • みずほFGが、2019年3月期に、店舗や次期勘定系システムの減損処理などで6800億円の損失を計上見込。
  • 日銀が2019年度の金融機関に対する考査方針を発表。考査の実施方針のなかで「収益管理の向上」や「適切な償却・引当」、「マネー・ロンダリング対策の強化」を新設。
  • 仮想通貨の呼称を「暗号資産」とする法案を閣議決定。
  • 三井住友銀行が一般職、総合職と統合へ。


4月

  • 政府は、「平成」に代わる5月1日からの新元号を「令和(れいわ)」と決定。
  • 財務相が、紙幣のデザインを2024年度上期をめどに刷新すると発表。新しい肖像は、日本の資本主義の礎を築いた渋沢栄一を1万円札、女性教育を推進した津田梅子を5千円札、日本近代医学の先駆者である北里柴三郎を千円札にそれぞれ採用。
  • ソフトバンクグループが社債発行。1本当たりの発行額5000億円は国内社債市場としては過去最大。
  • 三菱地所が日本最長の50年社債を150億円起債すると発表。
  • 健康保険組合連合会は大企業の社員らが入る全国約1400の健康保険組合のうち、2022年度に4割超で保険料率が10%以上になるとの試算を発表。団塊の世代が75歳以上になり始めて医療費が膨らむため、「解散予備軍」とされる料率10%以上の健保組合が現状の約2割から倍増。
  • 日銀の株式保有残高(時価ベース)は3月末時点で28兆円強へ。東証1部の時価総額の4.7%に相当。日銀が同じペースで買い続けると仮定すると、20年11月末には約40兆円に増える。現在6%超を保有すると見られ、最大の株主である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回る計算。
  • 三菱UFJ銀行は2020年春の新卒採用数を530人と、前年比で45%減らす方針。19年春の採用を半減したみずほフィナンシャルグループも2割程度減らす方針。
  • 池袋暴走事故発生。運転者が数々の要職を歴任した「上級国民」だから逮捕されないとの批判が巻き起こることに。

 

5月

  • 新天皇陛下が即位し「令和」がスタート。
  • アメリカ通商代表部は中国製品3,805品目に対し3,000億ドル規模の追加関税の第四弾を検討することを発表。関税対象に対中依存度が8割や9割超のパソコン、スマホ、ゲーム機が入り、ほぼ中国からの全輸入品となったが、レアアースや医薬品はリストから除外。
  • 日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、都内で開いた記者会見で終身雇用について「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言。
  • さくらREITにスターアジアが合併提案。REIT初「敵対的買収」へ。
  • 金融庁は地方銀行による企業への出資規制を一部緩和する方針。現在は原則5%までに制限しているが、地域産品の市場開拓などを通じて地域活性化に取り組む会社に対しては、全額出資も視野に規制を緩和。

 

6月

  • 麻生太郎金融相は、老後資金に2000万円が必要と指摘した金融庁の報告書について「正式な報告書として受け取らない」と表明。
  • 香港逃亡犯条例改正案反対デモ開催。香港の民主化デモ規模拡大へ。
  • 20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪で開催。「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境の実現に努める」とする首脳宣言を採択した。米国の反対で「反保護主義」の文言は盛り込まれず。
  • LIXIL・瀬戸新CEO就任。
  • TATERUに業務停止命令。融資資料改ざんで国交省処分。


7月

  • セブン&アイ・ホールディングスは、バーコード決済サービス「セブンペイ」が不正にアクセスされた問題で、約900人が計約5500万円の被害に遭った恐れがあると発表。その後、セブンペイのサービスを廃止。
  • かんぽ生命保険による保険商品の不適切販売問題発覚。
  • 日本人の人口が10年連続減少、外国人比率は初の2%超え。2019年1月1日時点で総人口1億2477万6364人。外国人(外国籍)は266万人。
  • みずほ銀行の17年越しの銀行基幹システムの統合完了。
  • G7財務相・中央銀行総裁会議でフェイスブックの仮想通貨「リブラ」を議論、各国そろって懸念表明。
  • ドイツ銀行が2022年までに全行員の2割にあたる1万8000人削減の再建計画を発表。

 

8月

  • 東京金先物の清算値が5128円となり、金先物取引が始まった1982年以降の最高値。
  • 厚生労働省の財政検証結果では、マイナス成長続けば公的年金給付額は、現役収入の5割割れも。
  • 政府はバブル崩壊後に高校や大学を卒業した就職氷河期世代100万人の就職支援を本格化。

 

9月

  • 財務省は、2020年度一般会計予算の概算要求総額が104兆9998億円で過去最大になったと発表。高齢化による社会保障費の膨張などが主因。
  • 総務省は「敬老の日」に合わせ、65歳以上の推計人口を発表。同日時点で前年比32万人増の3588万人と過去最多となり、総人口に占める割合も28.4%で最高を更新。この割合は世界201の国・地域で最高。
  • 日米首脳が、貿易協定合意で署名。自動車の追加関税回避、農産物開放はTPP水準。
  • 関西電力社長が記者会見し、会長や自身を含む経営幹部20人が、私的に計3億2000万円分の金品を受け取っていたことを発表。ガバナンスの在り方が話題に。
  • 「貸出金利が一段と低下した場合、収益の下押し圧力に耐えきれなくなった金融機関が預金に手数料を課し、預金金利を実質的にマイナス化させることも考えられる」と日銀の審議委員が講演で発言。
  • 環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏が、9月の国連気候行動サミットで、「経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり」「私はあなたたちを絶対に許さない」などと各国代表を批判。若者を中心に多くの人の支持を獲得。

 

10月

  • 消費税率8%から10%に引き上げ。今回から軽減税率、キャッシュレス決済でのポイント還元による負担軽減策が初めて導入。
  • 台風19号が静岡県の伊豆半島に上陸。東日本を縦断し、記録的な大雨による河川の氾濫、土砂崩れなどで80人以上が死亡。東京に被害が出たことからクローズアップ。なお、2018年の西日本豪雨で多くの銀行の店舗に浸水などの被害が出たことをきっかけに、金融庁は10月に規則を変え、災害時は届け出なしで臨時休業できるように。
  • トヨタファイナンスが、発行額200億円の3年社債を応募者利回りゼロ%と発表。利回りゼロは日本の普通社債で初めて。

 

11月

  • ソフトバンクグループは2019年9月中間連結決算(国際会計基準)で、営業損益が155億円の赤字(前年同期は1兆4200億円の黒字)に転落したと発表。WeWorkショックとの呼び名も。
  • ヤフーの親会社Zホールディングス(HD)と無料対話アプリ大手のLINEは、2020年10月をめどに経営統合することで合意したと発表。
  • 経済協力開発機構は多国籍企業による税逃れの防止策を正式発表。
  • 政府・与党、アパート大家の節税策と言われていた金取引の税還付防止や、海外不動産投資の節税防止。
  • 東証、親子上場の統治ルール策定で研究会を設置。
  • 金融審、TOPIX見直し提言。市場区分と切り離し求める。
  • みずほ、総合職・一般職を統合。
  • フィデリティ証券が投信の販売手数料を撤廃。
  • 厚生労働省が、パートの厚生年金加入義務を 「従業員50人超」の企業を軸に検討。
  • 福島銀がSBIからの出資受け入れ。
  • 野村証券が、公募投信を初の統合。「ゾンビ投信」整理へ転換点との声も。
 

12月

  • 英国総選挙、保守党勝利。Brexitへ動き加速。
  • 日本の2019年の出生数が初の90万人割れへ。自然減は50万人超。
  • 米国のダウ平均株価・ナスダック総合指数、S&P500とも過去最高更新。
  • 日本経団連が年功型賃金や終身雇用を柱とする日本型雇用制度の見直しを重点課題に。
  • 金融庁が経営難で将来の存続が危ぶまれる地方銀行の重点監視入り。改正した「早期警戒制度」を2019事務年度(19年7月~20年6月)に初適用し、全国の地銀103行のうち10行程度を対象に。
  • 個人向け投信、運用手数料の引き下げ拡大。
  • インターネット証券が手数料ゼロの戦い開始。auカブコム証券が信用取引手数料の撤廃を打ち出した以降、投資信託、現物株へとゼロ化の波が広がり、顧客をつなぎ留めるための追随が相次いだ結果、わずか3週間でほとんどの販売手数料がゼロに。
  • 政府が地方創生の柱として、地方銀行による地域企業への人材紹介事業の支援に乗り出すことに。2020年春にもマッチングに成功した地銀に1件につき100万円程度の報酬を出す取り組みを開始。
  • マンション価格、年収の10倍超え続くと東京カンテイが発表。2018年の都内のマンション価格については、平均年収に対する倍率は新築で13.3倍、中古で10.49倍。新築は7年連続、中古は6年連続で上昇しここ10年で最高を更新。
  • 金融庁が金融検査マニュアルを廃止。
  • 法制審の原案で、所有者不明土地対策として土地所有権の放棄可能に。
 

最後に

以上で挙げたニュースは筆者が勝手に選んだものです。金融業界に影響がある事象を中心にしています。
世界は更に経済的な統合が進んできました。世界各国の株価は好調に推移しています。一方で格差の拡大等でデモが起こるようになり、Brexitや米中貿易摩擦を見ると、世界は保護主義的で、不安定になってきているように感じます。また、地球温暖化への対応は世代間の分断を生む可能性がはっきりと認識されました。
国内に目を転じると、「上級国民」という言葉に代表される格差への不満噴出、宅配クライシスと言われたような「人手不足と労働環境改善」、「働き方改革」、「老後2000万円問題」、「副業」等、日本全体が貧しくなり格差が拡大していることを裏付けるようなニュースが多かったように感じます。
2020年は様々な「格差」や「分断」がキーワードになるのかもしれません。
皆さんにとっての2019年はどのような年だったでしょうか。
2020年が皆さんにとって素晴らしい年となることを祈念し、本年のブログを終了したいと思います。一年間ありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。