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2018年9月中間決算における主要行と地方銀行の決算比較~やはり地銀は厳しいという現実~

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金融庁が銀行の2018年9月期決算(2019年3月期中間決算)の概要を取りまとめました。
今回は、個々の銀行の中間決算ではなく、銀行業界としての中間決算状況について確認しましょう。決算のとりまとめ内容としては、主要行と地方銀行に分かれています。地方銀行の規模や問題点についても見えてくることでしょう。

主要行等の平成 30 年9月期決算の概要

まずは、主要行等の決算状況です。
対象は、みずほFG、三菱UFJFG、三井住友FG、三井住友トラストHD(以上、国際統一基準行)、りそなHD、 新生銀行、あおぞら銀行(以上、国内基準行)となっています。
<2018年9月中間決算>
  • 連結業務粗利益(一般企業の売上高) 52,018億円(前年同期比+11億円
  • 資金利益(貸出・有価証券の利息等) 24,541億円(同上+22億円
  • 役務取引等利益(手数料収益) 16,903億円(同上+626億円
  • その他業務利益(債券の売却損益含む) 5,185億円(同上▲194億円
  • うち債券等関係損益 266億円(同上▲1,274億円
  • 経費 ▲34,086億円(同上+51億円
  • 連結業務純益(一般企業の営業利益) 18,390億円(同上▲55億円
  • 与信関係費用 1,498億円(同上+549億円
  • 株式等関係損益 2,954億円(同上+525億円
  • うち株式等償却 ▲ 109億円(同上▲73億円
  • 中間純利益 17,454億円(同上+1,638億円
  • 貸出金(末残)304.2兆円(同上+5.2兆円)
  • 不良債権額 1.8 兆円(同上▲0.4兆円)
  • 不良債権比率 0.54%(同上▲0.12%) 

主要行等では、海外貸出残高の増加もあり資金利益が増加しています。そして役務取引等利益=いわゆる手数料収益が大幅に増加しています。 一方で、債券等関係損益=国債等での運用は大幅に減少しています。

主要行等は資金利益の減少が続くことを前提に手数料収入の増加を図ってきています。その効果が2018年9月中間決算でも出ているということです。

一方で、経費(コスト)は削減できていません。この要因は様々でしょうが、海外での規制対応によるものが多いと想定されます。

結果としては若干の粗利益(売上高)が増加しても、経費も増加しているため、本業の利益である連結業務純益(≒営業利益)はほぼ横ばいにて(若干の減益)にて着地しました。

与信費用については東芝・シャープの債務者区分引上(=貸倒引当金が必要なくなるので戻り益が発生)の影響により大幅な増益となっています。

また、株式等関係損益も大幅な増加となっており、これは持合解消を進めていることが大きく影響しているでしょう。

不良債権額、比率も低下しており、主要行等の決算だけを見れば、それほどの問題は発生していないと評価できるでしょう。

 

地方銀行の平成 30 年9月期決算の概要

次に地域銀行(金融庁の定義)=地方銀行について決算を確認しましょう。

集計対象は105行(地方銀行64行、第二地方銀行40行及び埼玉りそな銀行)です。 

  • 業務粗利益 21,462億円(同上▲497億円
  • 資金利益 19,094億円(同上▲201億円
  • 役務取引等利益 2,657億円(同上+82億円
  • 債券等関係損益 ▲370億円(同上▲355億円
  • 経費 ▲15,114億円(同上+292億円
  • 実質業務純益 6,348億円(同上▲205億円
  • 与信関係費用 ▲1,799億円(同上▲1,937億円
  • 株式等関係損益 1,417億円(同上▲96億円)
  • うち、株式等償却 ▲38億円(同上▲30億円
  • 中間純利益 4,228億円(同上▲1,798億円
  • 貸出金(末残) 264.4 兆円(同上+9.4兆円)
  • 不良債権額 4.7 兆円(同上+0.2兆円)
  • 不良債権比率 1.74%(同上+0.03%)

業務粗利益(いわゆる売上高)は減少しており、その要因は資金利益(貸出利息と有価証券利息等)と債券等関係損益(いわゆる国債の売買等)の低迷にあります。

すなわち、国内で主にビジネスを行う地銀では、日銀のマイナス金利政策の影響を大きく受けており、預金を集めて貸出もしくは債券投資を行うビジネスモデルが厳しくなってきていることが分かります。経費削減でも補えず、実質業務純益(いわゆる営業利益)は減益となりました。

なお、不良債権処理についてはスルガ銀行が単独で多大な影響(半分以上)を及ぼしていることは付言しておきます。

 

まとめ

主要行等と地方銀行の収益規模はかなり異なります。

業務粗利益(売上高)ベースで見ると、主要7行(FG)合計は、地銀105行(埼玉りそな含む)合計の2.4倍程度となっています。

特に、役務取引等損益(=手数料収益等)が主要行は地銀の6.4倍程度となっており、収益構造が大きく異なることが分かります。

そのため、実質業務純益ベースで見ると、主要行は地銀の2.9倍程度となっています。

貸出残高は主要行等が地銀の1割強となっており、貸出規模では大きな違いはない(主要行合計と地銀合計との比較)にもかかわらずです。また、経費は主要行が地銀の2.3倍となっています。

不良債権は主要行が地銀の40%程度しかありません。そして不良債権比率は更に低下しています。主要行の不良債権比率は0.54%であるのに対して、地銀の不良債権比率は1.74%です。

すなわち、地銀は不良債権となる可能性が高いことから、貸出利息を主要行よりは高めに取らないと経営が成り立たないはずです。ところが資金利益(これには有価証券利息が含まれていますので単純比較はできませんが)は主要行が地銀の1.3倍となっています。貸出残高は主要行が地銀の1.2倍です。地銀は不良債権が発生する可能性の高いビジネスであるにもかかわらず「適正な」利息を徴収できていない可能性が高いと言えるでしょう。

このように主要行比較でいけば、地銀は課題が、かなり大きいことが分かるでしょう。

地銀がこれからどのように業績を立て直していこうとするのか注目です。