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レオパレスの2020年3月期1Q決算は想定より若干悪いが、簡単には倒産しない

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(画像と本文は関係ありません)

レオパレス21の2020年3月期1Q決算が発表されました。

入居率は低下しており、赤字幅は拡大しています。

そして、過去に施工したアパートで、新たに2,450棟の物件で不備が見つかったおり、不備の物件数は2万2,139棟(7月末時点)に拡大しています。

レオパレス21に倒産の恐れはないのでしょうか。

今回はレオパレス21の2020年3月期1Q(2019年4~6月)決算について簡単に確認してみましょう。

 

報道内容

まずは日経新聞がレオパレス21の決算内容を報道しています。全体感をつかむために当該記事を引用します。 

レオパレスの4~6月期、最終赤字57億円に拡大 入居率の低下続く 
2019/8/9 日経新聞

施工不良問題を抱えるレオパレス21が9日発表した2019年4~6月期の連結決算は、最終損益が57億円の赤字(前年同期は9億5700万円の赤字)となり、2年連続の赤字となった。入居率の低下などで主力の賃貸事業が振るわない上、施工不良が判明した物件の補修工事の費用も想定より膨らんだ。

売上高は前年同期比12%減の1133億円だった。営業損益は42億円の赤字(同41億円の黒字)に転落した。
6月の入居率は81.4%と前年同月から約10ポイント低下した。会社側は期初時点では6月から入居率が回復すると見込んでいたが、9日に発表した7月の入居率は80.7%とさらに下落した。レオパレス側は「物件の調査を重視したため、入居の募集再開が期初の計画に対して遅れている」と理由を話した。
同社の賃貸事業は物件のオーナーに一定の賃料を保証し、入居者から家賃収入を受け取る仕組みだ。入居率が80%を下回ると収支がマイナスとなる「逆ざや」になるとされる。
足元では課題が散見される。まず施工不良問題が収束していない。不備があった物件は7月末時点で2万2139棟と6月末時点から2千棟以上増えた。調査完了時期は10月までになっており計画より4カ月遅れている。調査も全物件の8割程度終わっただけ。市場では「追加工事が必要な物件の数がさらに膨らむ可能性がある」との懸念がある。
施工不良に関する会社側の「安全宣言」が出ていないため、入居者がどの程度回復するかも見通せていない。また、施工不良物件の改修工事については、一部案件での工事の完了時期が、想定していた今年7月末から、来年6月にずれ込む見通しだ。

(以下略)

以上が日経新聞の報道です。

 

レオパレス21の決算のポイント

ではもう少し詳しくレオパレス21の決算状況について見ていきましょう。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期第1四半期決算概要」)

上記表を見れば分かる通り、レオパレス21は賃貸事業が売上と利益の大半を占めます。

この賃貸事業が入居率の低下により前年同期と比べて▲89億円の減益となり、セグメントで▲17億円の赤字となりました。但し、同社の計画と実績を比較すると分かるように、この1Qの業績は賃貸事業においては計画とのズレは少ないのです。当社は施工不備問題を1Qで概ね解決させ、2019年7月以降に入居募集の再開することによって、通期では決算を黒字化させる計画です。

尚、レオパレス21は自社でアパート建築受注が当然ながら低迷し、この分野では計画以上の赤字を出しています。(但し同社全体の決算から見れば重要性は低いと思います)

では、不動産賃貸業にとって最も重要な入居率はどのような状況になっているのでしょうか。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期第1四半期決算概要」)

上表のように入居率の低下が続いています。足元では80%強まで低下しました。

2020年3月期(通期)では入居率を85.2%と想定しており、営業利益は22億円を確保する計画です。

同社の計画は2019年7月以降に入居率が回復していく予定でしたが、施工不備物件の調査および改修が終了していないことから、入居率の低下が長引いています。

もちろん、同社の一連の問題を見て企業や個人が退去した等の事象も発生しているものと思われます。

しかしながら、レオパレス21から顧客離れが進んでいないとも解釈できるデータが以下の通り提示されています。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期第1四半期決算概要」)
上記グラフを見ると、施工不備の優先調査対象物件以外は入居率が落ちていないことが分かります。このグラフは入居募集再開をすれば業績が回復すると想定している会社側の主張をサポートしているとも言えます。

では入居状況について違う角度から確認しましょう。

同社の契約の大半を占めるのは法人契約です。この法人契約がどのようになっているのかを示しているのが以下のグラフです。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期第1四半期決算概要」)

上記の通り法人契約はかなり低下しています。業種にもあまり偏りなく入居戸数は低下していますが、特に製造業が多いことが特徴的です。

但し、全国に物件があり契約が楽なレオパレス21のような企業は他にありません。従業員に社宅代わりに提供する企業は代替先が無いため、レオパレス21に問題があると認識していたとしても、簡単には契約を終了させられないものと思われます。

従って、レオパレス21の今後の業績での注目点は、レオパレス21が入居募集を再開した時に、入居率が回復するか否かです。

このタイミングで入居率があまり回復しないのであれば、同社の屋台骨を支える法人契約が今後は見込みづらくなる(法人が同社との契約を避けている)ということを示すことになるものと思います。

 

資金繰り

レオパレス21は2020年3月期1Qで大きな赤字を出しています。

倒産の懸念はないのでしょうか。

現預金は2019年3月末845億円から2019年6月末に713億円と▲132億円となっています。3ヵ月で▲132億円ですので、毎月44億円キャッシュが流出していることになります。このままのペースでいけば16ヵ月程度(44億円×16ヵ月=704億円)で資金が底を尽くことになります。

但し、本当に資金繰りが厳しい場合には、人件費含めたコスト削減を行うこと、現在は施工不備物件の調査・改修等通常時とは異なる費用がかかっていることを考えると、1年数か月で資金繰り破綻するおそれは少ないものと思います。

また、以下のグラフを見ても分かる通り、レオパレス21は実質的には無借金企業です。銀行が資金回収に走っても現時点では現預金が借入を上回ります。

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まとめ

以上見てきたようにレオパレス21の決算は、厳しい状況にはあります。

但し、本当に先行きが見えてくるのは施工不備物件の入居募集を再開してからです。この動向こそが、レオパレス21の今後の決算、企業存続を占うことになるのです。

レオパレス21は「社会の敵」「悪」のように報道されていますが、顧客離れは世間の人が思うほどには起きていません。レオパレス21は簡単には倒産しないものと筆者は想定しています。