金融庁から「障がい者団体と金融機関関係団体との意見交換会」の議事概要が公表されました。
この議事概要には、金融包摂(インクルージョン)やダイバーシティ等、非常に重要な観点が入っています。
そして、筆者にとっても改めて銀行の公共性やサービス・システムのあり方について考えさせられる内容でした。
今回は「障がい者団体と金融機関関係団体との意見交換会」の内容について確認しましょう。
団体からの要望
以下は様々な団体からなされた銀行に対する要望を抜粋したものです。
内容自体は、非常に納得感のあるものが多く、銀行があまり対応を考えてこなかったことが良く分かります。
そもそも、近年使われるようになったダイバーシティは、人種や国籍に限らず、性別、年齢、性格、障害の有無などの異なる人々を受け入れるということです。障害者に対するサービスという観点については、銀行業界であまり注目されてこなかったのではないでしょうか。
今回の要請事項は銀行のみならず、様々な業界でのサービス構築に参考となるものと思いますので、紹介したいと思います。
(情報アクセシビリティ)
- 金融機関のパンフレットにおける問合せ先には電話番号しか掲載されていないことが多いため、FAX番号やメールアドレスを掲載する等の合理的配慮をお願いしたい。
(本人確認)
- 「本人確認」の方法として、本人からの電話による音声確認だけではなく、手話通訳者を通じた電話や、電話リレーサービス※の利用を認めてほしい。※ 聴覚障がい者が、テレビ電話、FAX、メール等により、電話で伝えたい要件を、電話リレーサービスセンターにいる通訳オペレーターに伝え、通訳オペレーターが聴覚障がい者に代わって電話をかけるサービス。
(電話以外の連絡手段)
- ATMにおけるトラブル発生時に、聴覚障がい者は備付けの電話で問合せができないので、例えば、タッチパネルによる文字送信やテレビ電話を通じた手話対応等、電話以外の方法による連絡手段を整備してほしい。
(ATM)
- 荷物を持つことが困難な上下肢障がい者がATMをスムーズに操作できるよう、荷物置きの台、杖ホルダーを設置してほしい。
- 車椅子の方に配慮したATMの設計(タッチパネルの高さ、足が入るスペース等)をお願いしたい。
- 通帳を挿入しても、ページが異なる等でエラーとなる場合がある。自動で正しいページにめくる機能や、エラーの原因を音声で伝える機能を搭載してほしい。
- 視覚障がい者が単独で振込可能なATMにしていただきたい。
(店舗設備)
- 歩道から店舗入口、入口からATM及び窓口までの間に誘導ブロックを敷設してほしい。
- 店舗に設置された点字ブロックがマット等で覆われていて使えない場合がある。各店舗の点字ブロックの状況について確認をお願いしたい。
(通帳・キャッシュカード)
- 通帳の記載事項について、点字での発行をお願いしたい。
(インターネットバンキング)
- 文字認証やパズル認証等の画像認証は視覚障がい者は対応できない。これらに代わる認証方法を検討願いたい。
- 本人確認・認証のシステム開発にあたっては、開発段階で視覚障がい者の意見を反映してほしい。
(その他)
- 急速に普及するキャッシュレス決済について、視覚障がい者のアクセシビリティの確保をお願いしたい。
所見
上記の要請事項をご覧になって如何でしょうか。
筆者はあまり持ち得ていない観点であったため、非常に強い印象を受けました。
一つひとつの要請事項は、サービスの利用者として当たり前の要望なのではないでしょうか。店舗・窓口を減らし、キャッシュレス化、インターネットでの取引に移行していこうとしている銀行にとって、忘れてはいけない観点ではないかと思います。
現在は高齢化社会に対応する金融サービスの方が焦点が当たっているように感じます。しかし、障害者向けのサービスというのは、高齢者にとっても、そして多くのユーザーにとっても使いやすいサービスでしょう。
そして、今回の障害者団体からの要望は、他の業界にとっても非常に示唆に富んだものとなっているものと思います。誰もが使いやすいサービスこそがユーザーに支持されるのでしょう。
(ご参考)「障がい者団体と金融機関関係団体との意見交換会」
1.開催日時及び場所
日時:令和元年6月 12 日(水)
2.出席団体
<障がい者団体>
全日本ろうあ連盟、日本身体障害者団体連合会、全日本視覚障害者協議会、日本盲人
会連合、大活字文化普及協会、日本発達障害ネットワーク
<金融機関関係団体>
全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用
組合中央協会、全国労働金庫協会、労働金庫連合会、ゆうちょ銀行、農林中央金庫、
全銀協会長行(三井住友銀行)