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レオパレス21の決算と村上氏の増資提案について

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レオパレス21が2020年3月期決算を発表しました。

決算内容は減収となり、赤字幅も想定より拡大しました。

赤字拡大の理由については、現在対応中である不備建物の改修費用が膨らんだことに加え、賃貸アパートの入居率が低迷し賃貸収入が減っているためだとしています。

この状況を踏まえ、レオパレス21は海外ホテル等の事業撤退、資産売却に踏み切るとしています。

そして、コストを低減するため、社員全体の18%にあたる1,000人規模の希望退職の募集も実施すると発表するとしました。

一方で、有名投資家である村上世彰氏(その関連企業)が数百億円規模の増資を引き受けるとの報道もなされています。

今回はレオパレス21の決算内容について簡単に評価すると共に、村上氏の狙いについても考察してみたいと思います。

 

レオパレス21の決算

レオパレス21の2020年3月期決算は以下の通りです。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期 決算概要」)

レオパレス21の2020年3月期決算は、主に入居率の低下により減収、営業損益赤字転落となり、加えて不備工事の改修費用の追加等の特別損失が発生し、2期連続の最終赤字となりました。

この大幅な最終赤字のインパクトは大きく、レオパレス21の純資産は16億円まで減少し、自己資本比率は0.7%まで低下しました。債務超過にならないように調整したのではないかと筆者には思えるほどです。総資産1,970億円の企業ですから、純資産16億円は誤差の範囲といえます。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期 決算概要」)

レオパレス21は、改修工事の遅延等により入居率が落ち込んだままになっています。そのため、上記図の通りコスト削減を実施していますが、入居率低迷により逆ザヤ状態(すなわちアパートオーナーに保証している支払賃借料に比べて、入居者からもらう賃料が少ないこと)の赤字額が大きく、本業の利益である営業損益は赤字となりました。

 

レオパレス21の資金繰り

大幅赤字になったり、債務超過に陥ったとしても、資金繰りが問題なければ企業は倒産しません。

レオパレス21の資金繰り状況はどのようになっているのでしょうか。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期 決算概要」)

上の図表はレオパレス21の2020年3月期におけるキャッシュフローの状況です。

この現金の流れを追っていくと、本業で516億円の現金流出となった一方で、保有資産等を売却して395億円の現金を手に入れています。銀行からの借金等を120億円返済し、結果として、現金は589億円(前年同期比▲241億円、決算短信では連結で605億円)となりました。

2020年3月期という厳しい決算期でも本業での現金流出は上述の通り516億円ですので、手元の現金は十分とは言えませんが、ある程度の水準が残っているものと思われます。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期 決算概要」)

レオパレス21の2020年3月期バランスシートを見ると、売却可能なものは着々と売却してきていることが分かります。

今後は、同社の計画を見る限りは海外のリゾートや名古屋の物件を計画しているようです。グアムの物件は恐らく200億円程度での売却を想定しているのではないでしょうか(2019年3月末時点のグアム事業の簿価は266億円)。それ以外に販売用不動産が40億円あります。

有形固定資産の土地建物(設備含む)が705億円ありますので、上記のグアム事業を除いても数百億円は売却可能と思われます。

また、有価証券は決算短信では長短合わせて141億円あります。

2021年3月期に期限が到来する社債・短期借入金は66億円です。これはレオパレス21が保有している現金よりも少ないのみならず、上記の有価証券よりも下回っています。

レオパレス21は債務超過スレスレまで財務内容は悪化していますし、まだ赤字解消の目途は立っていないとも言えますが、早期に資金繰り破綻することはなさそうです。

 

レオパレス21の今後

レオパレス21のやるべきことは明確です。

最も大事なことは、可能な限り改修工事を早期に終了させ、かつ企業イメージも回復させて入居率を回復させることです。

入居率の推移を見ると、以下の通り回復基調にはあり、損益分岐点とされる入居率80%を回復していますので、ある程度の希望は持てるような状況にあります。 

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(出所 レオパレス21「2020年3月期 決算概要」)
実際の構造改革の計画は以下の通りです。

レオパレス21の場合はやるべきことは明確であるため、あとは「経営陣の実行力」の方が問題となるでしょう。とにかく、入居率の改善とコスト削減です。そして、それまでの時間稼ぎとして保有資産のキャッシュ化となります。

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(出所 レオパレス21「2020年3月期 決算概要」)

 

所見

村上氏がレオパレスに増資提案を行ったと報道されています。

真偽のほどは分かりませんが、村上氏が本当に増資提案を行ったとすれば、筆者は「逃げ切れなかった」もしくは「想定していた収益が得られないので、真剣にテコ入れを図る」のいずれかだと思います。

(村上氏がレオパレス21に投資した理由は以下の記事をご参照ください。)

www.financepensionrealestate.work

村上氏が今回、投資を成功させることができるかは筆者には分かりません。

レオパレス21が本当に再生するかが不透明だからです。

最終的にレオパレス21は企業としては衰退していくだろうと筆者は考えています。理由は単純で、レオパレス21は自社で施工した物件をオーナーからサブリースして事業を成り立たせているビジネスモデルですが、新たな物件の開発が行われなくなってきているからです。すなわち、レオパレス21のオーナーになりたいという地主等がいなくなっているのです。

既存のレオパレス物件は、いつかは朽ち果てます。その時に、再度、レオパレス21で物件を建築し、それをレオパレス21からサブリースしたいというオーナーがどれだけいるでしょうか。新たな物件の建設が出来ない以上、レオパレス21は最終的には衰退するしかないのです。

では、レオパレス21を再生させるために、村上氏はどのような手を使うでしょうか。

一番根本的な解決策となるのは、経営陣を総交代させ、レオパレス21の企業イメージを改善させ、物件の改修も全て終えることです。そうすれば、入居率の改善が図られ、今後のアパート建築受注にもつながる可能性があります。

一方で、この施策は短期というよりは中長期のスパンで実行されるべきでしょう。

村上氏が率いるファンドが結果が出るまで待てるでしょうか。

そのため、筆者は、サブリース契約をしているアパートオーナーへ賃料引下交渉を大々的に行う可能性があるのではないかと考えています。

2021年3月期の決算も赤字となることが見込まれ、現状のままであれば債務超過に転落しそうな企業であるレオパレス21です。村上氏のファンドが大株主になったという印象も味方にして、オーナーに「債務超過になりそうで、しかも強面の村上氏に乗り込まれてしまっていて、サブリースの約束は守れない」と交渉し続ければ、オーナーは折れるでしょう。これは短期的には成果が出ます。しかし、長期的にはオーナーを犠牲にすることなのでオーナー離れを招き、企業は衰退します。

村上氏の狙いは、レオパレス21のコスト削減と改修工事の終了を待ちながら、上手くサブリース賃料を引下げ、レオパレス21の短期的な業績回復を狙っているのではないでしょうか。

そして、投資した株式の出口戦略としては、いずれかの会社に売却することで投資回収を狙っていくのではないかと思います(これは増資の引受規模にもよりますが)。

いずれにしろ、レオパレス21の今後の動向には注目したいと思います。