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ASEAN主要国における不動産規制~タイ、インドネシア~

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日本の不動産価格は高止まりが続いています。そろそろピークを迎えるのではないかと言われながらも、下落に至っているわけではありません。

しかし、日本の人口動態を見れば、長期的には確実に人口対比で不動産が余剰となります。

そのため、個人として投資するならば、経済成長の続く海外への不動産投資の方が良いと考える方もいらっしゃるでしょう。もしかしたら様々な不動産業者から既に勧誘があるかもしれません。しかし、海外では国によって日本では想定していない不動産の規制があります。

近時は、成長が期待出来るASEAN各国への不動産投資が特に企業において多く見られるようなってきていることから、ASEAN主要国における不動産投資規制について見ていくことにしましょう。今回の対象国はタイとインドネシアです。

 

タイの事例

最初に日本の製造業の進出が多いタイについて確認してみましょう。

まず、タイでは、原則として外国人(法人含む)は土地を所有できません。これが原則です。

しかし、下記の通り例外もあります。

〈住居目的の土地所有〉

  • 4,000万バーツ以上の投資資金を持ち、投資期間が3年以上、指定された地域内の土地であるなどの条件を満たした上で大臣による承認が得た外国人は、1,600㎡まで土地を所有できる。

〈企業の土地所有〉

  • 外国人が登録資本金の49%超の株式を保有している場合、又は、外国人株主が全株主の過半数を占める株式会社は土地を所有できない。
  • タイ投資委員会奨励企業やタイ工業団地公社認定の工業団地に立地する企業の場合は、外資比率にかかわらず土地取得が可能。

以上が土地に関する大まかな規制です。

なお、建物については外国人に対する特段の規制はなく、外国人も所有可能です。

また、コンドミニアム法において、外国人(法人を含む)のコンドミニアム(いわゆる日本のマンション)の所有が認められています。ただし、外国人、外国法人が保有するコンドミニアムのユニットの総床面積は、コンドミニアムの全ユニットの総床面積の49%を超えてはならない等の条件があります。

以上と内容は被りますが、ジェトロのサイトにある記述も以下で引用しておきます。

外国企業の土地所有の可否

原則、外国人(法人を含む)は土地取得不可。ただし、一部の例外あり。

土地所有制限
原則として、外国人(法人も含む)は土地を取得できない。ただし、BOI奨励企業や、タイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地する企業の場合、外資比率にかかわらず土地取得が可能である。なお、1999年5月に改正された土地法では、4,000万バーツ以上の投資などの条件を満たした場合は、居住用に1ライ(1,600平方メートル)以下の土地の取得が可能としている。

(出典 ジェトロホームページ) 

タイは日本企業の進出も多く、中国のように経済統制がなされていないイメージがあるのか、個人の不動産投資話も耳にはします。もちろん日本企業のタイへの進出も続くかもしれませんし、企業の不動産投資として進出を検討していることもあり得るかもしれません。

個々の投資の可否について筆者が判断することは当然に出来ませんが、少なくとも上記の不動産投資規制があることは、認識しておくと良いでしょう。実現可能な投資話か否かは、このような根本的なところから判断が必要なのです。

 

インドネシアの事例

次にインドネシアです。

親日国であり、何よりも人口の多さ、経済の成長スピードを持つASEANの盟主です。

インドネシアにも不動産規制は存在します。

土地所有権はインドネシア国民個人にのみ認められており現地法人、外資にかかわらず法人は土地の所有権を持つことはできません。

その代わり、法人は所有権の代替として建築権(HGB、当初30年、以降20年超の許可制更新)を取得したうえで、工場等の建設は可能です。

これがインドネシアにおける不動産規制の根本です。

以下でジェトロのサイトから引用します。

〈外国企業の土地所有の可否〉
土地所有権は、インドネシア国民(個人)にのみ認められている。法人は所有権に代わる権利を得たうえで、工場を建てるなどして操業することができる。
土地保有権利の取得手続き土地は〔1960年政令第5号「土地基本法」〕によって管理されていたが、土地権利確定手続きの簡素化が図られた。〔1997年7月8日付政令第24号〕
土地基本法の規定により、インドネシア全国土の最高管理権は国家に属している。従って、個人や企業は土地の権利を国の許可を取得した上で、保有する形態をとっている。
土地に関して取得できる権利には、次の11種類がある。
a.~f.は国の許可が必要だが、g.~k.は当事者間で権利の移転・取得が可能である。

a.所有権(HM)

b.事業権(HGU)
c.建設権(HGB)
d.利用権(HP)
e.開墾権(HMT)
f.森林産出物採取権(HMHH)
g.賃借権(HS)
h.小作権(HUBH)
i.土地質権(HG)
j.滞在権(HM)
k.農地賃借権(HSTB)

事業権:国家に属する農地を貸借して開発する権利。期間は最長35年、更新も可能。

建設権:土地の上に建物を建設・保有する権利。期間は通常25~30年、地方政府に申請すれば更新も可能。

利用権:国家ないし個人に属する土地を一定の期間、開発、利用する権利。期間は最長25年、更新も可能。
地域の指定、土地の指定、土地使用権の承認、建設許可の発給、公害関係法規に基づく許可は、各州投資調整局(BKPMD)でも行われる。
自由貿易地域など保税が認められた地域に立地する企業は、当該管理庁または管理会社を通じて、土地利用の手続きを行う。
〈外国人の居住用住宅〉

インドネシアの居住許可を有する外国人に、居住用住宅の保有が認められることとなった。〔1996年6月17日付政令第41号〕
ただし、利用権が付された土地の上に建てられた住宅やアパートに限られ、その権利の保有期間は最長25年で、インドネシアの居住許可を有する限り、さらに25年の延長が可能。

また、外国人1人/1世帯につき1区画の土地で、その広さは原則2,000平方メートルまでに制限され、外国人が購入できる住宅・アパートの最低価格も規制された。〔2016年9月8日付農地・都市計画大臣/国土庁長官規定2016年第29号〕
たとえば、ジャカルタでは住宅なら100億ルピア以上、アパートは30億ルピア以上。バンテン州と西ジャワ州の場合は、住宅はいずれも50億ルピア以上、アパートはバンテン州で20億ルピア、西ジャワ州で10億ルピア以上など。

なお、インドネシアでの居住を中止する場合、1年以内に権利譲渡しなければならない。

(出典 ジェトロホームページ)

このようにインドネシアで不動産投資を行うのは難しいといえます。

日本企業も戸建分譲開発もしくはコンドミニアム(いわゆるマンション)の分譲開発を行う事例がある程度でしょう。(他に工場団地開発、物流施設開発も事例としてはあります)

 

まとめ

ASEANといえども各国によって当然ながら規制は異なります。

そして、日本に比べて、外国人・外国企業の不動産取引・投資における制限があるのがお分かりになるでしょう。

成長するマーケットでの不動産投資は魅力的ですが、簡単には投資出来ないことを認識しておけば「うまい話に騙される」リスクは減少出来ると思います。