銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

ケース別の年金受給額イメージから見る老後

老後不安は誰にでもあるのではないでしょうか。

日本では、少子化が叫ばれ、政府の債務がGDP対比で他国を圧倒して悪いと言われ、悪い円安が問題視され、商品価格の改定のニュースが我々の周りに溢れています。

記憶に新しいところでは、老後2,000万円問題もありました。老後2,000万円問題とは、2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書をきっかけとした老後の資金に関する問題です。老後30年間を過ごすには公的年金などのほかに夫婦で約2,000万円の貯蓄が必要との記載があったことから現実的に無理と論争が起きまいた。

このように日本医は老後の不安をあおるような情報が溢れています。

では、皆さんはご自身が老後にどの程度の収入があるかを把握しているでしょうか。皆さんは年金でいくらもらえるのでしょう。

日本では老後不安が叫ばれる割には、自分自身の年金額を把握していない方も多いように筆者は感じています。自分の年金受給見込み額を把握していれば、いくらの貯蓄が必要かが想定出来るでしょう。

今回は、皆さんの年金受給額がどの程度になるのか、少し見ていくことにしましょう。

 

年金のモデル給付額

公的年金制度については、社会保障審議会の年金部会にて制度設計等の議論がされています。社会保障審議会とは、厚生労働省に設置された審議会の一つであり、厚生労働相の諮問機関で、社会保障制度全般に関する基本事項や、各種の社会保障制度のあり方について審議・調査し、意見を答申する役目を負っています。

国民には、これまでは「会社員の夫と専業主婦の夫婦世帯」をモデルとして年金受給額が提示されてきました。ただ、直近の第15回社会保障審議会年金部会では、モデルケース別に将来の年金額が提示されました。

これは、世帯の在り方が多様している中では、モデルケースを増やして本人が受給出来る年金額の目安を示した方が良いという意見があったことに対応したものと思われます。

そのため、今回は単身世帯、共働き世帯、片働き世帯の3つの類型からそれぞれ年金のモデルケースが示されています。

このモデルケースを次から見ていくことにしましょう。

 

単身世帯の場合

まずは単身世帯です。

厚生年金と基礎年金を合計した年金額のイメージは、以下の通りです。

(出所 第15回社会保障審議会年金部会2024年5月13日/資料1)
この図で分かることは厚生年金に加入しているような民間企業に勤めているような人は、収入水準によって幅がありますが、年金の月々の受給額が7万円より上、18万円より下程度だと考えておけば良いということになります。

 

共働き世帯

では、次に共働き世帯の年金受給額のイメージを確認しておきましょう。

以下が厚生労働省年金局が提示したものです。ちょっと分かりづらいかもしれませんが、夫婦どちらもフルタイムで働いている場合と、夫婦どちらかが短時間労働者として働いている場合が想定されています。

(出所 第15回社会保障審議会年金部会2024年5月13日/資料1)

二人で40年間働けば、厚生年金が受給出来るのであれば、月20万円が受給額の最低ラインで多い場合で月33万円程度となると認識しておけば良いでしょう。

 

片働き世帯

最後に片働き世帯です。いわゆる主夫・主婦のいる世帯です。

(出所 第15回社会保障審議会年金部会2024年5月13日/資料1)

年金には所得再分配機能があります。従って、共働き世帯と比べて片働き世帯の年金額が著しく低くなるというようなことはありません。

 

年金の現実

厚生労働省が所管している統計である「家計調査年報(家計収支編)2022年」では「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の支出は、消費支出が23万6,696円、非消費支出(税金や社会保険料等の原則として世帯の自由にならない支出)が3万1,812円で、合計26万8,508円になっています。

これはあくまで平均的な家計の話ですが、片働き世帯は上記支出が一般的だとすると厚生年金(と基礎年金)では老後の暮らしを支えるには足りないかもしれません。

このように自身の受給額のイメージをつかんでおくと、老後で本当に必要となる資金はどの程度なのかも見えてくるでしょう。

その場合は貯蓄だけが必要なのではなく、民間企業に勤めている方だと企業が用意している企業年金も受給できる場合があります。これも大きなポイントになります。

またiDeCoで自分の年金づくりをしている方もいるでしょう。新NISAもスタートしました。

様々な制度を組み合わせて老後の収入を具体的に計画していくことが我々には大事です。皆さんも一度時間を作って自らの老後の資金問題について向き合ってみることをお勧めします。