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将来推計人口から目をそらさないようにしたい

国立社会保障・人口問題研究所が2050年までの地域別の将来推計人口を公表しました。

2050年(30年後)の将来推計人口は、我々が住んでいる街が大きく変化せざるを得ないことを突き付けてきます。

人口統計は唯一といっても良いほど将来予測の精度が高いものです。自らにとって都合の悪い内容だろうと目をそらさずに認識しなければならないことを「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」は教えてくれます。

今回は、皆様と将来推計人口について簡単に見ていきましょう。

 

都道府県別総人口の推移

では、まずは都道府県別総人口の推移推計を見ていきましょう。以下の図をご覧ください。

(出所 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」)

時期と共に上図が黒っぽくなっていくことが分かるでしょう。

令和 2(2020)年から令和 7(2025)年にかけて東京都を除く 46 道府県で総人口が減少します。そして、令和 22(2040)年から令和 27(2045)年以降は、東京都を含むすべての都道府県で総人口が減少するようになる。

総人口の増加率をみると、すべての都道府県で時間の経過とともに減少が加速する傾向にあります。令和 2(2020)年から令和 7(2025)年にかけては総人口の増加率が▲5%を下回るのは 12 県ですが、その数は次第に増し、令和 17(2035)年から令和 22(2040)年にかけては 17道県、令和 27(2045)年から令和 32(2050)年にかけては 25 道県となります。なお、令和 27(2045)年から令和 32(2050)年には、8 県で総人口の増加率が▲7.5%を下回ります。

単純に言えば、2050年までを見据えると東京以外は人口減少の影響を大きく受けるということになります。

都道府県単位での今後の人口減少は加速し、令和 2(2020)年を 100 とした令和 32(2050)年の総人口の指数が 100 を超えるのは東京都(102.5)のみとなり、残る 46 道府県では令和32(2050)年の総人口は令和 2(2020)年を下回ります。なかでも、秋田県の指数は 58.4 であり、令和 2(2020)年と比べて令和 32(2050)年の総人口は 4 割以上少なくなります。次いで、青森県(61.0)、岩手県(64.7)、高知県(65.2)、長崎県(66.2)、山形県(66.6)、徳島県(66.8)、福島県(68.0)、和歌山県(68.5)、山口県(69.0)、新潟県(69.3)の順にこの指数は小さく、これらの 11 県で令和 32(2050)年の総人口は令和 2(2020)年と比べて 3 割以上少なくなります。

令和2(2020)年の国勢調査によると、全国の総人口に占める割合が最も大きかったのは東京都(11.1%)、次いで神奈川県(7.3%)、大阪府(7.0%)の順でした。今回の推計によれば、全国の総人口に占める割合は、東京都や神奈川県では今後徐々に上昇するものの、大阪府では概ね横ばいで推移し、令和32(2050)年には東京都(13.8%)、神奈川県(8.1%)、大阪府(6.9%)となります。この他の道府県については、埼玉県や千葉県、愛知県といった大都市圏に含まれる県と、滋賀県、福岡県、沖縄県で全国の総人口に占める割合がやや上昇します。

 

65歳以上人口の割合

次に高齢化の推計を見てみましょう。

(出所 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」)

こちらも時期が進むにつれて全体的に黒っぽくなります。

65歳以上人口が総人口に占める割合は、各都道府県とも今後一貫して上昇します。65歳以上人口割合が30%を超える都道府県数は令和2(2020)年では30道県ですが、令和12(2030)年には38道府県、そして令和22(2040)年までに東京都を除く46道府県で65歳以上人口割合が30%を超えるようになります。

65歳以上人口割合が40%を超える都道府県は令和2(2020)年時点ではゼロですが、令和7(2025)年には秋田県の1県、そして令和22(2040)年には12県、令和32(2050)年には25道県に増えます。令和32(2050)年に65歳以上人口割合が最も高いのは秋田
県(49.9%)であり、最も低いのは東京都(29.6%)です。

 

市区町村別総人口の推移

今回の推計によれば、ほとんどの市区町村で今後総人口が減少するため、総人口が 5 千人未満の市区町村が顕著に増加することが予測されています。

(出所 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」)

総人口の規模別に市区町村数の変化をみると、令和 2(2020)年から令和 32(2050)年にかけて、総人口が 5 万人以上の市区町村数は 523 から 411 に減少します。他方で、総人口が 5 万人未満の市区町村数は 1,205 から 1,317 に増加します。その内訳をみると、総人口が 1 万人以上 5 万人未満の市区町村数は 684 から 580 へ減少するのに対し、総人口が 5 千人未満の市区町村数は283 から 482 へ 1.7 倍増となります。

その結果、総人口が 5 千人未満の市区町村の全市区町村に占める割合は、令和 2(2020)年の 16.4%から令和 32(2050)年には 27.9%へと 11.5 ポイント上昇します。市区町村の約3割が5千人未満となるのですから、普通に考えると行政単位として何らかの再編をした方が良いでしょう。

尚、地域ブロック別にみると、令和 32(2050)年に総人口が 5 千人未満の市区町村が最も多くなるのは北海道(122)、次いで東北(80)、中部ならびに九州・沖縄(69)の順であり、これら 4ブロックで総人口が5千人未満の市区町村(482)の70.5%を占めるとされています。東北は、令和2(2020)年から令和 32(2050)年にかけてその数が 35 から 80 へ 2.3 倍に増加しますし、北海道では、令和 32(2050)年には、3 分の 2 以上の 122 市区町村で総人口が 5 千人未満になります。

次に以下の図をご覧ください。

(出所 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」)

令和 32(2050)年の総人口が令和 2(2020)年以上となる市区町村数は 77(全市区町村の 4.5%)です。残る 1,651 市区町村(95.5%)は指数が 100 未満であり、その内訳をみると、70 以上 100 未満の市区町村数は 605(35.0%)、50 以上 70 未満の市区町村数は 705(40.8%)、50 未満の市区町村数は 341(19.7%)となります。すなわち、令和 32(2050)年までに全市区町村の約 6 割を占める1,046 市区町村で、令和 2(2020)年に比べて総人口が 3 割以上減少し、全市区町村の約 2 割を占める 341 市区町村では令和 2(2020)年に比べて総人口が半数未満になることになります。

 

所見

以上、日本の地域別将来推計人口の概要をご覧頂きました。

この将来推計人口は精度の高い推計です。人間は簡単に死去しませんので、この推計が描く未来は相当の確度で到来します。

先行きを見通した時に、例えばどこで働くべきなのか、どこで家を買うべきなのか、どこで収益不動産を買うべきなのか、等々の示唆にも富むでしょう。

また、自らの故郷の人口がどんどん減少していき、自らの原風景が失われるのかもしれないと心配になるかもしれません。

我々は日常の忙しさにまぎれ、大切なことを忘れがちです。

将来推計人口は、今すぐに我々の生活には影響を及ぼすものではありません。しかし、これからは今まで以上のスピードで影響を及ぼすはずです。少子高齢化が加速するためです。

忘れてはならないこのトレンドを前に、自らがどのように動くべきか、我々一人ひとりが大事な選択を迫られているのでしょう。