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日本の人口減少を冷静に数字で見る

2023年1月1日現在の住民基本台帳に基づく全国の人口は、総計1億2,541万6,877人、日本人住民は1億2,242万3,038人、外国人住民は299万3,839人となっていると、総務省から発表されました。

特に、日本人住民は、前年(1億2,322万3,561人)に比べ、80万523人減少し、平成21

年をピークに14年連続で減少しています。

今回は、この日本の人口動態について少し確認していきたいと思います。

 

日本の人口

総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」によれば、日本人住民は、上記の通り、前年(1億2,322万3,561人)に比べ、80万523人減少し、平成21年をピークに14年連続で減少しました。一方、外国人住民は、前年(270万4,341人)に比べ、28万9,498人増加し、令和3年から 2年連続で減少していたものの、3年ぶりに増加しています。そのため、日本全体の人口は、日本人・外国人住民を合算すると前年に比べて51万1,025人減少しました。日本人の減少を外国人住民が一部補っていると言えるでしょう。

<住民基本台帳人口の推移【総計】>

(出所 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」)
自然増減数(出生者数-死亡者数)は、 総計では△78万5,251人(前年は△61万9,498人)で、自然減少数は前年より拡大しています。このうち、日本人住民の自然増減数は、△79万3,324人(前年は△62万9,703人)でした。日本人住民の自然減少数は15年連続で拡大し調査開始(昭和54年度)以降最大、出生者数は調査開始以降最少、死亡者数は調査開始以降最多となりました。

一方で、社会増減数(転入者数等-転出者数等)は、総計では27万4,226人(前年△10万6,844人)で、社会減少から社会増加に転じました。日本人住民は、社会増減数は社会増加から社会減少に転じ、転入者数は5年連続で減少し、日本人住民の社会増減数は、7,199人(前年1万563人)です。

一方で、動きが激しいのは外国人です。 外国人住民の社会増減数は、28万 1,425人(前年△11万7,407人)で、社会増減数はコロナ禍における社会減少から社会増加に転じています。国外からの転入者数は、54万9,237人で、国外への転出者数等は、26万6,914人でした。 この外国人住民の転入が無ければ日本の総人口はもっと低下していたことになります。

<住民基本台帳人口の推移【外国人住民】>

(出所 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」)

一方で、日本人住民の出生者数と死亡者数の長期推移は以下のようになります。

(出所 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」)
1979年(昭和54年)には160万人の出生者がいましたが、現在は80万人を割っており、約半数になったことが分かります。一方で、死亡者数は倍以上となりました。日本では外国人住民の存在感が急激に増しており、以下のグラフのようにトレンドとしては転出者数を転入者数が大きく上回っています。日本は移民を受け入れていない国と言われますが、この動態だけを見るとそのように単純なものではないことが分かるでしょう。

 

都道府県別の人口動態

以下は人口の多い都道府県と少ない都道府県です。

<人口の多い都道府県、少ない都道府県【総計】(令和5年人口)>

(出所 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」)

三大都市圏に多くの人口が集中している一方で、東京の10分の1にも満たない都道府県も多数あることが分かります。冒頭に前年に比べて日本人住民は約80万人減少、全体でも約51万人減少したと述べましたが、80万人とは、佐賀県や山梨県の全住民がわずか1年間でいなくなるペースです。大阪府の人口の10人に1人が減ると表現しても良いかもしれません。 外国人住民は、主に東京都に多く、以下のようになっています。

<人口の多い都道府県、少ない都道府県【外国人住民】(令和5年人口)>

(出所 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」)
既に外国人住民は東京都だけで鳥取県の全人口を超えるほどに存在しています。

東京都は外国人住民の占める割合が4.20%、愛知県で3.70%、大阪府で3.05%となってい ます。大都市圏や製造業が多い地域ではすでに外国人住民が一定の割合を占めていることになります。

<総計に占める外国人住民の割合の大きい都道府県、小さい都道府県(令和5年人口)>

(出所 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在)」)

 

私見

日本人住民は全ての都道府県で人口減少をしています。今後も日本人住民の人口減少は止まらないことは確実です。人口が減少しても良いと主張する人もいますが、日本人住民は、たった一年で山梨県や佐賀県の人口が減っているのです。社会に大きな影響を与えること自体は間違いありません。

異次元の少子化対策が政府から打ち出されていますが、なぜ日本人は少子化になっているのか、その対策は本当にこの異次元の対策で良いのか(子供が生まれてからの対策ばかり)、我々はもっと意見を出し議論をし ていかなければならないと思います。そして、現実解としての移民の受け入れをどのように進めて行くのかも議論しなければなりません。

日本では、そして特に政治の世界では、言葉遊びで表面を取り繕っていることが多いように筆者は思います。 異次元もそうですが、特に技能実習という制度には本音と建前があります。

本当に必要なことは何か、やめなければならないこと、捨てなければならないこと、諦めなければならないことは何か、議論が必要です。 日本に無限におカネがある訳ではなく、時間が解決してくれることもないでしょう。